side アイリス
夜。
夕食を済ませた私たちは、それぞれの部屋で休むことにします。
未だにお風呂の余韻が残っているのか、体がふわふわするので少し夜風に当たることにした私は、用意された部屋とは違う方向に足を向けていました。
魔法の火でぼんやりとした明かりに照らされた廊下は、なんだか夢心地になります。
そんな静かな夜。……いえ少し違いますね。
これは……。
(昨日も聞こえてきた、音……。)
注意して聞かなければ聞き逃してしまいそうな、小さな音。
それでも不思議とはっきり聞こえてきます。
気になった私は、そのまま向かってみることに。
幸い、私が行こうと思っていた場所と、その音が聞こえてくる方向は同じでした。
聞こえてくる音を追って私がたどり着いたのは、小さめの中庭。
その真ん中には木が立っていました。
音はどうやらその中から聞こえてくるようです。
誰かが登っているのでしょうか?
そのままそこにいても仕方ないので、近くに寄ってみることに。
「……?誰?」
木の根元にたどり着くと、そんな声が上から降ってきました。
「ネロさん……?」
「そう、私。」
聞き覚えのある声に向かって尋ねると、答えが返ってきます。
そのまま声の主、ネロさんが上から降りてきました。
「もう寝たのかと思ってた。」
「いえ、少し夜風に当たろうと。そうしたら音が聞こえてきたんです。ネロさん、それは?」
「名前は知らない。……でも、私が大事に持っていたものなんだって。」
そう言うネロさんの手には、ちょうど手のひらに収まるようなものが握られています。
楽器、でしょうか?
茄子に突起がついたような形をしていて、丸い部分には幾つかの穴が空いています。
「すごく綺麗な音ですよね。どうやって演奏するんですか?」
「穴をおさえてここの突起から息を吹き込む。どの穴を塞ぐかで音が変わるみたい。」
説明した後で、ネロさんが実際に演奏してくれます。
……♪〜♪♪〜。
昨日も聞いた不思議な感覚。
安心と不安が、同時に襲ってくるような、そんな……。
カサッ。
目を閉じてネロさんの演奏を聴いていると、後ろから草を踏む軽い音が。
振り返ると。
「信志さん。」
「信志……。」
「こんばんは、アイリス。ネロも。」
楽な格好をした信志さんでした。
私と同じで音をたどってきたのでしょうか。
そのまま私たちの近くに座り込みました。
「ネロの吹いている、それ。オカリナだよね?いい音がするんだね。」
「おか、りな……?」
「あれ、こっちでは違うのかな。……ボクの住んでいたところでは、そんな形をした楽器をオカリナって言ってたんだ。」
「んーん。私が知らないだけ、だと思う。オカリナ……。いい名前。」
ネロさんはもう一度オカリナ、と小さくつぶやいて演奏を再開します。
信志さんも加わった、夜の一時はゆっくりと過ぎていきました。
「信志、アイリス。二人はこの世界が好き?」
演奏を終えて、部屋に戻ろうかという時。
ネロさんが唐突に、尋ねてきました。
ええと……?
「特に深い意味はない。ただ、興味本意で聞いただけ。」
「そうなんですか?……でも私は好きですよ。」
「ボクは……好きになろうとしている。って感じかな。」
「そう……。でも、嫌いじゃない?」
「まぁね。」
「なら、良かった。……私はこの世界が好き。今は、人間と魔族が争ったりして、嫌なこともたくさんあるけど。でも、笑顔がちゃんとそこにある。……そんな世界が私は好き。」
ネロさんにとっては、珍しく長い言葉。
言ってから、自分でも気がついたのでしょうか。
顔を赤くした後、違う方向を向いてしまいました。
「……ちょっと偉そうな事言った。忘れて。」
そんな小さな呟きが。
たまたま吹いた風に流されて、私には聞こえてきました。
こんばんは、Whoです。
ネロの持ってる楽器は、名前伏せ続けようかとも思ったんですが、信志くんに行ってもらう事に。
オカリナって知ってます……よね?
イメージとしては某ゼルダの「時◯オカリナ」を想像していただければ、と。
最近、いろんなイベント盛りだくさんだし、やる事も急増したけど、ゆっくりと続けていくので、長い目で見てやってください。
ではでは。




