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花屋は商魂たくましい  作者: Who
放浪編
49/159

side アイリス

バタン……。


信志さんが部屋を出た後、私はもぞもぞとベッドから起き上がりました。


「はぁあああぁあぁ……。」


思わず漏れるため息。

宿の部屋を取る時はなんともなかったのですが、いざ部屋に来てみると、途端に恥ずかしくなりました。


「変に思われたりしてないでしょうか……。」


恥ずかしくなった私は、昼間で疲れたことにして、さっさと潜り込んで顔を隠しました。

理由はもちろん、メラーシュでの事。

メラーシュの町は幻だったとはいえ、ネロさんに言われたことは心に残っています。

私が。


(私が、信志さんのことを……。)


そこまで考えたら、治った顔の火照りがまたぶり返して来ました。

起こしていた体を倒して、毛布に体を埋めます。


(本当にどうしてしまったんだろう……。)


自分でも制御できない感情。

今まで、ここまで人を好きになることはなかったから。

出口のない迷路に迷い込んだように感じるけれど、不思議と悪い気はしなくて。

信志さんのことを考えている時は、なんだか心がふわふわして。

そんなことを考えながら、いつのまにか私は目を閉じていた。



◇◆◇◆◇◆



パチリ。

そんな音がしそうなほど、自然に目が覚めました。


「信志さん……?」


近くのベッドに目を向けると、毛布が目に入ります。

でも、信志さんの姿はそこにありません。

もう下に降りたのでしょうか。

私も下に降りるため、荷物から服を取り出して着替えます。

服は、街の人たちが来ているような目立たない服。

目立つのは避けた方がいいと、昨日グラッドさんに渡された服です。


(よし。)


ざっとチェックをして、問題がないことを確かめると、外へ足を向ける。

ユーステスにいる頃は、手伝ってもらうことも多かったけど、今ではすっかり慣れている。

私もやればできるのです。


コンコンコン。


小さくガッツポーズをしていたところで、ドアがノックされました。


「アイリス、もう起きてる?入ってもいい?」

「あ、はい。どうぞ。」


扉を開けて入って来たのは信志さん。

信志さんもこの街でよく見かける服に着替えていました。


「おはよう、アイリス。グラッドさんに少し時間もらったからさ、朝ごはん食べたら少しギルドに行ってみない?」

「……そうですね。冒険者の方がいるかもしれませんし。」


冒険者ギルドには昨日のうちに、依頼の張り紙をお願いしておきました。

昨日の今日ではいないかもしれませんが、いってみるのもいいかもしれません。


「じゃあとりあえず下に降りようか。」

「はい。」



◇◆◇◆◇◆



宿にある食堂で朝食を済ませた私たちは、早速ギルドへ向かうことに。

昨日はあまり見れなかった街並みを見ながら、少しだけゆっくりと歩きます。


「そういえば信志さんは、昨日の夜、どこへ行っていたんですか?」


せっかくなので、ふと疑問に思ったことを訊ねて見ます。

信志さんは少しびっくりした後で、起きてたのと、つぶやきました。


「ちょっと寝付けなくてね。下に水をもらいに行ったんだ。……そしてそのままグラッドさんと話してた。」

「グラッドさんと、ですか?」

「うん。ちょっとした悩みをね。でもなんとか解決しそうだよ。」

「そうですか、よかったですね。」


だから、と信志さんは一度言葉を切ります。


「アイリスに教えて欲しいことがあるんだ。その、お金について。」

「お金、ですか。」

「うん。ボクは勇者にも戦士にもなれないからね。ボクなりの努力をしてみようと思った。」


その答えが商人なんじゃないか、と彼は言います。

正直、なぜそう思ったのかすぐにはわかりませんけど、以前と違って前向きな彼の目に、嬉しくなりました。


そうこうしているうちに、ギルドの前に到着です。

中へ入ると、時間が微妙なのか人は疎らでした。

受付に人が少ないので、順番はすぐに回って来ます。


「いえ、まだ依頼を受ける冒険者の方はいませんね。」

「そうですか。」


すみません、と謝る受付嬢さんに笑いかけてからギルドを出ようとした、その時。


「……今日はやる気でない。」

「何を言ってるんだ、サラ。」


入り口の方からやってくる、冒険者と思しき二人。

大柄で布製の防具をまとった男の人と。

その隣にいる、小柄な。


「ネ、ネロ、さん……?」


ネロさんにそっくりな女の子。

その子が、私の呟く声を聞き逃さなかったのか、まっすぐこちらにやってくる。


「……今、『ネロ』って言った?」


近くまでやってくると、有無を言わさない表情で私に問いかけます。

その表情に、私は頷くしかありませんでした。

こんばんは、Whoです。


少しぶりのアイリス視点。

なんだか突然にラブコメを書いている気分です。

アイリスよ、君はどれほど悶々としているんだ……。


ではでは。

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