side 信志
「…………。」
馬車の中ですこし身支度をすると、アイリスとサラさんが入って少し。
ボクとガルマンさんの二人は、近くに腰掛けて何をするでもなく待っていた。
ボクは文字通り、ほとんど身一つでこの旅に出ているけど、アイリスは王女。
必要な物とそうでないものを選ぶ時間が必要になる。
「まだ、かかりますかね?」
「……む?そうだな、サラも曲がりなりにも少女だからな。それなりに時間もかかろう。」
アイリスも服装を変えるのに時間がかかるんだろう。
やっぱり、城で着ていたドレスでは動きにくいようで、グラッドさんの手伝いをするときは簡単な服を借りていた。
もしかしたら嫌だったりするんじゃないかなと、こっそり確認したことがあったけど、
「いえ、こういう服も新鮮で楽しいです。着替えるのも難しくありませんし。」
なんて、笑って答えていた。
その辺はやっぱりお姫様なんだなぁ……。
◇◆◇◆◇◆
「お待たせしました。」
「……またせた。」
それからもう少し経った頃。
着替え終わったのか、二人が馬車から出て来る。
「どうですか?冒険者さんに見えますか?」
くるりと回って聞いてくるアイリス。
サラさんの服を借りているので、武器こそ装備していないものの、確かに冒険者っぽく見える。
「うん、いい感じ。」
「そ、そうですか……。なんだか照れますね……。」
少し赤くなってそっぽを向く。
あれ、なんかおかしなこと言ったかな。
「では、出発だ。……サラ、今はどうだ?」
「……ん、大丈夫、……すぐ近くにはいない。」
「そういえば、この馬車はどうするんですか?借りたものですよね?これ。」
「あぁ、それはだな……。」
言って、馬の手綱を解く。
「こうして、離すだけでいい。ああいう所の馬は賢いからな。自分で帰ることができるんだ。」
馬車の方はどうにもならんがな、と苦笑いで付け足す。
そのぶんのお金を馬と一緒に返せばいいそうだ。
「では、あらためて行こう。」
そう言って歩き出すガルマンさん。
「……私たちも。」
「はい、サラさん。信志さんも。」
「うん。」
馬車を降りたボクらは、荷物を背負い直し。
歩きで森の中へ入って行った。
◇◆◇◆◇◆
「ここに来るまでの間に不穏な空気を感じたから、では不満か?」
「えっと、そう言うわけじゃない、んですけど……。」
不穏な空気を感じたから。
それは多分、本当なんだと思う。
実際に森に入る前に襲われたこともある。
それでも。
それ以降、何もない。
歩いている時も、途中で挟んだ食事の時も。
そうなると思う、思ってしまう。
ここまでする必要があったのか、と。
「サラ、どうだ?」
「……静かすぎる。……最初の感じが嘘みたいに。」
「あぁ、俺もそう思う。」
「……でもこれは。」
「何かから逃げ出した……のか?」
ガルマンさんとサラさんが話しているところで、遂に。
「抜けたか……。」
森が終わる。
出たのはちょうどメラーシュの上。
その崖だった。
「!これは……。」
下を見たアイリスが絶句する。
気持ちはボクも同じだ。
そこから下は、廃墟が。
廃墟になったメラーシュの町が広がっていた。
こんばんは、Whoです。
やっと、というには短い気もしますがメラーシュまで帰ってきました。
とにもかくにもここからユーステスまでもう少し。
信志くんもアイリスもがんばって。
ではでは。




