side アイリス
「ナルメア姉様!」
「アイリス!」
城に戻った後、ナルメア姉様の姿を見つけた私は、はしたないと思いながらも駆け寄ります。
ナルメア姉様も喜んで迎えてくれました。
「ごめんなさい、姉様。」
「いいえ。よく戻ったわね、アイリス。」
優しく迎えてくれた姉様でしたが、その後はすぐさま王女としての顔に切り替えます。
「でも今は喜んでばかりもいられません。話を、聞かせてください。」
真剣なその顔に、私も気持ちを切り替えます。
報告することはたくさんあります。
喜ぶのはまた後にしましょう。
「……それで、一度ヨイツへ向かったんです。」
「そうでしたか。それでそのあとはそこのお二人に?」
「はい。」
姉様にヨイツへ向かった経緯と、そこからのことを手短に話終わります。
思えば短い間に色々なことがありました。
最初は、メラーシュへ向かうだけのはずだったのに、ヨイツへ向かうことになって。
それも、メラーシュで魔族にそう、ぐう……した、から……。
「姉様!私達を護衛していたメルトさんは!?」
思い出して、すぐさま姉様に尋ねます。
話してる最中には気づけなかった事。
私達がメラーシュで遭遇した魔族。
それを撃退するために、メルトさんは魔族と相対しました。
その後で、メラーシュにいたメルトさんは幻のはずです。
そして、メラーシュ付近に残されていた武器。
それが示すことは。
「……ここには、帰ってきてないわ。」
どこかへ行ってしまったのか。
あるいは、どこにも行っていないのか。
「アイリス。悲しいかもしれないけれど、今は悲しんでいる場合ではないにゃ。」
「……っ、はい。」
コクリ、と頷く私を見てナルメア姉様が話を続けます。
「では、この場は一旦解散とします。アイリス達は一度休んで、」
「あっ、と。ごめんなさい。少しだけいいですか?」
と、そこで割り込んできたのは信志さんでした。
「なんでしょう?」
「大したことじゃないんだ。でも一つだけお願いが。」
一歩進み出て話す信志さんに、視線が集まります。
でも、突然どうしたんでしょう?
「店を出したいなって思うんだけど、いい感じの小さな建物って、ないかな?」
◇◆◇◆◇◆
「まさか本当に実現するとはなぁ……。」
カウンターの中で呟く信志さん。
ちょうどその時のことを思い出していた私は苦笑します。
「まさか、って信志さんが自分で言ったんじゃないですか。」
「そうだぞ、信志さま。」
ちょうど奥から出てきた、セレスちゃんも頷きます。
セレスちゃんは幼くても立派なメイドで、これからお世話になります。
「アイリスさま、次どうしようか。」
頼んでいた用事が終わったのか、こちらを見上げて訊ねてきます。
「一度ここまでにしましょう。」
「わかった、じゃあお茶を入れてくるぞ。」
ぱたぱたと走り去っていく背中を見送りながら、さっきまで思い出していたことの続きを思い出していきます。
◇◆◇◆◇◆
「店、ですか……?ええ。大丈夫だと思いますけど。」
信志さんの言葉に、ナルメア姉様もぽかんとした表情で返事をします。
それぐらい、唐突だったのでしょう。
それでも私にはひとつ、思い当たるものがありました。
自分にできることをする、という信志さんの言葉。
それを彼は実現しようとしているんじゃないでしょうか。
「ボクは、何かと戦えるわけじゃない。だから裏で支えることにしようと思って。」
「……なるほど、だから店か。でもお金とるのか?無料でもいいじゃないか。」
最初に反応したのは天野様でした。
支える、ということとお金を取ることが矛盾していると言っているみたいですが。
「それじゃ、ダメなんだ。ボクらに頼り切ったら、きっといつか立ち行かなくなる。……それは『勇者』として見過ごせないよ。」
「……そうか。そうだな。」
天野様が納得したところで、その場は今度こそ解散となりました。
後日に、ユーステスの一角に信志さんの店は無事用意され、そこが私たちの新しい居場所になりました。
こんばんは、Whoです。
唐突に始まる新章。
開店編、としておきますね。
プロット書ききった後で重大なことに気がつきましたが、それはおいおい。
新章もゆっくりお付き合いください。
ではでは。




