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花屋は商魂たくましい  作者: Who
放浪編
48/159

side 信志

「すいません、お部屋はもう2部屋だけなんですよ。」

「あぁ、それで構わねぇ。」


グラッドさんの店を手伝った後。

この街でよく利用するといっていた宿屋に連れてきてもらった。


「と、いうわけだ。俺とレンツは同じ部屋でいいから、信志達も同じ部屋で我慢してくれ。」

「わかりました。」


と、そんなわけで夜。

ボクとアイリスで1部屋。

その隣の部屋に、レンツくんとグラッドさんの部屋がある。

疲れたからか、アイリスは早々に眠りについた。

一方、ボクはというと。


「…………うーん。」


ウロウロ、ウロウロ……。

なんだか落ち着かず、部屋の中を意味もなく歩き回っていた。

思えば、本当に今更ながらだけど。


(二人だけなのは初めてだなぁ……。)


この世界に召喚される前。

女の子と全く接点がなかったわけではないけれど。

こうして部屋にいると、なんとも言えない感じが湧き上がる。

嫌な感じではないけど、なんとなく落ち着かないというか……。


(少し、下に降りよう。)


結果、部屋から一時避難することに。

ついでに水でももらおう、と考えながら、ドアを開ける。


ゴソ……。


物音がしたので振り返ってみれば、アイリスは頭まで毛布をかぶっていた。

起こさないように気をつけてドアを閉めた後。

階段を降りて、下に向かった。



◇◆◇◆◇◆



「ん?よぉ、お前さんか。どうした?」

「ちょっと、眠れなくて。」


1階に降りてみると、グラッドさんが一人でテーブルに向かって座っていた。

宿屋の人にお願いして水を受け取ると、向かい合って座る。


「なんだ。俺はてっきり、この前のことを話しにきたのかと思ったぞ。」

「あぁ、そうですね。じゃあそのことも話します。」


ガタッ。


「だ、大丈夫ですか?」


グラッドさんがニヤリと笑いながら聞いてきたので、そのまま返事をすると、椅子から転げ落ちそうになった。

大丈夫だろうか。


「あ、あぁ。大丈夫だ。だが、いいのか?話しちまっても。」

「えっと、あんまり人を疑うの、慣れてなくて。」

「そうか、まぁいい。そっちが話すなら俺は聞くだけだ。」


そういって、気を取り直すように目で促す。

だからボクは口を開く。

役割のこと、能力のこと。

それから、メラーシュであったことも。

もちろん、ボクとアイリスのことは伏せて。


「そうか、操草師……。いったいどんな手品なのかと思ったが、そういうことか。」


一通り話し終えると、グラッドさんはブツブツとつぶやき始めた。


「このこと、俺たち以外には話したのか?」


黙って首を横に振る。

メラーシュの人はノーカン、だよね?


「それで能力を見せた後に、ああなったのか。」

「……、だからどうしていいかわからないんです。誰の役にも立てない、こんな役割で。」


ギシッ……。


グラッドさんが背をそらしたのか、椅子が鳴る。


「役に立たない、ってのは違うんじゃないか?」

「……?」

「俺たち商人の側から言わせて貰えばな。お前さんの能力。そいつは、『無』から『有』を生み出すものだ。いくらでも金儲けができちまう。」

「っ!」


グラッドさんのその言葉に、思わず立ち上がってしまう。


「落ち着け。別に今更お前さんをどうにかしようとは思わん。」

「…………。」

「ふん。そうだ、それでいい。」


何かに納得したようにグラッドさんは話を続ける。


「メラーシュでは、無償で能力を使ったんだろう?」

「はい。」

「それがそもそもの間違いだ。お前さんの能力は便利すぎる。それこそ、なんとか利用しようと思ってしまう程に。」


ボクに向けていた視線を、テーブルの上に戻してからグラッドさんは続ける。


「だからちゃんと、対価を取れ。お前さんの能力にはその価値がある。」

「…………。」


正直、飲み込むのに時間がかかりそうだ。

ボクの役割、その能力に、価値……?

でも。


「いいんでしょうか、お金なんか要求しても。」

「いいんだよ。相手はお前さんを不必要に利用しなくなるが、欲しいものが手にはいる。お前さんは人の役に立つし、金も手に入る。……いいことだらけの万々歳じゃねぇか。」


それに、とグラッドさんは続ける。


「俺たち商人は、そうやって生きてんだ。自分のやってることにケチつける程、俺は落ちぶれちゃいないぞ。」

「商人……。」

「あぁ、そうだ。」

「……ボクにも、できるでしょうか?」


そこでグラッドさんは、少し考えてから。


「さぁな。だが、やってみてもいいんじゃねぇか?」


その時、ボクの中で一つの小さな目標ができた。

こんばんは、Whoです。

色々と積み重なって、だんだん更新が遅れつつあります。

すいません。


そして、やっぱり2話連続での信志くん視点。

唐突なグラッドさん回。


次はアイリス視点にできる(はず)。


ではでは。

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