side アイリス
「ウルセェな、あんたの相手は後だ。」
その言葉の後。
伸ばされた腕は、簡単に私の体を吹き飛ばしました。
(あぐっ……!)
吹き飛ばされた衝撃と、地面に落ちたそれで、肺の中にあった空気が全部外に。
悲鳴をあげることすらできません。
「……ゴホッ、けほっ……!」
慌てて息を吸いこもうとして、咳き込んでしまって。
起き上がれない私を置いて、魔族はそのまま信志さんのもとへ向かいます。
本当に私のことは後回しなんでしょう。
そして。
「……クク、ハハハハハッ!」
なんとか息を整えて、信志さんの方を向けば。
聞こえてきたのは、魔族の大きな笑い声でした。
(一体、何が……。)
思ってしまった疑問に、答えはすぐに返ってきました。
私の、私達の想像もしなかった答えが。
「オメェらが過ごしたあの町はなぁ、ゼェンブ幻なんだよ!」
瞬間、時が止まったように錯覚しました。
私も、もちろん信志さんも、言葉を出せません。
(どういうことですか。あの魔族は一体何を言って……。)
ありえない、と思いながらも、振り払えない気持ちの悪さ。
私達は確かにあの町で過ごしました。
それは事実のはずなのに……。
「なんだ?信じられないって顔してるなァ。」
信志さんの顔を覗き込むようにしながら。
「だったら聞いてやるよ。」
今にも笑い出しそうな声で。
「オメェらあの町で、誰と、どんな風に、どうやって過ごしたんだ?」
そう、聞いてきました。
何を、言っているんでしょうか?
不思議に思いながらも、頭は自然と記憶をたどっていく。
メルトさんとこの町に来て、魔族に襲われはしたけれど、なんとか町にたどり着けて。
領主さんやネロさんと出会……って……。
「!!」
「ほぅ……、そっちのやつは気付いたか。」
たどって、愕然としてしまいます。
……思い出せない……。
記憶の一部に「もや」がかかったように、はっきりとしない。
領主様や鉱山の鉱夫さんたち。
それに、スラムであった人たちの顔も、名前も。
見たはずなのに。
知っているはずなのに。
「……思い、出せません。」
あの町で、何を食べてどう過ごしたのか、ほとんど思い出せない。
「いいねェ、そんな顔が見たかった。」
顔を見なくても、魔族が満足気に笑ったのがわかります。
全部魔族の手の平の上でした……。
私達が見たものも、感じたものも、全部。
ふと自分の手を見ると震えていて。
それを抑えようとした反対の手も震えだして。
止まらない、止まらない、止まらない……。
『……リス、アイリス!アイリス!!』
「!!」
怖くなって、何も考えられなくなる、直前。
(……だ、れ……ですか?)
『よかった!やっと繋がった。』
周りを見回しても、魔族と私達しかいません。
でも。
(なぜでしょう……?)
どこかで。
いつか、聞いたことのあるような声。
それは私の心に直接聞こえてくるようで。
手の震えも止まっている。
『細かい説明は後だよ!いますぐ信志を癒して!』
(えっと……?)
『いいから!』
そんな風に催促されて。
確かに、信志さんの体は癒すべきだと、今更のように考えて。
「……わかりました、行きます!『ヒーラス』!!」
気を抜けば、また震えだしそうな手を掲げて。
なんとか呪文を唱えて。
信志さんの体が光に包まれた所で。
『今だよ!信志!!』
「『スプラウション』!!」
信志さんのその言葉に、魔族の足が、腕が、体が。
地面から生えてきたツタに絡め取られました。
こんばんは、Whoです。
さて答え合わせ、というよりも説明みたいになってますね……。
一応、こういう話に持って行きたかったので、話をだいぶぼかしてました。
領主とか鉱夫とか、本当に名前考えてませんでしたし。
後、食事の細かい描写なんかもばっさり抜いてます。
ではでは。




