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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
26/159

side 信志

「なるほど、わかった。」


……さて、どうしよう、この空気。

独り言のつもりで呟いたのに、皆の会話が途切れた瞬間だったから、やけに大きく響いてしまった。


「ええっと、要はここの環境が変わればいいんですよね?」

「あ、あぁ、その通りだ。しかし……。」

「でしたら、植物を植えましょう。」

「植物を?なんでまた。」

「ボクのいた……えぇっと、国では、そうしていたんです。」


思わずボクのいた世界と言ってしまいかけて、ギリギリで取り繕う。

隠す気はないけど、まぁ今言うことでもないし。

話が逸れてしまうのも面倒だ。


「そうなのか?変わった風習だな。」

「いや、待て。俺は聞いたことがあるぞ。なんでも、周りを綺麗にしてくれる、だったか。」


話を聞いていた一人から、思わぬフォローが入った。

これは、ありがたい。


「だが、ここは大地の恵みも少ない。例え植えても、すぐに枯れてしまうんじゃないか?」

「大丈夫です。こういうところでも立派に育つ物があります。」


地面に水が少なく、痩せた土地。

そんな環境でも育つ植物は、ある。


元いた世界でも、砂漠に生えていた植物。

サボテン。


「じゃあ、行きますね。」


あの植物は非常に独特の形をしてはいるが、口でうまくいえる自信がない。

見せてしまった方が早い、と思う。

立ち上がって外に出る。

せっかくなので、建物の入り口に生やしてしまおう。


「『スプラウション』!」


生えてくるのは、もちろんサボテン。

針のような花もびっしり生えている。


一通り、生える様子を見届け、みんなの方を振り返る。

そこにあったのは、物珍しいサボテンに興味を引かれる表情、


ではなく、ありえないものを見た、という困惑した表情だった。

アイリスもなんだか困った笑い方をしているみたいで……。

ふむ……、あ。

少し考えてようやく、少し変わった操草師のことを伝え忘れていることに気がついた。





「全く、お前には驚いたぜ。」

「すいません、なんだかもう説明した気になってて……。」


あの後。

驚く皆を落ち着かせながら、事情を説明した。

ボクが、少し変わった操草師であること。

その影響なのか、ユーステスではそれが広く広まったこと。

そして、アイリスと二人、他の場所での確認に来たこと。


「だがまぁ、助かったのは事実だ。ありがとよ。」


……面と向かってお礼を言われてしまうとやっぱり、照れる。

なので、視線をそらして周りを眺める。

今いる場所は鉱山の中にある、建物の前、ではなく。

鉱山入り口にある、開けた場所。

昔に、建物が建っていた場所だ。


「しかし、何回見てもスゲーな。」

「はい、大きいですよね。私もびっくりしちゃいました。」


そこには、大木と言っていいほどの大きな木が生えている。


「ボクもまさか、こんなに大きなものまで作れるとは思わなかったよ。」


自分でも驚くような木。

この土地にどっしりと根を張ったそれは、地面をしっかり支えて、崩れることを防いでくれるはずだ。

なんだか不思議な気分になっていると、表情を真剣なものにした鉱夫がこちらを向いた。


「まだ小さな問題は幾つか残ってるが、助かった。改めて礼を言わせてくれ。」

「それは、もういいですって。……ボクも役に立ててよかったですよ。」


下げられた頭を上げさせて、立ち上がる。

このままだと、いつまでもお礼を繰り返されそうだ。


「じゃあ、ボクらはこの辺で。」

「あぁ、助けてもらったのに、力になれなくて悪かったな。」


去る事を伝えると、今度は謝られてしまう。

ボクらは操草師を探してここに来た。

しかし、この場所には一人としていなかった。

アイリスたちの話では、それほど珍しくもない役割だったはずだけど……。


「いや、大丈夫です。他をあたってみますよ。」

「皆さんも、おきお付けくださいね。」

「あぁ、ありがとな。困った事があったら、声をかけてくれ。力になるぜ。」


みんなに感謝されてその場を離れる。

誰かの役に立てた、という感覚が、確かにそこにあった。





「結局、特に手がかりはなしか……。」

「そうですね。こっちの方では少ないんでしょうか……。」


鉱山を離れて少し。

領主の館へ帰る道すがら、アイリスと首をひねる。


「でも、誰かの役に立てたんですから、良かったです。」


アイリスのその言葉に、それもそうか、と思い直す。

あまり実感はわかないけれど、それは確かな事実なんだ。

……そう言い聞かせていると、前を歩いていたネロが不意に振り返る。


「?信志はそんなに人の役に立ちたいの?」


そして言われた一言に少しドキリとした。


「うーん、立てるならそれがいいかなって感じかな。」


声は震えていなかっただろうか。

表情は変にこわばっていなかっただろうか。

唐突に投げられた質問になんとか答えるものの。

頭の中は別のことでいっぱいになった。


そう、と前を向いて歩き始めるネロを追いながら。

頭を振って気持ちを切り替えた。

……アイリスの視線もあったけど、そちらは笑って誤魔化すしかなかった。

こんばんは、Whoです。


蓮の葉に続いて二つ目ですね。

信志くんが野菜以外のものを生やすの。

これじゃあ、「花屋」じゃなくて「八百屋」だ……。

まぁ、彼が来るまでは食べられなかったので、見るだけしかできない「花屋」だったわけですが。


ちなみにサボテンについてですが、Whoさんもそこまで植物に詳しいわけではないので細かい描写は適当になってしまいます。

なので、ここはこうだよ!なんて意見があれば是非お教えください。


ではでは。

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