表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花屋は商魂たくましい  作者: Who
放浪編
52/159

side extra(伝わる想いと、届かない思い)

お礼を言った後、去っていく二人を見送る。

これまでに何度も経験してきたことだ。

そしてこれからも、何度も経験することになるんだろう。


(……。)


今は、それが少しだけ寂しく思える。



◇◆◇◆◇◆



「どうした、レンツ。」

「え?何がですか?」

「いや、なんでもない。」


レンツに言いかけた一言を飲み込んだグラッドは、気持ちを切り替えるように荷物を運び始める。


「オラ、今日もしっかり稼ぐぞ。」

「わっかりました!」


言葉でせっつくと、レンツも動き始める。

それを横目で見つつ、グラッドはさっきのことを考えていた。


『上手く偽装しているんだろうが、一目でただ物じゃないとわかった。』


彼にとっては確信的なものがあったが、実のところ根拠はなかった。

つまりはただの勘だったのだ。

しかし。


(あの年で『言えない身分』、か。今まで苦労を……いや、これから苦労することになるんだろうな。)


ま、頑張れ。

彼にしては珍しく、そんなことを考えた。



◇◆◇◆◇◆



一方その頃。


(『お前さんたちが聞かないで欲しそうに見えたからだ』か。)


グラッドのすぐ隣で荷物の整理をする、レンツもさっきまでのことを考えていた。

彼の名前はレンツ、ではなく。

レンリット・ツイン・ノイツェシュタイン。

ノイツェシュタイン王国の、歴とした王子なのだ。

その王家のしきたりで、一般階級、つまりは庶民の元で10年暮らさなければならない。

もちろん、王子ということは隠して、だ。


(僕の正体も実はバレてる、なんてことは……。)


さっきの会話を聞く限り、絶対にないとは言い切れない。

もうとっくにバレているかもしれない。

それでも、何も言ってこない。

それとなく尋ねることすら、しない。


(優しい人だよなぁ。)


それはきっと、僕が知って欲しくないと思っているから。

彼はその思いすら、感じ取って実行に移している。

相手の望むものを用意する。

そんな商人の意地にかけて。

だからいつか恩は返す。

仮にも、商人の弟子を名乗るのだ。

それくらい、できて当然というものだろう。



◇◆◇◆◇◆



(本人が知って欲しくなさそうだし、聞けない。)


グラッドとレンツ。

近い場所で、お互いの事情をなんとなく察しながら、お互いに思う。

知らないふりを続ける。

そんな二人の奇妙な旅は今日も明日も、明後日も続いていく。



◇◆◇◆◇◆



「準備はできたか?」

「はい。お待たせしました。」


ヨイツにある4つの門。

そのうちの一つの前で、ガルマンが信志とアイリスに訊ねる。

側には小さめの馬車が一台。


「……なら出発。」


返事を聞いた直後。

言うが早いか、早速サラが馬の手綱を握った。


「……早く。」


未だに馬車に乗っていない3人を急かす。

やれやれと肩を竦めるガルマンと信志、アイリスを乗せると、出発する。

目指すはメラーシュ。

本来ならば、ユーステスまでを考える所だが、サラの頭は別のことで一杯だった。


(……ネロ姉様。……やっと会える……!)


ネロ。

彼女の生き別れた姉。

物心ついた頃から、彼女たちに親はいなかった。

だからずっと二人だった。

それを不思議に思ったこともなかった。

自分は姉と一生一緒に暮らしていくのだと、信じて疑わなかった。

それなのに。


(……っ!)


嫌なことを思い出して、手綱を持つ手が震える。

あの日、唐突に終わったのだ。

姉がいる生活が。

何者かに連れ去られる、と言う形で。


(……でも。)


諦められなかった。

だから力をつけた。

彼女を探すための力を。

きっといつか、また会えると信じて。


(……それなのに。)


あれから10年。

手がかりは一切つかめていない。

行ける場所は片っ端から探した。

危ない橋を何度も渡ることになったけど、情報屋のもとを何度も訪れた。

それなのに。


(……何もわからなかった。)


もう死んでいるのかもしれない。

だから一切の情報がないのかもしれない。

自分でも半ばそう思いつつ、それでも諦められなくて。


(……。)


ある日訪れたギルドで、名前が聞こえた。

懐かしい、その名前が。

『ネロ、さん』と。

聞き間違えかとも思った。

ついに幻聴が聞こえるようになってしまったか、と。

それでも、そんなことはなかった。


(……だったら。)


ならば生きている。

また会うことができる。

そう思えるだけで、胸が苦しくなる。

やっと願いが叶う。

そのための道は示されている。

あとは行くだけだ。

だから、急ぐ。

一刻も早く、その願いを叶えるために。



◇◆◇◆◇◆



サラが馬車を急がせている、ちょうどその頃。

メラーシュから人影が一つ。

三角の耳を頭に生やしたその人影は、静かにユーステスに向かって進んで行った。

こんばんは、Whoです。


最近また、忙しさが加速し始めて、なかなか進めれませんが、なんとかやって行きます。

どうかお付き合いください。

多分これで行商編も半分になります。(変な回が間にこなければ)


ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ