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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
29/159

side アイリス

夜。

夕食を済ませた私たちは、それぞれの部屋で休むことにします。

未だにお風呂の余韻が残っているのか、体がふわふわするので少し夜風に当たることにした私は、用意された部屋とは違う方向に足を向けていました。

魔法の火でぼんやりとした明かりに照らされた廊下は、なんだか夢心地になります。

そんな静かな夜。……いえ少し違いますね。

これは……。


(昨日も聞こえてきた、音……。)


注意して聞かなければ聞き逃してしまいそうな、小さな音。

それでも不思議とはっきり聞こえてきます。

気になった私は、そのまま向かってみることに。

幸い、私が行こうと思っていた場所と、その音が聞こえてくる方向は同じでした。


聞こえてくる音を追って私がたどり着いたのは、小さめの中庭。

その真ん中には木が立っていました。

音はどうやらその中から聞こえてくるようです。

誰かが登っているのでしょうか?

そのままそこにいても仕方ないので、近くに寄ってみることに。


「……?誰?」


木の根元にたどり着くと、そんな声が上から降ってきました。


「ネロさん……?」

「そう、私。」


聞き覚えのある声に向かって尋ねると、答えが返ってきます。

そのまま声の主、ネロさんが上から降りてきました。


「もう寝たのかと思ってた。」

「いえ、少し夜風に当たろうと。そうしたら音が聞こえてきたんです。ネロさん、それは?」

「名前は知らない。……でも、私が大事に持っていたものなんだって。」


そう言うネロさんの手には、ちょうど手のひらに収まるようなものが握られています。

楽器、でしょうか?

茄子に突起がついたような形をしていて、丸い部分には幾つかの穴が空いています。


「すごく綺麗な音ですよね。どうやって演奏するんですか?」

「穴をおさえてここの突起から息を吹き込む。どの穴を塞ぐかで音が変わるみたい。」


説明した後で、ネロさんが実際に演奏してくれます。


……♪〜♪♪〜。


昨日も聞いた不思議な感覚。

安心と不安が、同時に襲ってくるような、そんな……。


カサッ。


目を閉じてネロさんの演奏を聴いていると、後ろから草を踏む軽い音が。

振り返ると。


「信志さん。」

「信志……。」

「こんばんは、アイリス。ネロも。」


楽な格好をした信志さんでした。

私と同じで音をたどってきたのでしょうか。

そのまま私たちの近くに座り込みました。


「ネロの吹いている、それ。オカリナだよね?いい音がするんだね。」

「おか、りな……?」

「あれ、こっちでは違うのかな。……ボクの住んでいたところでは、そんな形をした楽器をオカリナって言ってたんだ。」

「んーん。私が知らないだけ、だと思う。オカリナ……。いい名前。」


ネロさんはもう一度オカリナ、と小さくつぶやいて演奏を再開します。

信志さんも加わった、夜の一時はゆっくりと過ぎていきました。






「信志、アイリス。二人はこの世界が好き?」


演奏を終えて、部屋に戻ろうかという時。

ネロさんが唐突に、尋ねてきました。

ええと……?


「特に深い意味はない。ただ、興味本意で聞いただけ。」

「そうなんですか?……でも私は好きですよ。」

「ボクは……好きになろうとしている。って感じかな。」

「そう……。でも、嫌いじゃない?」

「まぁね。」

「なら、良かった。……私はこの世界が好き。今は、人間と魔族が争ったりして、嫌なこともたくさんあるけど。でも、笑顔がちゃんとそこにある。……そんな世界が私は好き。」


ネロさんにとっては、珍しく長い言葉。

言ってから、自分でも気がついたのでしょうか。

顔を赤くした後、違う方向を向いてしまいました。


「……ちょっと偉そうな事言った。忘れて。」


そんな小さな呟きが。

たまたま吹いた風に流されて、私には聞こえてきました。

こんばんは、Whoです。


ネロの持ってる楽器は、名前伏せ続けようかとも思ったんですが、信志くんに行ってもらう事に。

オカリナって知ってます……よね?

イメージとしては某ゼルダの「時◯オカリナ」を想像していただければ、と。


最近、いろんなイベント盛りだくさんだし、やる事も急増したけど、ゆっくりと続けていくので、長い目で見てやってください。


ではでは。

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