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花屋は商魂たくましい  作者: Who
開店編
67/159

side 信志

「店を出したいなって思うんだけど、いい感じの小さな建物って、ないかな?」


ボクの一言に、一瞬みんなの動きが止まる。

ボクらが帰って来て、これからまた大変なことになりそうって時の発言だから、少しぐらいは覚悟していた。

それにしたって、驚きすぎのような気もするけど。


「店、ですか……?ええ。大丈夫だと思いますけど。」


驚きから回復して、目の前のナルメアさんが答える。

でもその目は不思議なものを見る目のままだった。


「ボクは、何かと戦えるわけじゃない。だから裏で支えることにしようと思って。」

「……なるほど、だから店か。でもお金とるのか?無料でもいいじゃないか。」


なんとか納得してもらおうと説明するボクに、天野くんも回復したのか参加してくる。

無料か……。

確かに前ならそう考えていたけれど。

それじゃあ多分ダメだ。

なぜなら。


「それじゃ、ダメなんだ。ボクらに頼り切ったら、きっといつか立ち行かなくなる。……それは『勇者』として見過ごせないよ。」


ボク自身が苦手と言ったこともある、『勇者』という肩書き。

それをまた、自分の口から言うことになるとは思わなかった。

それでも今は言わなきゃいけない。

面倒臭いとわかっていることを、して行くために。


「……そうか。そうだな。」


しばらくじっと視線を交わした後、す、と天野くんが視線を外した。



◇◆◇◆◇◆



「まさか本当に実現するとはなぁ……。」


組み上がったカウンターの中で、一人言葉をこぼす。


「まさか、って信志さんが自分で言ったんじゃないですか。」

「そうだぞ、信志さま。」


そのつぶやきに、アイリスともう一人、セレスちゃんが笑いながら答える。

確かにその通りなんだけど、まさかこんなにすぐに用意できるとは思っていなかった。

でも、ありがたい。

まだ誰にも言っていないけれど、確かめたいことがある。

できれば一人で。

そのために城ではないどこかに居場所が作れれば、と思って提案したからだ。


「アイリスさま、次どうしようか。」

「一度ここまでにしましょう。」

「わかった、じゃあお茶を入れてくるぞ。」


パタパタと走って奥へ向かうセレスちゃん。

それを見送ってから、ボクも立ち上がった。



◇◆◇◆◇◆



色々とある中で、ひとまず確かめたいことは、メラーシュで聞こえた声。


「声、ですか?」

「うん、メラーシュで最後に遭遇した魔族いたよね?あの時に聞こえたんだけど。」

「声……こえ……あ!」


休憩となった席で、アイリスに聞いてみる。

それを聞いて少し考え込んだ後で、急に声をあげて立ち上がった。


「私も聞いたかもしれません!」

「ぶっ!」


その言葉に、今度はこちらがびっくりしてしまった。

どうも話を聞く感じだと、ボクが声を聞く直前、アイリスもどこからか声を聞いていたらしい。

加えて、ボクはその前にも一度聞いている。

その時は気のせいかと思ってしまったけど、どうやらちゃんと本物だったのだろう。


「私と信志さんに聞こえた声、ですか……。」

「なにか思い当たることあるの?」


難しい顔をして悩むアイリスに聞いてみる。


「はい。……この腕輪なんですけど、ナルメア姉様が言っていたことを憶えていますか?」

「えーと……。」


聞かれて、はてと記憶を辿る。

確かに何か言ってたような……。

あ。


「ボクらとアイリスたちを繋ぐ、って。」

「はい。ですが私の知る限り、そんなことは過去になかったんです。」


確かに、本当にボクとアイリスとを繋いでいるなら声ぐらい聞こえる……のだろうか?

たとえそうだとしても、ここでまた一つ気になることが。


「それに……、あの声は信志さんのものではなかったですよね?」

「うん、ボクは何も言ってない。それはアイリスも、だよね?」

「はい。」


聞こえて来た声はまったく知らない声。

声が聞こえて来たのが、腕輪によるものならばその声はどこから来たのか。

そっちの方はさっぱりわからない。


「んんん……。難しい話は終わりか?」


と。

隣で聞いていたのか、セレスちゃんが話に入ってくる。


「あぁ、ごめんなさい、セレスちゃん。」

「大丈夫だ、アイリスさま。」


気がつけば日も暮れている。

二人して苦笑いした後、ご飯を食べて今日を終える。

寝床に潜り込んで考えるのは腕輪の事。

一体こいつにどんな効果があるのか。

それについてはまた明日考えることにしよう……。

つんつんと腕輪をつつきながら眠りに落ちる。

落ちる、寸前。

星が瞬くように腕輪が光った、ような気がした。

こんばんは、Whoです。


少しだけ設定に触れる回。

まだ人を頼ることに慣れない信志くん。


ではでは。

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