side 信志
「では、こちらの部屋でしばしお待ちを。」
バタン、と扉を閉じて部屋まで連れてきてくれた人が出て行く。
ここは、メラーシュにある領主の屋敷。
町に着くと、ボク等はすぐに領主を訪ねた。
ナルメアさんの用事と、すぐ近くで交戦してるはずのメルトさんを助けるために。
「…………。」
「…………。」
することも、できることもない時間が続く。
アイリスもボクも無言だった。
さすがにちょっと気まずい……。
そんなもんもんとした、長いようで短いはずの時間が過ぎた頃。
ガチャ。
「すいません、お待たせしました。」
扉を開いてやってきたのは、領主、だろう多分。
なんというかこう、ぽってりとしたお腹と、汗をにじませた顔。
そんないかにもな感じの人だった。
「して、いかようなご用件でしょうか。アイリス王女様。」
ドスン、と音でもしそうな程、勢いよく向かいの椅子に腰掛け、口火を切る。
「はい。まずは早急にお願いしたいことから。この町から遠くないところに魔族が確認されました。
現在は、王国の騎士が対処していますが、戦力はかなり拮抗しているようです。」
「なんと!ではすぐに応援の隊を組織しましょう。……おい。」
話を聞いた領主は大袈裟に驚いた後、すぐに後ろに控えていた人と何やら言葉をかわす。
そのまま、その人は部屋を出て行った。
「失礼、……しかしなるほど。
王女様がろくに護衛も付けずにいらっしゃったと聞いた時は、何事かと思いましたが、道中魔族と会敵したわけでしたか。」
一瞬考え込んだ後、すぐに正解にたどり着く領主。
……この人、できる……!!
なんて、益体も無い上に偉そうなことを考えていると。
「さて。では、こちらに来た本当の理由を伺っても?」
「はい……。」
「……ふぅ、やっと終わったね。」
領主の屋敷から出て伸びを一つ。
あの後、使者の話をすると、領主は送っていると主張。
魔族が原因では、とアイリスとも合意した。
そこまでは、よかった。
「まさか、ボクのことにあそこまで興味を持つなんて……。」
「そう、ですね。私もびっくりしちゃいました。」
ユーステスとメラーシュの使者は、
魔族に襲われて帰らぬ人となっていたのだろう。
確かめようのないことだが、使者は出していたという領主の言葉から、アイリスがそう判断した。
その後で、そういえばと、隣にいたボクに興味を向けてきた。
「なるほど。勇者、ですか……。」
「と言っても、大した力はないんですけどね。」
苦笑しながら言葉を返すボクに、領主はいやいやと首を振る。
「どんな役割にも必ず役に立つ時があるんですよ。私はそう信じておりますよ。」
そう言って、にこやかに微笑むと、矢継ぎ早に質問をしてきた。
名前や、食べ物の好き嫌いに始まり、元いた世界やこの世界に来てからのことを次々と。
しばらくは『操草師』の調査のために滞在する必要があるので、断りづらく、長々と付き合ってしまった。
領主との会話を思い出して、少しげんなりした気持ちを切り替える。
「さて。ひとまず安心して町を見て回れるね。」
「そうですね、兵たちの無事も確認できたみたいですし。」
長い話を打ち切ったのは、突然部屋に入ってきた一人の伝令。
彼曰く、メルトさんを含む王国の騎士を発見。
危ないところだったが、無事に援護が間に合った、とのことだ。
さすがの魔族も数の力には抗えないらしく、増えた人数を見て、撤退して行ったらしい。
今はけが人を簡単に治療するためにその場で休息を取っているとのこと。
今夜にでも合流できるはずだ。
「おっと、つい話し込んでしまいましたな。ええと、しばし滞在されるのでしたな、すぐに部屋を用意させます。
少しお待ちいただけますかな?」
「あ、せっかくだし少しこの町を見て回ってもいいですか?来る前からどんな町か気になってたんですよ。」
「わかりました、案内を用意させましょう。……王女様はいかがなされます?」
「……では、私も少しだけ。」
そんなこんなで、館の前で待つ事しばし。
「お待たせしました。」
領主が連れてきたのは、女の人。
「…………。」
頭から三角の耳を生やした、いわゆる獣人の人だった。
「くれぐれも失礼のないように頼むぞ。」
「……はい。」
領主に向かって綺麗に90度の礼をした女の人は、ボクらの方を向いて、
「……では、行きましょう。」
一言喋ると、さっさと歩き出す。
……なんの動物の耳なんだろう……?
そんなあまり意味のない事を考えながら、置いて行かれないように、早足でその背中を追った。
こんばんは、Whoです。
最近なろうさんのサーバーが調子悪いみたいで何だか不安ですね。
書かせてもらっている身としては無事に事が落ち着くのを祈るばかりです。
ではでは。




