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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
33/159

side 信志

目をさますと、見たことのある天井だった。


(あれ。いつの間に館までもどってきたんだっけ?)


確か先ほどまで、外にいたはずだ。

なのに今は、屋内の見たことのある天井を眺めている。

えーと、確か……。

前に助けた子供がもう一度、と頼んできて。

とくにすることもなかったから、承諾して。

それから……。


こんこんこん。

がちゃ。


「信志さん!起きたんですね!」


控えめなノックの後、アイリスが部屋に入ってくる。

その顔を見て、ようやく思い出す。

また、倒れたのだ。

思えばこちらに来てから倒れてばかりだ。

大丈夫なんですか?と聞いてくるアイリスに、大丈夫と手を振る。


「ちょっと無理しちゃったみたいなんだ。」

「そう、なんですか。…………あの、信志さん。」

「ん?なに?」

「……その。体は大事にしてくださいね?」

「うん、気をつけるよ。」


なおも心配そうにするアイリスに、もう一度大丈夫と伝え、立ち上がる。

伸びをして窓の外を見てみると、すでに空は暗くなりつつあった。



◇◆◇◆◇◆



夜。

食事を済ませたところで、メルトさんが入ってくる。


「失礼。……おや、ちょうど食事終わりでしたか。」

「はい、どうしたんですか?」

「兵たちの回復が概ね完了しました。明日には王国へ向けて出発できるかと思います。」

「そうですか、分かりました。……では明日の朝にしましょう。」

「はい。……では、失礼します。」


一礼して、扉から出ていくメルトさんを見送った後。

アイリスがこっちを振り向いて。


「信志さんも、今日はしっかり休んで下さいね?」

「分かったよ、ありがとう。」

「…………。」


心配そうにこちらを見る、アイリスの視線を避けるようにして、ボクも部屋を出た。


「……おやすみなさい」


最後に聞こえた、アイリスのその声は。

何かを悲しんでる声に聞こえた……気がする。


「?あれは……?」


部屋を出てすぐ。

廊下の先に見える景色が、ぼんやりと明るい。

もちろん館にも、町にも明かりはある。

でも、それを差し引いても、その明かりは妙だ。

なにか、焚き火でもしているかのような……。


(…………。少しだけ、少しだけなら…………。)


いつもなら、特に気にせずベッドへ向かうのだけれど、今回はどうにも、足が外へ向いてしまう。

…………。

この時間に外へ出るのは、少しばかり面倒くさいけど。


(これも、最初に思ってしまったからなのかなぁ……。)


その言葉でとりあえず自分を納得させて、こっそり外へ出る。

やけに静かな、他に物音のしない中(・・・・・・・・・)

明かりの方へ、足を進めて行った。



◇◆◇◆◇◆



たどり着いたのは、スラムに入る所にある広場。

そこに、何人かの人たちが集まっていた。


「あれは……領主と、鉱山の人……?」


よく見れば、スラムで見た人たちもいる。

そんな、少し不思議なメンバーで焚き火を囲んでいる。

それが気になって、ボクも混ざってみようかと一歩踏み出す。

でも。


「それにしても、便利なものだな。勇者とやらは。」

「まったくです。俺たちの働きがあいつ一人で済むんですから。」

「ははは、違いない。」


領主との会話が聞こえてきて。

二歩目が出なくなった。

この町には天野くんも、間くんもいない。

勇者というのは、まず間違いなくボクの事だ。

それが……「便利なもの」?


「っ!」


変な声が出そうになって、咄嗟に口を押さえた。

今ここで下手に音を出すのはまずい。

ギリギリで声を出さずに済んだボクをよそに、会話はさらに進んでいく。


「しかし、彼らももうじき戻ってしまうのでしょう?」

「そこは心配ない。今朝、大臣を餌に困っているふりをしておいた。」

「さすがは領主様。……で、その大臣様はどちらに?」

「さてなぁ。今頃はもう地面の下に埋まっているのではないか?」


聞きとれたのはそこまでだった。

領主が大臣の話をし始めたあたりで、踏み出した足を引く。

そしてそのまま。

ゆっくりと、次第に速く。

その場所に背を向けて、離れる。


「ハァ……ハァ……ハァ。」


息が切れそうになっても構わずに走り続ける。

幸い、誰にも見つからなかったようで、そのまま離れることができたけれど。

わかってしまったのだ。

彼らにとって勇者は特別でもなんでもない。

「ただの便利な道具」なのだ。


「ハァ……ハァ……。」


始めは、それでもいいかとも思っていた。

でも、ここの人と接していくうちに、なんだか認められたような気がしていた。

魔物と戦う力はないけれども。

ボクも、勇者として誰かの役に立てるのだと、そう思っていた。


「ハァ……くそ……。」


多分役に立っていることは、役に立っているんだろう。

でもそれは、誰でもよかったのだ。

たまたまそれがボクだっただけ。


「…………。」


もう息をつく元気もなくなって無言になる。

それでも走り続けた結果。


ガッ、ドサッ。


小高い丘の上で見事に転ぶ。

とっさに手をつくこともできなくて、顔から地面に突っ込む。

顔面を泥だらけにして、転がり回る。

涙が出そうになった。

……実際は少し出ていたのかもしれない。

利用されていたくやしさと。

そのことに、こんなに傷ついてしまっている自分のみっともなさと。

いろんな感情で、ごちゃ混ぜになった顔を晒しているところに。

足音。


「っ。信志さん!」


顔を上げなくてもわかる。

今は会いたくなかった顔。

勇者としてのボク、椿信志が会ってはいけなかった顔。


(アイリス……。)


どうして……、と思ってから、腕を見やると。

最初に会った時に着いた腕輪がそこにはあった。

あけましておめでとうございます。

そしてこんばんは、Whoです。


みなさん知ってましたか?なんと今日はお正月らしいですよ。

どうりで寒いはずです。

今年もがんばっていきますので、おつきあいいただけたら幸いです。


ではでは。

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