side 信志
さく、さく、さく。
ザッ、ザッ、ザッ。
軽く木の葉を潰す音を立てながら、ボクらは森の中を進んでいた。
「!静かに。もうじき見えるぞ。」
前を歩いていたガルマンさんが、手で制する。
ボクの目にはまだ終わりは見えないけれど、どうやら森の終わりが近いらしい。
「今の所、なにも変わらないようだが……。くれぐれも注意してくれ。」
そのままゆっくりと進んで行く。
アイリスとサラさんもそれに続き、ボクも音を立てないように進む。
「あの、ここまでする必要はあるんでしょうか……?」
「……ある。」
アイリスの疑問に、サラさんが振り返った。
ボク等は乗っていた馬車から降りてこうしている。
確かに、馬車の方が早く着きそうな気もする。
「ここに来るまでの間に不穏な空気を感じたから、では不満か?」
ガルマンさんも振り返り、最初に言った言葉をもう一度言った。
◇◆◇◆◇◆
「これは……。」
ヨイツを出てしばらく。
馬車を進めていたガルマンさんが呟いた。
「……ガルマンも?」
「あぁ、ならば気のせいではないのだろう。」
「「?」」
アイリスと二人で顔を見合わせる。
「えっと、どうしたんですか?」
「あぁ、すまない。どうにも嫌な気配を感じてな。少し進路を変えたいんだが、構わないか?」
「はい……それは構いませんけど。」
突然の話に困惑しながらも、アイリスが頷く。
「そうか。……では。」
言って、徐にガルマンさんが立ち上がって馬車から降りる。
「って、ガルマンさん!?ちょ、サラさんまで。」
思わず、元いた世界での言葉遣いになりながら呼び止める。
それぐらい、二人の行動は急なものだった。
「……静かに。……もう囲まれてる。」
「囲まれてる、って一体。」
何に、と続けようとして、ようやく理解する。
目の前にある、少し大きめの藪が揺れた。
ガサガサ、ガサ。
現れたのは。
「狼……?」
「……元は、多分そう。……でも今は。」
言われて気づく。
目を凝らさないと、気づかない程うっすらとした靄が狼の周りに漂っている。
それが、馬車を取り囲んでいた。
「十分に気をつけろよ、サラ。」
「……大丈夫。」
「グルルルル…………、グワォッ!」
前と後ろにそれぞれ陣取ったガルマンさんとサラさんに、狼たちが先手必勝とばかりに飛びかかってくる。
その爪が、牙が、二人を捉える寸前。
「フン。怪しい見た目でも、所詮は狼か。」
ふわりと効果音が付きそうな、ゆっくりとした動作で狼の頭を鷲づかむと。
「そら!」
「キャウン!」
すぐ隣にいた、別の狼へ投げつける。
当然、その狼も飛びかかってくる最中だったので、二匹は絡み合いながら地面を転がった。
「そっちはどうだ?サラ。」
掴んでは投げ、掴んでは投げを数回繰り返すと狼は逃げて行った。
それを見計らって、ガルマンさんが声をかける。
「……ん。……おとなしくなってもらった。」
振り返るサラさんの足下には、うずくまって動かなくなった狼が数匹。
「「「ZZZzzz……。」」」
気絶しているのかと思ったけど、どうやら違う。
あれは……、眠っているんだろうか。
「サ、サラさん。もしかして催眠魔法が使えるんですか!?」
と。
突然、隣でアイリスが驚いた声を上げる。
催眠魔法というと、あれだろうか。
元いた世界では五円玉に糸を通して……。
少し古いかもしれない。
「……催眠魔法?」
対して、サラさんはアイリスの言葉に首を傾げる。
どうにもピンと来ていないみたいだ。
「あれ……、えっと、違うんですか?対象の抵抗を通過して、精神に効果を及ぼす魔法、ですよね?」
だから、どうしても効きにくいのだと、説明してくれる。
元々、生物は無意識で心に抵抗を持っている。
だから、体を炎で焼いたりするのと同じ感じでは、魔法が効かないのだと。
「……多分、違う。……私は『治癒師』だから。……癒しただけ。」
「癒しただけ、ですか?」
「……そう。……あまり知られていないことだけど。……どんな生物でも、回復する部分を絞れば、眠くなる。」
「そんなことが……。考えたこともありませんでした。」
同じ治癒師として思うことがあるのか、そのままアイリスとサラさんは、話し始めてしまった。
全身マッサージを受けると、眠くなってしまうのと同じ理由だろうか。
それはともかく。
「嫌な気配っていうのは、この狼だったんでしょうか?」
サラさんが眠らせた狼を、縛っているガルマンさんに尋ねる。
「ああ、多分そうだろう。だがこれだけではない。こいつらよりも強い気配をずっと感じているんだ。」
「強い気配、ですか。」
「ところで、お前たちは荷物もあまり多くなかったよな?」
聞かれて、はてと思い返す。
……確かに、着のみ着のままだ。
荷物なんてほとんどない。
「そうか、ではここからは、こちらに進路を変えよう。」
そう言って、ガルマンさんが指した方向は藪の、それに続く森の奥。
手段はといえば。
「馬車はここまでだな。」
徒歩だった。
こんばんは、Whoです。
なんとも指が進まず。
結局一回ぶんの更新です。
すいません。
なんだか、春になってからどんどん時間が限られていくような……。
ええい、愚痴っても仕方なかろう。
できる時間でするしかない。
というわけで、もしかしたらまた更新が止まることもあると思いますが、決して途中で投げ出したりはしないので。
ええ、そこはもう。
頑張らせていただきます。
ではでは。




