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花屋は商魂たくましい  作者: Who
放浪編
44/159

side アイリス

「…………。」

(グラッドさん……?)


信志さんが蔦を渡す瞬間。

グラッドさんの目が一瞬細くなった、ような気がしました。

でもそれはすぐに元に戻って。


「使わせてもらおう。」

「ありがとうございます。」


そのまま、受け取った蔦で盗賊を縛り始めました。


「よし。じゃあ出発だ!」


縛りおえたグラッドさんの一声で、また馬車を走らせ始めました。



◇◆◇◆◇◆



「お話したい事があるんです。」


馬車が出発してから少し。

私は信志さんに切り出しました。


「信志さんは、覚えていますか?メラーシュでの、ネロさんの事を。」

「……うん。覚えているよ。」

「そうですよね。……でも、どうしてなんでしょうか。」

「どうしてって?」


首を傾げた信志さんに、私は声を少し潜めました。


「最後に会った魔族。私たちが町での事を思い出せないのは、あの町が幻だからだと言っていました。そして私たちは本当に思い出せません。」

「そういう事か。」

「はい……。」


なるほど、と頷いた信志さん。

その上で。


「確かに不思議だけど、いまは気にしないようにしてるよ。考えても仕方ないとも思ってるし。」

「……そうなんですか?」

「うん、それに……。」

「あ、アイリスさん。ちょっと手伝ってもらっていいですか?」

「レンツさん?どうしました?」


信志さんが頷いたところで、レンツさんが前から声をかけてきました。


「ヨイツまでもう少しかかりそうなんで、ご飯の準備でもしようかと。……ええと、何か取り込んでました?」

「えっと……その。」

「いや、大丈夫だよ。」

「そうですか?よかった。それじゃお願いします。信志さんはグラッドさんと一緒に前で見張りお願いしますね。」


最後に信志さんが何か言いかけたと思いましたが……。

レンツさんに連れられて、馬車の後ろで野菜を向くのを手伝い始めました。



◇◆◇◆◇◆



「よし、これで全部ですね。」

「あれ、もう終わりなんですか?」


レンツさんの一言にふと、手元を見ると、確かに用意してあった野菜はすべてむき終えています。

いつの間にか、ぼんやりしてしまっていたようです。


「すいません、私あまり役に立てなくて……。」

「いやいや、大丈夫ですよ。」


そういうレンツさんの手元には、私よりもひとまわり大きい山が出来上がっています。

少し申し訳なくなりながらも、野菜や道具を片付け始めると、不意にレンツさんが切り出しました。


「そういえば……。これは聞いてもいいか迷ったんですけど。」

「はい?なんです……っ!」


振り返ると、レンツさんの顔が直ぐ近くに。

驚く私をよそに、声を小さくして続けました。


「多分なんですけど。アイリスさんって、王族かそれに関わる人、ですよね?」


瞬間、ドキリとしました。

隠していたことを、怒っているのでしょうか。

そんな思考を巡らせてしまい、表情を凍らせた私をみて、レンツさんは慌てて手を振りました。


「あ、その……。深入りするつもりはありませんから安心してください。」

「では……なぜなんですか?」

「……その腕輪にどことなく見覚えがあったんですよ。僕もこういった身分なので。」


そう言ってレンツさんは胸元からペンダントを取り出し、見せてくれます。

そこには、少し離れたところにある王国、ノイツェシュタインの印が刻まれていました。


「!……ということはレンツさんも……。」

「はい。だから、なんとなくわかりました。」

「このこと、グラッドさんは知っているんですか?」

「教えていません。教えてしまうと、きっと対等に扱ってくれませんから。」


一般階級の人の元で、10年過ごすこと。

それがレンツさんの家に古くからある伝統なのだとか。

そのために、身分を隠してグラッドさんの元に来たのだと、レンツさんは言います。


「なので、グラッドさんには内緒にしておいてくださいね?」

「はい……。それは、わかりました。」


最後まで道具を片付け終え、レンツさんは前にいるグラッドさんに声をかけます。


「グラッドさん、終わりましたよ。」

「よし、こっちもいい頃合いだ。今日はここまでにしよう。」


日が落ちきる前に休みどころを探す。

そう言ったことも、グラッドさんのところに来て教わったのだと、レンツさんの言葉を思い出しました。

こんばんは、Whoです。


昨日はすいません。

なんとか完成です。どうぞ。


最近お一人ですが、評価点をつけてくださる方がいまして。

ええ、喜びで机の角に足ぶつけました。

それぐらいうれしいです。ありがとうございます。


ではでは。

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