side 信志
「すいません、お部屋はもう2部屋だけなんですよ。」
「あぁ、それで構わねぇ。」
グラッドさんの店を手伝った後。
この街でよく利用するといっていた宿屋に連れてきてもらった。
「と、いうわけだ。俺とレンツは同じ部屋でいいから、信志達も同じ部屋で我慢してくれ。」
「わかりました。」
と、そんなわけで夜。
ボクとアイリスで1部屋。
その隣の部屋に、レンツくんとグラッドさんの部屋がある。
疲れたからか、アイリスは早々に眠りについた。
一方、ボクはというと。
「…………うーん。」
ウロウロ、ウロウロ……。
なんだか落ち着かず、部屋の中を意味もなく歩き回っていた。
思えば、本当に今更ながらだけど。
(二人だけなのは初めてだなぁ……。)
この世界に召喚される前。
女の子と全く接点がなかったわけではないけれど。
こうして部屋にいると、なんとも言えない感じが湧き上がる。
嫌な感じではないけど、なんとなく落ち着かないというか……。
(少し、下に降りよう。)
結果、部屋から一時避難することに。
ついでに水でももらおう、と考えながら、ドアを開ける。
ゴソ……。
物音がしたので振り返ってみれば、アイリスは頭まで毛布をかぶっていた。
起こさないように気をつけてドアを閉めた後。
階段を降りて、下に向かった。
◇◆◇◆◇◆
「ん?よぉ、お前さんか。どうした?」
「ちょっと、眠れなくて。」
1階に降りてみると、グラッドさんが一人でテーブルに向かって座っていた。
宿屋の人にお願いして水を受け取ると、向かい合って座る。
「なんだ。俺はてっきり、この前のことを話しにきたのかと思ったぞ。」
「あぁ、そうですね。じゃあそのことも話します。」
ガタッ。
「だ、大丈夫ですか?」
グラッドさんがニヤリと笑いながら聞いてきたので、そのまま返事をすると、椅子から転げ落ちそうになった。
大丈夫だろうか。
「あ、あぁ。大丈夫だ。だが、いいのか?話しちまっても。」
「えっと、あんまり人を疑うの、慣れてなくて。」
「そうか、まぁいい。そっちが話すなら俺は聞くだけだ。」
そういって、気を取り直すように目で促す。
だからボクは口を開く。
役割のこと、能力のこと。
それから、メラーシュであったことも。
もちろん、ボクとアイリスのことは伏せて。
「そうか、操草師……。いったいどんな手品なのかと思ったが、そういうことか。」
一通り話し終えると、グラッドさんはブツブツとつぶやき始めた。
「このこと、俺たち以外には話したのか?」
黙って首を横に振る。
メラーシュの人はノーカン、だよね?
「それで能力を見せた後に、ああなったのか。」
「……、だからどうしていいかわからないんです。誰の役にも立てない、こんな役割で。」
ギシッ……。
グラッドさんが背をそらしたのか、椅子が鳴る。
「役に立たない、ってのは違うんじゃないか?」
「……?」
「俺たち商人の側から言わせて貰えばな。お前さんの能力。そいつは、『無』から『有』を生み出すものだ。いくらでも金儲けができちまう。」
「っ!」
グラッドさんのその言葉に、思わず立ち上がってしまう。
「落ち着け。別に今更お前さんをどうにかしようとは思わん。」
「…………。」
「ふん。そうだ、それでいい。」
何かに納得したようにグラッドさんは話を続ける。
「メラーシュでは、無償で能力を使ったんだろう?」
「はい。」
「それがそもそもの間違いだ。お前さんの能力は便利すぎる。それこそ、なんとか利用しようと思ってしまう程に。」
ボクに向けていた視線を、テーブルの上に戻してからグラッドさんは続ける。
「だからちゃんと、対価を取れ。お前さんの能力にはその価値がある。」
「…………。」
正直、飲み込むのに時間がかかりそうだ。
ボクの役割、その能力に、価値……?
でも。
「いいんでしょうか、お金なんか要求しても。」
「いいんだよ。相手はお前さんを不必要に利用しなくなるが、欲しいものが手にはいる。お前さんは人の役に立つし、金も手に入る。……いいことだらけの万々歳じゃねぇか。」
それに、とグラッドさんは続ける。
「俺たち商人は、そうやって生きてんだ。自分のやってることにケチつける程、俺は落ちぶれちゃいないぞ。」
「商人……。」
「あぁ、そうだ。」
「……ボクにも、できるでしょうか?」
そこでグラッドさんは、少し考えてから。
「さぁな。だが、やってみてもいいんじゃねぇか?」
その時、ボクの中で一つの小さな目標ができた。
こんばんは、Whoです。
色々と積み重なって、だんだん更新が遅れつつあります。
すいません。
そして、やっぱり2話連続での信志くん視点。
唐突なグラッドさん回。
次はアイリス視点にできる(はず)。
ではでは。




