side 信志
ゴトゴト……、ゴトゴト……。
背中から伝わってくる、規則的な音にふと目を覚ます。
覚ます事ができた。
「っ!!」
慌てて体を起こそうとするも、体は全く言う事を聞かない。
頭すら起こす事ができないから、さっきから見えるのは空ばっかりだ。
(あの後、どうなったんだろう。)
アイリスと一緒に訪れたメラーシュの町。
そこは、以前に魔族に滅ぼされた。
ボクらはそれに気づかず、幻を見せられてその町にいた。
そして。
『こうなりゃ……おめえらも道連れにしてやるよォ!』
『あばよォ!また向こうで会おうぜ!』
魔族の自爆攻撃をもろにくらって、吹き飛ばされた。
「いぁ……。」
思い出すと木に打ち付けた背中が痛み出す。
どうやら夢だった、というわけでもないらしい。
しかし。
(ここ、どこだろう……。)
体が動かせない以上、確かめる術がない。
見えている空は右から左に流れているので、どこかへ運ばれているのだろうが。
(ここはおとなしくしておくしかない、かな……?)
ガタンッ!!
背中から大きな揺れが一つ。
一瞬浮いたボクの体は、そのまま後頭部を打ち付けて。
意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆
「よし、この辺で休憩にするぞ!水汲んでこい、レンツ」
「はい、グラッドさん。」
次に目が覚めたのは、そんな声が聞こえてきた時だった。
ついでに、背中から伝わる揺れも止まっている。
「ぅ……、よ、っと……。」
「おう、目が覚めたか。」
まだ痛む体を無理矢理起こすと、そんな声がした。
さっき聞こえた声の一つだ。
「あ、なたは……?」
「グラッド。通りすがりの商人だ。」
「商人……。!!そうだ、ボクの近くに女の子、いませんでした!?」
「グラッドさーん、汲んできました!」
さっき聞こえたもう一つの声。
振り向くと少年がいた。
向こうもこちらに気がついたようで。
「あ、目が覚めたんですね。よかった。」
「少女なら一緒だ。あんたの隣に、な。」
見渡すと、確かにアイリスがいた。
「よかった……。」
「……。何があったかは知らんが、こいつには感謝しとけ。お前さんらを見つけたのはこいつだからな。」
「いやー、あの時はびっくりしましたよ。突然、爆発なんて起きるんですから。あ、僕レンツって言います。」
ありがとう、と伝えると照れたように頭をかく少年、レンツくん。
爆発は……、魔族の最後のやつだろうか。
ぐうぅぅぅぅ……。
「っくしゅ……。」
不意にお腹が鳴る音と、小さなくしゃみが聞こえてくる。
「アイリス、気がついた?」
「信、志さん……?ここは?」
「俺達、というかこいつが、倒れていたあんた達を拾ったんだ。俺達は行商人でね、今は一先ずヨイツに向かっている。」
起きたアイリスの質問に、グラッドさんが答える。
その受け答えは普通で、ボクと同じく、痛みはまだあるみたいだけど、大きな怪我はないみたいだ。
その事にホッと胸を撫で下ろし……。
ぐううぅぅぅ……。
またお腹から音。
見ると、アイリスが顔を赤く染めていた。
ということは、さっきの音もアイリスだったのか。
「よ、よし!今度こそ飯にしよう!」
「はい!すぐに準備しますね!」
やや言い淀んだものの、グラッドさんのその一言でレンツくんが準備を始める。
レンツくんの手際はとても早く、あっという間に、食事の準備が整った。
「じゃあ、さっそく食べましょうか。えぇと……。」
「そういえばまだ、言ってなかったね。ボクは椿信志。」
「アイリスです。」
「信志さんと、アイリスさんですね。よろしくお願いします。」
スープが入った器を受け取りながら自己紹介をすませる。
具だくさんのスープで、味はコンソメに似ている、かな?
「あぐ……。それにしても、お二人はあんな所でなにしてたんですか?」
「食いながらしゃべるなよ、汚ねぇな。」
早速聞いて来るレンツくんに、アイリスと顔を見合わせる。
「どうしよ、言ってもいいのかな?」
「どうなんでしょうか。大丈夫、だとは思いますが……。」
思わず声を潜めて話してしまう。
そうすることがすでに、何かを隠していることに他ならないのだけれど。
「……。さっきも言ったかもしれないが、言いたくないなら言わなくてもいい。俺たちは商売柄、情報は欲しくてな。どうしても気になっちまうんだ。」
「……いえ、大丈夫です。」
すまねえな 、と謝るグラッドさんにアイリスが向き合う。
そして。
「魔族に……、襲われたんです。」
こんばんは、Whoです。
なんとか、新章開始です。
「行商人」とか「ヨイツ」とか。
僕にとって思い出深い作品からお借りしています。特に後者。
知っている人がいれば仲間ですね。
ではでは。




