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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
35/159

side 信志

「こっちの世界に来るまで、ボクは普通の人だったんだ。」


アイリスに詰め寄られた結果、出てきたのはそんな言葉。

実際、ボクはなんの変哲も無い学生だった。

多少の個性はあっても、世間に名が知られるような個性はなかった。

そんなボクが。

この世界に、なんの偶然か呼ばれて。

勇者だなんだと持て囃されて。

この世界のために頑張ってみるのもいいか、なんて柄にも無いことを思った。

思って、しまった。


「……だからボクはボクなりに頑張った。普通なら面倒臭がって絶対にこんなことしない。」


おおよそ、勇者が言うべきでは無い台詞。

召喚して、勇者であるらしいボクに期待を持ってくれるアイリスには、言ってはいけない言葉。

それでも、口は止まらない。

止まってくれない。


「ボクは全然勇者なんかじゃない。誰かのためになんて頑張れないんだ。」


言ってしまってから我に返る。

今の台詞は、なんだかんだ言ってもボクの本心なのだけれど、ずっと言わないようにしていた言葉で。


「…………。」


その言葉を聞いた、アイリスの表情は見えない。


(……がっかりさせたかな。させただろうな。)


それでも彼女は優しい。

もしかしたら励ましたり、それでもいいと言ってくれるかもしれない。

だからこそ(・・・・・)、ボクはその続きを言う。

彼女に嫌われて、見くびってもらうために。

これ以上、ボクに勇者の期待なんかをしないために。


「さっき、偶然町の人が話しているのを見たんだ。領主と鉱山の人と、それからスラムにいた人たち。みんなで何話してたと思う?…………ボクは『便利な道具』なんだって。」


言って、小さく笑う。

思った以上に乾いた笑いになってしまった。

そのことに、心の中でもう一度笑ってから。


「怖いんだ、本当は。それに、ちょっとだけ悔しい。……ボクは誰かの役に立つ『人』になろうと思っていたのに。」

「…………。」


アイリスは、無言のまま。

怒っているだろうか、それとも悲しんでいるだろうか。

表情が見えないのでどちらかはわからないが、これだけ情けないことを言ったのだ。

きっと、嫌ってくれたはず。


「……そう、ですか……。」

「……うん、そうだよ……。」


アイリスがまた黙り込んだので、つられてボクも口を閉じる。

……もうボクが言うべきことは言った。

静かに、アイリスの言葉を待つ。

待つ。

待って……。


……ぎゅっ。


突然腕が、隣から柔らかいものに包まれる。

より正確には、アイリスのいる方向から。


「……ごめん、なさい……。」


おどろいてそちらを見ると、アイリスの頭が近くにあった。


「ア、アイリス……?」

「ごめんなさい、信志さん。」


人間、突然のことには呆然となるらしい。

今がまさにその状況だろうか。

いきなり泣き出してしまったアイリスに、ボクは固まっていることしかできなかった。

あぁ、でも。

そんな目で見ないでくれ。

そんな、仲間を見るような顔で。

こんばんは、Whoです。

寒い日が続きますが、なんとか元気でやってます。


さて、もうそろそろ2章も終わりになります。

思えば初めて投稿したのが4月なので、もうじき1年ということに……。

その割には話進んでませんが。


次の章では新しいキャラも……と考えております。

わかりやすい話にしたいな、とも。


よければ、感想などお聞かせくださいね。

ではでは。

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