side ???
「う…あ……?」
ぼんやりとした視界の中、私は目を覚ました。
なんだか頭もぼんやりとしている。
(ここは?)
それでもなんとか周りの状況を確かめようと、頭を動かす。
焦点の定まっていない視界も、少しずつ慣れてくる。
見えてきたものは……。
(壁……?室内、なのか……ここは。)
おかしい。
室内なのはわかった、それはいい。
だが。
それでもここがどこかわからない。
見たことのない壁。
暗い視界。
場所を特定するものが何一つとして見当たらない。
(一体…………ぐぅ!?)
とりあえず外に出て確かめるしかないと考えたところで、近くの壁が割れる。
いや。
割れたのではなく、壁に扉があって、そこが開いたのだ。
入ってくる光のあまりの眩しさに一瞬目を瞑るも、細目で覗き見ると誰かが立っているのが見える。
(だ、誰だ……?)
コツコツコツと足音が近づいてくるが、逆光で顔すら見えない。
それでもなんとか見ようと目を凝らすと、頭の上で揺れる三角の。
(なんだ、あれは?耳、なのか?)
頭の上にある耳、ということは獣人、だろうか。
話では聞いたことのあるそれは確か、人と似た容姿と、頭の上にある一対の耳が特徴だったはずだ。
ということはここは獣人の国ということか?
「……これが、そう?」
「ええ、左様でございます。なかなか生きの良い素体でしたよ。」
「……そう。」
(なんだ?もう一人、いるのか?)
こちらに近づいてくる途中で影が二つに分かれる。
それに合わせるかのように、声も二人分聞こえてくる。
「おや?気が付いておられましたか。」
最中、後ろから現れたほうの影が私に向かって話しかけてくる。
(ぅくっ、あぁ。だがここは一体……。)
「そうですねぇ、なんと申しましょうか……。」
口元に手を当てて考え込む影。
少しずつ目が慣れてきたのか、表情は見えないものの、おおまかな仕草が見えるようになってきた。
(私は町にいたはずだ。そこで護衛を……。)
「ほ?……ほほほほほ!!」
私の問いに、その影は突然笑い出した。
あまりの唐突さに、一瞬言葉を失う。
(……なんだ、なにがおかしい!?)
「いえ。しかしあなた、まだご自分の体をよく見てはおられないので?」
(自分の、体?)
言葉につられるように自分の体を見下ろす。
確かに、暗くてよく確認することはできていなかった。
自分の手のひらを目の前に持ってきて……。
持って、きて……。
(なん、だと……。)
愕然とした。
目に映ったのは、どう考えても人間の手じゃない。
いや、よく見ると人間らしい部分もある。
大まかな形はそっくりだ。
だが、しかし、でも、だって、そんな。
腐臭。
今まで感じなかったのが不思議なほどの腐臭、腐ったにおい。
それが私の、自分の腕から発生している。
まさか。
まさかまさかまさか!!
「……その通り、あなたはアンデッド。一度死んで蘇った。」
聞きたくもなかった答えが、目の前に降ってくる。
アンデッド。
(くそ……。)
それが示すことは。
(魔族、だということか……。私が!)
「その通りでございます。」
(ふざけるな!私は人間だ!!)
「で、ございましょうな。……しかし、元、ですが。」
(くっ!)
思わず自分の胸元をまさぐる。
そこには穴があった。
町にたどり着く直前、襲ってきた魔族によって貫かれた体。
その穴は塞がっていない。
塞がっていないのに、血も出ていない上に痛みもない。
そのことが、とどめだった。
(だが、私は私だ。魔族になったからと言って、お前たちに従う道理はない。)
「……それは関係ない。魔族であれば戦う意思がなくても殺す。それがあなたたち。」
(……だが。だが!まだ言葉がある。心を込めて話せばきっと!!)
「本当にそう思う……?」
(なんだ?ヴぁ、ぐ、ぁ……あ?」
急に言葉が出なくなった。
……いや、本当は気づいていた。
考えないようにしていたそれに意識を向けた途端、それは来た。
動きが、思考が、止まる。
「ほほほほほほほ!!」
そんな私を見てか、目の前の魔族が笑い声をあげる。
その声は部屋いっぱいに響いてるのに。
私、メルトにはどこか遠くで感じていた。
こんばんは、Whoです。
というわけで、別人視点。
覚えてくれてる人いますかね?
メラーシュまで信志とアイリスを護衛してたメルトさんです。
これで放浪編は終幕です。
信志たちも帰ってきましたしね。
長々とお付き合いありがとうございます。
次の章からはちゃんと商売も始めます。
ええ、始めますとも。
ではでは。




