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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
36/159

side アイリス

「怖いんだ、本当は。それに、ちょっとだけ悔しい。……ボクは誰かの役に立つ『人』になろうと思っていたのに。」


信志さんのその言葉に、私はようやく思い出しました。

どこかで見たことがある顔?

そんなぼんやりとしたものではありませんでした。

それは他の誰でも無い、私自身。

毎日毎日、鏡で見ていた私の顔。

誰かの役に立ちたい。

でも、上手くいかない。

そのことに悩み続けた私の表情が、今の信志さんと重なります。


「……そう、ですか……。」

「……うん、そうだよ……。」


自分の考えに納得したことに、溢れるつぶやき。

それに返事が返ってきたことで、もう一つ思い出します。

なぜ、なかなか思い出せなかったのか。

それは、目の前にいるこの人が忘れさせてくれたからです。

見知らぬ場所に連れてこられて、自分も不安だったはずなのに、周りに気をかけてくれて。

それなのに私は、彼が「勇者」だからすごい、ぐらいに思ってしまっていました。

そのことに、ずっと気がつかなくて。


「……ごめん、なさい……。」


自分でも気がつかないうちに、彼の腕を取っていました。

それをしっかりと抱きとめて。


「ア、アイリス……?」

「ごめんなさい、信志さん。」


ポロリ、とこぼれてしまう涙と一緒に、謝ります。

私は、なにもわかっていませんでした。

わかろうとも、していませんでした。

信志さんも「勇者」である前に、一人の「人間」だということを。


「私だってそうでした。なのに、忘れていたんです。あの夜、信志さんが慰めてくれたから……。」


出会って、お父様が倒れてしまって。

何もできずに、外で泣いてしまっていた私を励ましてくれた。

信志さんにとって小さなことでも、私にとってはとても大事なこと。

だから。

私の精一杯の気持ちを、伝える。


「信志さんは、何も間違ってなんかいません!そう思うことは、誰にだってあります!」

「……それでもボクは一応勇者だ。でも、弱音を吐く勇者なんて聞いたことが無い。……弱いやつは勇者であってはいけないんじゃないかな。」


今ならわかります。

信志さんは自分を卑下しようとしている。

……私も同じだったから。


「……そんなことはない、と思います。私は信志さんに勇気付けられました。」

「でも、それは……。」

「信志さんにその気が無かったとしても、私が救われたことは事実です。」


誰かの役に立ちたいと、そう願って。

上手くいかずに空回りしてしまった私と、上手くいきすぎて空回りしている信志さん。

違いはそこだけ。

だから。


「一緒に考えましょう、どうすればいいのか。一人がだめなら二人で。」


あの日、信志さんにもらった分を返すために。

私では力不足かもしれないけど、彼を助けるために。


「…………。」


抱きついたままで、彼に顔を向けれない私には、信志さんの顔が見えないけれど。

小さく、こくりと頷くのを感じて。


「……ありがとう。」


ぼそり、と聞こえてきたその言葉が嬉しくて。

お互いの目から流れる水は、二人とも気付かない振りをしていました。

こんばんは、Whoです。


視点を短いスパンでころころ切り替えると、若干読みにくくなりますが、登場人物の内側を書けるので実は結構好きです。

さて。

「普通の人が異世界に行ったらどうなるか」というのを、ボクなりに書くとこんな感じになります。

異世界に行っても、本人の根本が変わるわけないので、すごい力を手に入れても、まぁ失敗しますよね、というお話。

ここからどうするかはその人次第、となるわけですが。

信志くんはどうなるでしょうか。


と、いったところです。

ではでは。

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