side 信志
「オメェらあの町で、誰と、どんな風に、どうやって過ごしたんだ?」
そう言われて昨日の不思議な事だけを思い出した。
本当なら、他にも色々と思い出すはずなのに。
だけど、ボクの頭の中はそれでほぼ占められていた。
何せ。
たった今も光っているのだ、地面が。
(でも、誰も不思議そうにしていない……。気づいていないのか……?)
丘で昼寝をしていた時。
どこからか聞こえてきた声と、光っていた地面。
でも、あれはすぐに消えた。
気のせいだったはずだ。
なのに。
『信志!信志!聞こえる?』
どこからか声まで聞こえる。
ボクでもアイリスでも、ましてや魔族の声でもない声が。
「いいねェ、そんな顔が見たかった。」
魔族が何か言って、アイリスも俯いてしまったようだけど、正直今はそれどころではない。
あれは、気のせいなんかじゃなかったんだ。
しかも、今ここで同じ事が起きている。
(……聞こえてるよ、なんとか。君は?)
『よかった、やっと通じた。でも細かい事は後だよ。合図したら『スプラウション』を使って。』
(えっと……、なんで?)
『いいから!後はこっちでなんとかする!』
試しに心の中で話してみると、通じた。
それにしても、スプラウションでどうにかなるんだろうか……?
全く想像がつかない。
「……ます!『ヒーラス』!!」
『今だよ!信志!!』
そこに、狙ったかのようなタイミングで飛んでくるアイリスの魔法と、声。
あぁ、もう、仕方ない。
考えるのは後だ!
「『スプラウション』!!」
今までと違って、特に何も考えずに発した呪文。
そんな場合は、雑草が生えるか、もしくは何も生えないだろうと勝手に思っていた。
果たして。
ドサッ!
「痛!」
魔族の足元から生えたツタが。
その腕を、足を、身体を縛り上げる。
縛り上げられて力が抜けたのか、ボクの身体は地面に投げ出されてしまう。
また背中打った……。
「ぐ……。テメェ、何しやがった!」
顔も縛られているのか、下ではなく、上を向いたまま怒鳴る。
「大丈夫ですか?信志さん。」
「アイリス……。うん、なんとか。」
ミシッ……、ギシッ!
駆け寄ってきてくれたアイリスと、音のした方を振り向く。
「ぐっ、この!……クソがぁ!」
『まずいよ、抜けられそう!』
魔族がツタから抜け出そうと、もがいていた。
既に所々で、小さな亀裂が走り始めている。
もうすぐ破られてしまいそうだ。
『もう一度『スプラウション』を使って。今度はもっと強く!』
(わかった。)
「私にも、お手伝いさせてください!」
「!もしかして、アイリスもこの声が聞こえてるの?」
「はい、今は。……この腕輪を通して、私の力を渡します。」
「うん、わかった。……いくよ、『スプラウション』!」
「クソガァ!!!」
ミチミチミチッ!
ドズッ!
ゴポ……ゴポポ……。
ピチャ…………。
ボクが叫ぶと同時、魔族がツタを振り払う。
その直後。
すぐ後ろから生えてきた鋭い木が、胸を貫いた。
魔族の口から、貫かれた胸から、血が溢れかえる。
「……ふぅ。」
安心したのか、いまさら膝が笑い出した。
……曲がりなりにも、自分で生物を殺めてしまったこともあるのかもしれない。
ともあれ、今度こそ魔族の動きは止まった。
それでも貫かれたまま、立っているが。
気がつけば、光っていた草も元に戻っている。
「なんとか、」
なったか、と口にしようとして。
できなかった。
なぜなら。
「クソ、ガァ……。俺がこんな奴らにィ……。」
「そんな……、これでもまだ動けるん、ですか。」
ギチ、パラパラ……。
ほとんど壊れかけていたツタの戒めが、さらに壊れる。
「こうなりゃ……おめえら諸共道連れにしてやるよォ!」
そういう魔族の手には、既になにかの力が集まっていて。
警戒した時には、手遅れだった。
「あばよォ!また向こうで会おうぜ!」
そんな言葉と一緒に。
目の前が。
黒く、染まった。
ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
「うわあああぁぁぁ!!」
「きゃあああぁぁぁ!!」
最後の力を振り絞ったであろう、自爆攻撃。
ボクの身体は木の葉のように吹き飛ばされて。
「ぁぐっ……!」
地面をごろごろと転がった後で、木にぶつかって、ようやく止まる。
…………。
すぐには死ななかったようで、意識は微かにだけど、ある。
その意識を持って、うっすらと目を開けると、見えたのは夜空にある月。
(そういえば月の形は変わらないんだな……。)
そんな今更な感想を最後に、意識を手放してしまう。
手放して、しまった。
こんばんは、Whoです。
町の中でする事は終わったので、どんどん話を進めていきます。
今回は「無音の爆発」を表現してみたかったので「ッ」の連打とか入ってますが、連想できますかね?
そういった感想、もらえると有り難いです。
学校もひと段落したので、今週は半ばにも、もしかしたら更新するかもしれませんし、しないかもしれません。
もし「気になる!」という方がいれば、更新のお知らせはツイッターでしてるので、覗いてもらえると幸いです。
ではでは。




