side アイリス
「サラさんも『治癒師』だったんですね。」
「……(コクリ)。……も、ってことはあなたも?」
サラさんの言葉に、今度は私が頷きます。
といっても、私にできることはまだ少ないので、『同じ』というのはなんだか申し訳ないのですが。
「でもすごいですね。『治癒師』なのに戦えるなんて。……あ、いえ、そういう意味では。」
『治癒師』なのに戦える。
それが素直な感想だったけど、言葉の端に棘がある気がして、慌てて言い直す。
「……大丈夫、私もそう思う。……『治癒師』は全然強くない。」
でも、と一旦言葉を切ってからサラさんが続ける。
「……それが『戦えない』ってこととは違うって、言ってた人がいた。……『役立たず』なんかじゃないって、言ってくれた人がいた。」
「!」
最後に聞こえた『役立たず』という言葉に反応してしまう。
まさしく今の私がそう思えるから。
「…………すごいですね、サラさんは。」
「……そう?……私なんて全然すごくない。」
「そんなことないです!」
「……そ、そう。そこまで言われると、照れる。」
思わず大きな声が出てしまった私に、一瞬だけぽかんとしてから、うっすらと顔を赤らめる。
三角の耳もひょこひょこと動いていて。
すこし冷静になった私は、やっぱりネロさんに似ていると心の隅で思いました。
「私も、サラさんみたいになれるでしょうか?」
ポツリとこぼした私の言葉に、表情を戻したサラさんが首をかしげます。
「……私なんてすごくない、から大丈夫だと思うけど。……なぜ?」
「私も、人の役に立ちたいんです。…………なのに、どうしてもうまくいかないことが多くて。」
お父様の時もそうだった。
私にもっとできることがあったのではないか。
私にもっと力があれば……。
メラーシュでは違和感すら感じれなかった。
『治癒師』も魔力を使う役割なので、魔力を感じれるはずなのに。
私にもっと力があれば……。
信志さん達が来てくれる前。
一度国に大きな魔物がやってきたことがあった。
なんとか撃退したものの、けが人も多かったのに、その時私はまだ、能力をうまく使えないでいた。
どうして、私は……。
バチッ!
「ぁう。」
深く、深く沈んでいきそうになった所で、おでこに痛みを感じました。
思わずおでこを抑えて、犯人、サラさんに向き合います。
「な、なにするんですか。」
「……ん。あなたも私と同じことを考えているみたいだったから。」
「同じこと、ですか?」
首をかしげてしまう私に、サラさんは頷いてから。
「……誰かの役に立ちたい気持ちはわかる。……でも焦っちゃだめ。」
目を合わせ、正面から言われたサラさんのその言葉は、静かに私の中に沁み込みます。
ゆっくりと、私の中に。
「でも、それで今までうまくいかなくて……。」
「……そう。……だから次に必要なのは知識。」
「知識、ですか?それなら、たくさん……。」
専門の人に聞きました、と言おうとした所で、サラさんが首を横に振ります。
「……大事なのは、能力でなにができるかじゃなく、どんな事が起こるか知ること。」
「どんなことが起こるか……。」
「……ん。……それを知れば色んなことができるようになるし、それは私でも教えられると思う。……だから、焦っちゃ、だめ。」
「はい……。」
頷く私から、サラさんはそっと目をそらした。
さっきと同じように、ほんのすこしだけ顔を赤くして。
小さな声で。
「……から、『アイリス』って呼んでもいい?」
「…………はい。もちろんです。よろしくお願いします、サラさん。」
こんばんは、Whoです。
おかしいな、なんだか怪しい雰囲気になってません?この二人。
なってない?よかった。
ではでは。




