side 信志
「物取り……か。んー。」
「どうしました?」
「いや、ちょっと、ね。そうだ、せっかくだし……。アイリス、ちょっと手伝ってよ。」
そう言って、二人に手伝ってもらいながら店の一部にある仕掛けをする。
といっても、別に大したものじゃない。
ボクにできる範囲で、物取りの用心をする。
それならこれがベストなはずだ。
まずは。
「『スプラウション』。」
こっちの世界に来てから、何度と唱えた呪文。
天野くんのように戦うための力じゃない。
間くんのように動き回れるようになるわけでもない。
それでも、ボクにできること。
「よし、と。」
「『アジサイ』、ですか?」
手元を覗き込んで来たアイリスが首を傾げる。
やっぱりこっちの世界でも、名前が同じだと楽だ。
「うん、昔聞いたことだからはっきりとはしていないんだけど……。」
言って、花を持つ。
アジサイは全部の花がまとめて咲くことは滅多にない。
でもこれはたった今できた命。
だから今まさに満開といった具合だ。
「アジサイには弱い毒がある、らしい。」
「ど、毒!?」
ざざざっと距離をとるアイリス。
どうやら花自体は知っていても、毒の話は聞いたことがなかったみたいだ。
「たたた、大変です。それが本当なら皆さんに教えないと!!」
「待って待って。」
慌てて飛び出していこうとするアイリスを止める。
なんとか落ち着かせて話を続ける。
「毒と言っても死ぬようなものじゃないよ。……確か、眠りやすくなる、とかそんな感じだったかな?」
「はぁ……。」
「で、これどうするんだ、信志さま。」
不思議そうな顔で聞いて来るセレスちゃんの質問には行動で答える。
もう一度『スプラウション』を唱えた。
今度生えて来るのは、アサガオ。
こちらも、この時間にも関わらず満開といった様相だ。
「アサガオですか。……ま、まさかそれにも!」
「あー、いやどうだったかな。」
実はそんな噂も聞いたことがあるのだが。
さっきの反応を思い出して、とっさに誤魔化す。
「これをこうして……。よし。」
入り口にアサガオを。
そしてその周りをアジサイで囲む。
とても簡易的ながら、罠の完成だ。
といっても、本当に効果があるのかは微妙なところだけれど。
「これでどうなるんだ?」
「効果があるかは微妙なところだけれどね。一応侵入者がいたら捕まえてくれる、かも。」
簡単に言うと、侵入してきた者が入り口にたつと、アジサイの毒でふらつく。
そのまま朝までいれば、アサガオの特性で巻き付いたツタに絡まる。
まぁほとんどお遊びみたいな物だ。
それを店の窓際などにも設置してその場は解散となった。
もちろん物取りがくるとも限らないのだし、そこまで心配する必要もないのだけど。
◇◆◇◆◇◆
翌日。
実はなんとなくそんな予感はしていたのだが。
朝起きて入り口を見ると。
「うぅ……。」
見事なまでにアサガオに絡まった女の子が、だらんとぶら下がっていた。
こんばんは、Whoです。
物取りを眠らせて捕縛。
字面だけ見るとなんとも……。
次は物取り視点の予定ですー。
ではでは。




