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昔。
私がまだ何の力もなく、生きるだけで精一杯だった頃。
その頃の私たちの生活は、お世辞にも楽と言えるものではなかった。
「なんだよ、二人合わせてもこれっぽっちかぁ?」
「……。」
「はっ!だんまりかよ。」
そこでは力が全てだった。
腕力、知力、財力。
ともかくなにか。
なにか他人に勝るものがあれば、その他人を好きにできた。
当然、わたしたちみたいな何も持っていない人たちは、逆らえない。
「ちっ!今日はこれくらいにしておいてやる。」
俯いてなにも言い返さないわたしに、えーと……、飽きたのか、その男は去っていった。
「……だいじょうぶ?おねぇちゃん。」
「……うん、なんとか。」
去ったのを確認した後で振り返ると。
隠れていた妹が顔を出していた。
「……わたし、あのひときらい。」
「……わたしも。」
いーっ、と舌を出して怒る妹に頷いて、その手を取る。
「……?おねぇちゃん?」
わたしよりも小さな手。
この世界でたった一人、わたしと同じで。
ただ一人の、わたしの妹。
「……なんでもない。……帰ろっか。」
「……うん。」
気がついた時から一緒にいる、ただ一人の家族。
その家族は、この手の持ち主だけは、なにが何でも守る。
何を犠牲にしてでも。
そして。
『その時』は以外とすぐにやってきた。
◇◆◇◆◇◆
「……ふぅ。」
一仕事終えたわたしは、ゆっくりと息をはいた。
目の前には、小さなカゴ。
そしてその中には、少しの果物といくつかのきのこなんかが入っている。
ここは、わたしたちの家の裏にある小さな森。
遊ぶには狭いけれど、いくつかの木が食べられる実をつけてくれる。
その上、どういうわけか他には人が来ない、なんとも不思議な場所だった。
「……♪」
少し、とは言ってもわたしたち二人には十分な量で。
毎日ここへ来ては、少しずつ食べていた。
それに、今日は赤い実が見つかった。
妹が好きな、甘くてしゃりしゃりしていて。
嬉しくて、つい鼻歌まで出てしまった。
「……よし。」
休憩も終わりと、おろしていた腰をあげる。
カゴを拾い上げ、そして。
そしてわたしは、地面に転がっていた。
「っ!」
慌てて体を起こすと、あちこち痛む。
どうやらぶつけたらしい。
なにより周りが燃えている。
さっきまでわたしは森の中にいたはずなのに、今は火の海だ。
なぜ、どうして、いつのまに、と考えて首を振る。
違和感もあるが、今は妹の無事を確かめる。
痛む足を立たせて、走り出した。
幸い、燃えていても狭い森、すぐに抜けることができた。
「……っ。」
当然のように家は燃えている。
目の前に燃えている森があっては、燃えない方が不思議だ。
「○○!」
「……!…………!」
駆け込むと妹の姿があった。
必死に何かを叫んんでいる。
そのはずなのに。
妹の声、わたしにはその声が聞こえない。
火の音がうるさいのだろうか。
いや。
むしろ静かすぎる。
何一つ音が聞こえないという異常事態で。
そこでようやくわかった。
わたしの耳が、今は聞こえていない。
違和感も感じるはずだ。
森にいた時も全く聞こえていなかったのだ。
「チッ!」
意識して舌打ちをし、妹を外へ連れ出す。
今はとにかく安全な場所へ……。
どろり……。
そう考えた所で、何かがわたしの頭に入ってくる感覚がした。
『安全な場所って?それはどこにある?』
知らない。でもここじゃないどこか。
『それは本当にあるのか?』
わからない。でも見つかる。きっと。
『本当に?』
ガッ!
生えていた木の根に足を取られそうになって、なんとか踏みとどまる。
気がつけばそれなりの距離を取っていた。
肩で息をしながら妹と二人、小高い丘に座り込む。
チラリと目を向ければ、妹も必死で息を整えていた。
その頭に手を伸ばそうとして。
バヂッ!!
手のひらに激痛が走った。
たまらずに手を抱えて転がり込む。
そのまま、わたしは意識を失った。
最後に見えたのは、見たこともないギラギラとした、『鎧』。
それを履いた足だった。
◇◆◇◆◇◆
「……ん。」
目を開けると、見慣れた景色。
顔に違和感を感じて、手で触ると濡れている。
どうやら少し泣いていたようだ。
「どうされましたか?」
「……なんでもない。……少し昔を思い出しただけ。」
隣からかけられた声に返事をして、椅子から立ち上がる。
途端に裸だった体に霧が巻きついて、衣装を形作った。
今日は幹部の集会だ。
面倒臭いがこの格好でなければ怒られてしまう。
「では、もうじき良い時間です。参りましょうか。」
「……わかった。」
先導する背中を追って、出口へと向かう。
今の自分は○○なのだ。
三角の耳を揺らしながら、彼女は心の中でため息をついた。
心がずきりとする。
さっきまで見ていた夢。
あの大切だった妹の名前はなんだっただろうか。
こんばんは、Whoです。
珍しく(?)二話続いて、主人公(信志とアイリス)以外の視点です。
最後にネタバレしていますが、まぁあの人です。
でも多分、はっきりとキャラの口から言うのはもうちょっと先になると思います。
ではでは。




