side 信志
「すげぇ……、本当に野菜だ……。」
跪いた少年から話を聞いたボクらは、とりあえず様子を見に行くことにした。
のだけど。
「?」
なかなか起き上がらない少年を訝しんでいると。
ぐきゅるるるる……。
「大変です!この子、目を回しちゃってます!」
顔を覗き込むようにして、様子を見たアイリスが悲鳴をあげる。
少年は頭を下げたまま、空腹で立てなくなってしまったのだ。
「……早く、食べ物。」
「うん、行くよ。『スプラウション』」
取り急ぎ、すぐに食べられる野菜を作り出す。
少年を起こして、口元に差し出す。
ぼんやりとした目を向けた後、少年は顔をハッとさせ、かぶりついた。
ひとまず作り出した野菜を食べきり、少年は一息つく。
「これなら、うちのとーちゃんとかーちゃんも助かるよ。」
「そりゃ、よかった。じゃあ、案内頼めるかい?」
「おう、こっちだ。」
立ち上がって歩き出す少年、その背を追いながら、少し情報を整理することにする。
まず、ボクが少し変わった操草師であることは周りに積極的に話す。
これはアイリスとも話したことだ。
他に操草師の人がいれば、変化のことも話してくれやすくなるだろうということだ。
そして、召喚された勇者であることは、隠さない。
積極的に話すことはしないが、隠すこともないだろうという判断だ。
「なぁ、にいちゃん。」
「ん?何?」
前を歩いていた少年がこちらを振り返りながら、尋ねてくる。
「さっきのって、できる人たくさんいるの?」
「んー。アイリス、話してもいい?」
一応、アイリスに確認を、
「はい、大丈夫だと思います。」
取れたので、返事の続きをする。
「それが、まだわからないんだ。実は、それを調べに来てたり。」
「ふーん……。でも、たくさんいたら食べ物たくさん作れるし、すごいな!」
目をキラキラさせながら、畑仕事が楽になる、と話す少年。
意図したわけではなかったけど、彼に野菜を食べてもらえてたのは正解だったかもしれない。
知れば驚くということは、知らなければ信じられない、ということでもある。
説明に少年の話も加わればすんなり信じてもらえるだろう。
そこまで考えたところで、少年が足を止める。
目の前にあるのは、周りと大差ない建物。
「ここ?」
「うん、ここにとーちゃんと……かー……ちゃん、が……。」
しゃべる少年の声が途切れ途切れになり、最後には完全になくなる。
そして。
「っ!」
建物の中に駆け込んでいく。
「とーちゃん!かーちゃん!」
ただならぬその声に、ボクらも中へ入ってみると。
少年の父親と母親が倒れていた。
そして。
ぐぎゅるるるるる……。
二人分の腹の音が聞こえた途端、思わず、ずっこけてしまいそうになった。
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
「な、この人たちすげーだろ?」
少年と同じように野菜を食べさせる。
さすがに少年のようにがっつくことはなかったが、お礼を言いながらもすごい速度で食べ進めていく。
そして食べきると。
「心から感謝いたします。」
深々と頭を下げられてしまった。
なんだか照れくさい。
こういったことには、いつまでたっても慣れない気がする。
「ただ、私どもは、この通り貧乏です。見合ったお礼など到底……。」
「いえ、大丈夫です、お礼なんて。」
お礼を断ろうとすると、
いやいやそれではこちらの気が……、と相手もなかなか引いてくれない。
「では、一つお尋ねします。」
そこで、これまでのことを含めた説明を簡単にした上で、操草師のことを尋ねてみた。
「それは……。私たちの周りでも聞いたことがありませんな。」
「そう、ですか。」
一応予想した通りの反応。
途中で見た畑も道具が置いてあったりした。
まだまだ人の手で耕しているのだ。
「……そろそろ、時間。」
会話が途切れたのを見て、ネロさんが立ち上がって、そう呟く。
あたりも暗くなってきた。
確かに、そろそろ戻るべきだろう。
「では、一度戻りましょうか。」
アイリスとボクも立ち上がって、外に出る。
お礼の土下座を敢行し続ける、大人はあまり見ないようにしよう……。
こんばんは、Whoです。
いい加減、あとがきの自己紹介いらないんじゃないかと思い始めてるWhoです。
それはさておき。
今回のアイリスの存在ですが、王女であることは隠しています。
なので、少年の家族もスルーしています。
しゃべると、大騒ぎになりますからね。
ではでは。




