side アイリス
「魔族に……、襲われたんです。」
「「!?……ゲホッゴホッ……」」
「うわ!ビックリした!」
急に咳き込んだグラッドさん達に、慌てて水を渡します。
それを飲み干して、落ち着く間もなく、グラッドさんが信志さんを睨み付けました。
「ング……。ビックリしたのはこっちの方だっての!」
「ケホッ……。でも、なるほど。魔族がいたのなら、あの爆発も納得です。」
レンツさんが、涙目になりながらも頷きます。
でも。
「爆発って……。あの時、近くにいたんですか?」
「まぁな。そのおかげで今こうしているわけだ。」
「ですね。」
驚いて、転げ落ちそうになりました、と笑いながら付け足すレンツさん。
さ、さすがにそれは笑い事ではないと思うんですが……。
「しかし、なんだってこんなところに魔族が出たんだ?」
「どういうことですか?」
「あぁ、この辺はメラーシュがなくなってからは、あんまり物騒な噂はなかったんだ。だからこそ俺達も、ここを通った訳だしな。だから、というか。この辺は特に何もなかったはずなんだ。他でもない、魔族によってそうなった。」
「そうですね。今ここには何もない……はずです。ならなにか、他の目的があるんでしょうか……?」
理由もないのに現れる、というよりも何か理由があって現れた。
そう考えるグラッドさんの考えに、私も同意します。
問題は、どんな目的があるのか……ということ。
「まぁ、今わからないことを考えても埒が明きませんよ。」
「それもそうだな。」
静かになった雰囲気を、レンツさんが切り替える。
その一言に信志さんと私も、頷いてスープを飲み干します。
「さて、俺たちはこのままヨイツへ向かうが、あんたたちはどうする。」
飲み干したのを確認して、グラッドさんが尋ねます。
……本音を言えば、ここで別れてユーステスへ戻ったほうがいいはず。
でも。
「もしよければ、私たちも連れて行ってくれませんか、ヨイツへ。」
「え?帰らなくていいのかな。」
「はい。本当なら帰るべきだと思います。でも、私たちはやっぱり力がありません。二人だけで戻るのは危険だと思うんです。」
信志さんは操草師。
私は治癒師。
魔族と戦う力は、ない。
途中で襲われたら、どうにもなりません。
「それに、ヨイツには冒険者の人たちが集まるギルドもあるんです。そこで護衛を頼みましょう。」
「なるほど……。それなら確かに。」
「……わかった、ならば連れて行ってやる。」
お願いします、とグラッドさんに頭をさげると、了承してくれます。
「ただ、道中での雑用ぐらいは手伝ってもらうぞ。」
「はい、わかりました。……ありがとうございます。」
◇◆◇◆◇◆
「よぉし、出発だ!」
後片付けを済ませ、グラッドさんが荷馬車の御者台から声をかけます。
(ナルメア姉様、テト姉様。私はちゃんと帰ってきます。もうしばらく待っててください。)
メラーシュ、そしてユーステスの方を向いて心の中でつぶやきます。
(そして……。メルトさん、兵の人達。ネロさん、町の人たちが安らかに……。)
そこまで考えて、ふと疑問に思います。
メラーシュの人たちは覚えられてないのに。
どうして、ネロさんだけ覚えていられるのか。
あの町とそこにいた人達は全部幻想だ、と魔族が言っていた。
だから、覚えていないのだと。
なのに、どうして……。
「……?どうしたの、アイリス。」
「あ、いえ……、なんでもありません。行きましょうか。」
信志さんにそう言って二人、馬車に乗り込みます。
思い過ごしかもしれない、たまたま覚えているだけかもしれない。
きっと気のせいだと、思い直して。
「じゃあ出発しますね。」
レンツさんのその一言で、今度こそ馬車が動き始めます。
ゴトゴトと揺れる馬車の上。
(……。)
やっぱり、どうしても気にせずにはいられません。
「あの……、信志さん。ちょっと相談したいことが……。」
こんばんは、Whoです。
いつのまにか10000PV突破してました。
かなりのスローペースだと思いますが、最初はほとんど目も向けられないと思っていたので、嬉しい限りです。
これからも気長にお付き合いください。
ではでは。




