side 信志
「なぁ……、お前さん、俺たちに隠してることないか?」
焚き火を挟んで座るグラッドさんの声に、ハッとなって顔を上げた。
「ふん、やっぱりか。」
「…………。」
顔を上げて反応してしまったことで、すぐに見抜かれてしまった。
夜。
ヨイツまでもう少し、というところだったけど、安全のため、早めに移動を切り上げた。
アイリスとレンツくんはすでに寝ていて、ボクとグラッドさんだけが火の番をしている。
焚き火が少し崩れたのを見て、グラッドさんが木を放り込んだ。
そして、そのまま。
「…………。」
視線を火に向けて、黙り込んでしまった。
自然とボクの視線も火に向かう。
「ま、気づいたから聞いただけだ。別に特別問い詰めたいわけじゃない。」
「……そうなんですか?」
当たり前だ、と呟いてグラッドさんは器の水を飲み干す。
「俺だって、自分が生きるのに精一杯なんだ。他人のこと気にしてられるほど暇じゃない。……だがまぁ、お前さんが話そうって気になったら、酒の肴にでも聞いてやる。」
もういっぱい水を入れて飲み干してからふと、丘の向こうを見る。
その丘から、眩しく輝く日が昇ってきた。
「チッ、もうこんな時間か。薪足すんじゃなかった……。」
ブツブツと言いながらも腰を上げるグラッドさんに倣って、朝食の準備を手伝う。
そんなことをして、外で食べる朝ごはんを想像してようやく、自分が異世界にいるのだと今更ながらに思った。
◇◆◇◆◇◆
「そこで止まれ!荷物を検める。」
二人をおこして出発した後。
ちょうどお昼になろうかというところで、ヨイツにたどり着いた。
魔物から街を防ぐために、街の周りには壁が造られていて、門のところには門番が立っていた。
積んである荷物を確認してから、ボクらのところへやってきた。
「何か、身分を証明できる物はあるか?」
グラッドさんとレンツくんが商人ギルドのタグを見せるのを横目に。
ボクとアイリスは声をそろえた。
「「この街で、ギルド登録しようかと。」」
時間は少し前に戻る。
◇◆◇◆◇◆
「そういえば、お二人は何か身分を証明できる物って持ってるんですか?」
「身分を、証明?」
「あっ!そうでした……。」
「なんだ、信志はしらねぇのか。」
レンツくんの言葉に、アイリスは声をあげ、ボクは首を傾げてから、気づいた。
もしや、その何かがないと街へ入れないのだろうか。
「ヨイツはいろんな人が訪れますからね。ギルドなどに所属して、身元を保証してもらっている人じゃないと基本的に入れないんですよ。」
「じゃあ、もしかして……。」
「はい、それがない私たちは入れません。」
なんてこった。
確かに口だけならなんでも言えてしまうのだから、そういった物が必要になるんだろう。
でも。
「グラッドさん、基本的にっていうのは?」
「ああ、俺たちみたいにギルドのタグを持っているやつと一緒なら、入ることもできるんだ。」
「じゃあ、それでいいんじゃ……?」
「それだと、誰でも入れちまうだろ。だから制限がつくんだ。」
「制限?」
「はい、その街でギルドなどへ登録すること。これが制限になっていて、出る時にもタグを確認されます。」
「つまりは、タグを作るために入るぐらいなら許してやる、って感じですね。」
レンツくんの言葉にようやく納得した。
つまりは、その街でどこかのギルドに所属しなければいけないのか。
◇◆◇◆◇◆
「この街でギルドへ登録か、わかった。……なら、この仮入書を渡しておく。」
門番から一枚の、「仮」と書かれた板を渡された。
「中にいる間は常に持っていてくれ。そして出る時に、返してくれ。」
通っていいぞ、という言葉に馬車が門をくぐる。
目の前に広がるのは、街。
ユーステスとも、メラーシュとも違う、活気あふれる街が広がっていた。
こんばんは、Whoです。
さて、たどりつきました、ヨイツです。
といっても、温泉街でなく、イメージとしては商人の街、という感じですが。
ちなみに、次回か次次回にギルドに所属することになるんですが、まぁあそこですよね(笑)。
今回信志くんが異世界を実感〜とか言ってますが、これは作者の思考です。
魔物を見るよりも、魔法が使えるようになるよりも、知らない場所で知らない人と知らない物を食べる。
そんな小さな変化で感じるんじゃないでしょうか、異世界。
え?感じない?
そんな……。
ではでは。




