side 信志
「一緒に考えましょう、どうすればいいのか。一人がだめなら二人で。」
「…………。」
一人がだめなら二人で。
その言葉で、ようやく気付いた。
(そうか、ボクは一人で頑張ろうとしていたのか。)
全くもって、ボクらしくもない。
「……ありがとう。」
そうだ、ボクはなんでもできる奴じゃない。
足りないものだらけだ。
でも、それなら。
足りないなら、集めよう。
持っていないなら、貰って、借りて、交換して。
ボク一人でする事がないように。
ボクが面倒臭いことしなくてもいいように。
(そして、いつかは……。)
最初に思った事を成し遂げよう。
それが彼女に、たった今優しくしてくれた彼女にできる、最大の……。
◇◆◇◆◇◆
しばらく。
途中から泣き出してしまっていたアイリスが泣き止んで。
お互いの体を寄せ合っている事に今更ながら気がついて。
お互いに慌てながら、距離を置いて座りなおすぐらいの時間がすぎてようやく。
「……ねぇ、アイリス。」
「はい、なんでしょう。」
先ほどから少しずつ感じてはいた、違和感。
いや、別にアイリスの声が未だに鼻声っぽいって事とかじゃなく。
「ボクらって、町からあまり離れずにいたよね?」
「そうですね。あんまり離れてなかったと思います。」
「だよね……。」
そこで一度言葉を切る。
そして、町の方を向いて。
「じゃあどうして、町が崖の下に見えるんだろう。」
「……え?」
そう、視界の下の方。
崖の下に町が見える。
ボクらは崖はおろか、坂道すら登っていないのに。
「やぁっと気づきやがったか、このうすのろ共め。」
「「!」」
まるで、突然そこに現れたかのような。
いや、実際そうなんだろう。
さっきまで、ここには二人しかいなかったはずだ。
それなのに、その場所に男が立っている。
「君は……?」
「!信志さん、離れてください。……あそこにいるのは、魔族です。」
アイリスの鋭い声に、その男、魔族の口元がニヤリと歪む。
「へぇ、さすがに王女サマには隠せねぇか。」
「こんなところに、何をしに来たんですか。」
「あぁん?魔族がわざわざ人間の前に現れてやったんだ。する事なんて決まってんだろうが、よっ!」
ッシュン!
途端、目の前に魔族の顔があって。
その次には、視界いっぱいの空。
そして最後に、背中に衝撃を受けて。
「カハァッ……!」
「……おいおい、オメェ本当に勇者かよ?」
「!信志さん!」
アイリスと、魔族の声が少し遠くから聞こえて来る。
いつの間にか倒れている体を起こそうとして、お腹に痛みが走った。
そこでようやく、殴り飛ばされたのだと気づく。
「ぐ……。」
顔を無理やりにあげると、魔族が近づいてくるのが見える。
その前に。
「やめてください!これ以上、信志さんを傷つけないでください!」
アイリスが体を割り込ませて、手を開く。
……守ってくれるように。
「ウルセェな、あんたの相手は後だ。」
それを、払う。
声にならない悲鳴をあげて、アイリスの体が宙を舞う。
(アイリス……!)
そして。
「全く、なんだってあのお方はこんな奴等を気にかけたんだか……。」
「……グァ……。」
近づいてきて、そのまま。
動かせない体を、持ち上げられる。
「……あの、お方……?」
「オメェらを、あの町におびき寄せたお方さ。」
言って、持ち上げているのとは反対の腕で、拳を作る。
「……そういやオメェら、あんな何もない場所で何やってたんだ?」
「……なんの、ことだ……?」
さっきまでのアイリスとの会話なら、こいつには全て聞かれていたはずだ。
あの時、「やっと」と言ったのだから。
「まさか、本当に気づいてないのか?」
「?」
要領を得ない、その言葉に無言を返すと。
「……クク、ハハハハハッ!」
堪えきれない、といったように笑い出す魔族。
あまりにおかしいのか、拳を解いた手で、目を覆っている。
「こいつは傑作だ!」
「……なんの……。」
事だ、と続けようとして。
「オメェらが過ごしたあの町はなぁ、ゼェンブ幻なんだよ!」
こんばんは、Whoです。
疲れがたまっていたのか、寝落ちしてしまいました。すいません。
さて、最後に衝撃(?)の事実をぶん投げてみました。
でも、実際には予測できた人も多かったんじゃないでしょうか。
……予測、できましたかね?
次回はその答え合わせみたいなものを、していこうかなと思ってます。
ではでは。




