side ロット
「…………。」
どうしてこんなことになってるんすか、と自分に聞いてみる。
答えは簡単。
自分は捕まったのだ。
それはいい。
いや、よくないけれど、捕まってしまったものはしょうがない。
問題は……。
「いやいやいや、やっぱりおかしいっすよ!」
ガタン、とそこそこ大きな音を立てて立ち上がる。
そう、立ち上がれる。
これと言った拘束などはされていないのだ。
そして目の前には、ついさっき出てきた朝食。
それを一緒に囲む、人間3人の姿があった。
「ひぅ……。」
まず一人目。
銀髪で少しおどおどした人間の女。
私が魔族だと一目で見抜いて、それ以降、自分の動作にビクビクしてる。
そこまで怖がらなくてもいいじゃないっすか、と思いつつも、まぁこれぐらいが普通の反応っすよね。
「んー?どうしたんだ?」
二人目。
私のことを見ても特に怖がったりしていない少女。
この子は怖がってないというよりも、魔族であることをわかってない感じっすが。
「おかしい?なにが?」
そして三人目。
この状況を作り出した張本人。
捕まった私を解放した上に、食事までいっしょしようと言い出した。
しかも、こいつは私を魔族とわかっていながらそうしてるらしい。
何考えているのかわからない奴っす。
「『なにが?』って、この状況っすよ!なんで自分、捕まった先で、朝ごはん出されてるっすか!?」
「なんでって、そりゃ目の前で倒れられるのも面倒だし……。」
「だからって!!自分は魔族で、そちらは人間っすよね!?」
「??……。あ、食べられないものでもあった?」
「いやそれは大丈夫っすけど……。って、そういうとこじゃなくて!魔族と人間!敵対してるっすよね!?敵同志っすよング!?」
必死に主張する途中で、口のなかに実を突っ込まれた。
赤くて丸い、トマトと呼ばれている実だ。
「その事について話がしたい。」
な、なんっすか?
急に真面目な顔をしないでほしいっす。
口に突っ込まれた事と、その事に目を白黒させながら、実を飲み込む。
「もちろん、その事はこの国で聞いているよ。でもそれがどうも腑に落ちなくてさ……。だから話を聞きたかったんだ。」
「…………。」
「まぁなにより、面倒な戦闘は避けたいって言うのが本音。でもそのためには、相手を知らなきゃいけない。せっかく、言葉が通じるんだし、それを利用しなきゃ、もったいないでしょ。」
実を飲み込んで。
次いで、来た言葉も飲み込む。
「戦闘は避けたいって、先に始めたのはそっちじゃないっすか!」
そして吐き出した。
「自分たちの暮らす場所は人間のいるところからも離れて、なんにもしていなかったのに!ある日突然襲われたんすよ!!」
吐き出してから、しまったと口を閉じる。
勢いで言ってしまったっすけど、自分は捕まっている身だ。
たとえ本当のことであっても、不用意に相手を刺激するべきじゃない。
そう、思いながらチラリと相手を見ると。
「だってさ?アイリス。」
「そう、ですか……。」
「え……?」
そんな、予想外の反応だった。
普通、捕虜は何を言っても、生意気だとか嘘をつくなと一蹴されてしまう。
だから、今目の前で起こっていることが信じられなかった。
(受け取った、っすか?正面から?そのままを?)
驚きながらもホッとする自分がいる。
もしかしたら、信じていいのかもしれない。
自分が本当だと思うことを話してもいいのかもしれない。
「と、まぁ、そんなわけで。多分、こっちとそっちに食い違いがあるんだ、きっと。だからボクはそれを知りたい。」
「…………、信じても、いいんすか?その言葉。」
「さぁて。別にボクは君の信頼が欲しいわけじゃない。話を聞きたいだけ。その判断は君に任せるよ。」
「そこは、もちろん、とかって言うところっすよ?」
笑いながら呟く。
笑いながら。
まだ全部は信用できないけれど。
たぶん、きっと。
この人間は大丈夫と、そんな気になるっすね。
俯いて、これまでのことを少し思い出す。
人間にはひどいことをされた。
それは多分忘れない。
でも、魔族が一枚岩じゃないように、きっと人間にも色々いるのかもしれない。
「あ、そうだ。それ。そのトマト。どうだった?おいしい?」
「…………?おいしかったすよ?」
「そっか。よかった。それ実は、手製なんだ。」
「えぇ!?これ作ってるんすか?」
「むー?難しい話は終わったか?アイリスさま。」
「そうね、私たちも食べましょうか。」
そこからの食事はなんだか懐かしい感じがして。
感じる味は少し、しょっぱかったっす。
こんばんは、Whoです。
魔族の少女は「ロット」ちゃんに決まりました。
少女らしくないなんて言ってはいけない。
ともあれ、これで魔族と絡めるように。
和解の道は遠いけど、頑張れ信志。
ではでは。




