side 信志
「ボクはもう少しここにいるよ。」
そう言ってアイリスを見送った後。
地面に座り直して一息つく。
(……どうしてこうなったー!!)
思わず頭を抱えたまま、地面を転がり回る。
確かに外に出たらアイリスがいたから声をかけた。
気持ちに押しつぶされそうだったから愚痴も聞いた。
それで最後に、ゾンビの事はあまり気にしなくてもいいんじゃないか、とは言った。
でもそれは。
(辛かったらやめてしまってもいいんじゃない?ぐらいのつもりだったんだよな……。)
そのはずだったのに。
アイリスはどこか決意した目で、「頑張る」なんて言って。
(…………。)
落ち着いたのでもう一度座り直す。
くしゃくしゃと髪を撫でながら、今更嘆いてもしかたないか、と考えを持って行く。
実際、ボクから見てアイリスはすごく頑張って来たんだと思う。
頑張って、それでも思うようにいかなくて。
周りに迷惑だからと、あまり感情を出すこともできなくて。
それで今日、たった今、限界がきてしまった。
(………………。)
自分にできることなんてたかが知れてる。
自分の代わりなんていくらでもいるだろう。
今ここでやめても、世界はなにも変わらない。
それはきっと、アイリスも分かってる。
それでも。
それでも、自分が出来ることを探して、やろうとしている。
うず……。
ウズウズ……。
(めんどくさいなぁ……。)
そんなアイリスに。
そんな、アイリスを見たい、見てみたいと思ってしまう自分に。
心の底からそう思う。
だからこそ。
「よいしょ、っと。」
立って、決める。
誰がやっても一緒なら。
どんなことにも、代わりがいるのなら。
自分の思うようにやる。
そうしたい理由もできた。
なら後は進むだけ。
前でも後ろでもなく、ただただ、自分が向いている方向に向かって。
◇◆◇◆◇◆
次の日の朝。
ボクらは早々に町をでた。
数多くいたゾンビには今の状態で挑まない方がいいと、ガルマンさんが判断したからだ。
なので、活動しない明るい時間の内にユーステスを目指すことになった。
もちろん、馬車は途中で置いてきたので徒歩で。
「……あれは……。」
町を出て、少し。
最初にサラさんが気づいた。
「……大人数で戦った、跡……?」
普通の道の中で、そこだけ地面が掘り返され、色んな剣や鎧がそこらに散らばっていた。
「これ……、ユーステスで使われてる剣です。」
剣を拾い上げたアイリスが、柄の模様を見て呟く。
ということは、ここは……。
「メルトさんが。私達を護衛してくれた兵達が、魔族と交戦した場所です。」
「……そう。」
黙って目を閉じるガルマンさんに合わせて、ボクも目を閉じる。
メルトさんはいい人だった。
気さくで明るくて、それに強くて、判断が早くて。
「行きましょう、信志さん。」
「……うん。」
目を開けると、目の前にはアイリスがいて、手を伸ばしてくる。
ボクは今度こそ、その手をしっかりと握り返した。
◇◆◇◆◇◆
「あ……。」
その声を発したのはボクだったか、アイリスだったか。
とにもかくにも、あれから幾数日。
やっと……、やっと。
「帰って、来れましたね。」
「ああ、到着だ。」
見えてきたのは城壁。
国を囲む、高い壁。
その中に入るための小さくない門。
アイリスが生まれ育った場所で、ボクの落ちてきた場所。
ユーステスがついに、見えるところにまで帰ってきた。
こんばんは、Whoです。
最後の方はほぼ駆け足になってしまいましたが、やっと帰ってきました。
それに伴って、サブタイトルも行商編から変更します。
理由は言わずもがな、行商してないからです。
この先、もう少しだけ続けた後で、章の終わりとなる予定です。
ではでは。




