side メルト
くそ、なんだってこんなところに魔族が。
心の中で小さく舌打ちしながらも、相手の出方を伺う。
とにかく、姫さんと信志だけでも逃がさなければ……。
「行きましょう、信志さん。」
そんなあたしの考えを察したのか、姫さんが信志を連れて、馬車を飛び出す。
もちろん、あたしは何も言っていない。
が、この場合、どう考えても姫さんを逃すのは、騎士として当然のことだ。
幸い、魔族の出した霧で、相手も追跡はしにくいだろう。
「……さて。後は、あんたの相手をするだけだ。」
「んふふ。いいねぇ、その顔。……じゃあ僕も、本気出しちゃおっかな?」
ガキンっ。
言うと同時、あたしの剣と魔族の腕が交差した。
そのまま、二合三合と切り結ぶ。
ガッ、ガッ、ガッ、ガキンッ。
……強い。
だけど、打ち合えてはいる。
これなら……。
「勝てる。……なーんて思ってはいませんよね?」
「っ!!」
鍔迫り合いに持ち込んだ時、一瞬あたしの頭をよぎった考えを、魔族がせせら嗤う。
その証拠に、剣をこちら側に押し込まれる。
くそ、なんて力だい。
そのまま力比べを続けても、押し切られると判断し、相手の腕を滑らせるようにし剣を動かす。
ガリガリガリ。
支えを失った魔族の手は、そのまま地面へと向かっていく。
「ハァ!」
腕に引かれて、相手が前のめりになるのに合わせて剣を振るうが、一瞬早く感づいた魔族は、その足に力を込めて跳躍。
剣の間合いから外に逃げられる。
「チッ」
霧に遮られて、敵の姿を見逃してしまい、小さく舌打ちしてしまう。
本当ならすぐにでもこの霧を晴らして、視界を確保したいところだが、姫さんたちがこの霧に隠れている今、そんなことをすれば本末転倒だ。
……待て、霧……?
「敵を前にして考え事ですか?余裕ですね!」
声に、慌ててその場を離れると、さっきまで立っていた場所に、小さなトゲ。
なんとか回避が間に合ったようだ。
だけど、攻撃を躱せたことによる安堵で、さっきの思考が中断されてしまう。
残ったのは一瞬何か大事なことを考えた、という思いだけ。
肝心の内容は、手から落ちる水のようになくなってしまった。
「ハァ、ハァ……。」
「おや、もう息切れですか?やはり人間はもろいですね。」
「言ってくれるじゃないか。……でもあんたこそ、よく付き合ってくれるじゃないか。」
「ええ、まぁ。向こうに行った途端、背中から。というのも興醒めですから。」
だから、ここで仕留めるのだと、負けを少しも疑っていない口調で告げられる。
そこに文句の一つも言いたいところだが、こちらが押されている現状、返す言葉もない。
それでも。
「こちらは、すぐに応援が来るさ。それまで粘っていれば勝てる。」
「……つまらないですねぇ、自分の力で勝とう、とは思わないんですか?」
「あたしも人間だからね。あんたら魔族との力の差は歴然さ。だから、個の勝利よりも最終的な勝利を望むのさ。」
「……。」
あたしの言葉に言葉が返ってこない。
周囲を警戒しながらも、敵の居所を探る。
……いた。
あれは、目を閉じているのか?
ようやく見つけた、その魔族はただでさえ視界のきかない霧の中で目を閉じていた。
あれなら本当に何も見えない、はずだ。
だが、それでもあたしは、足を止め、警戒するだけにとどめる。
そうすることで、あたしは今まで勝って、生き残ってきたのだ。
「……ハァ、興醒めです。名残おしいですが今回はここまでにしましょう。」
「……なんだ、諦めるのか?」
「いえいえまさか。」
パチンッ。
魔族の少しふざけたような声に続いてそんな音がした。
姿が見えなくても聞こえる指鳴らしの音。
その音に反応したのか、地面が揺れ、何かが下から突き出てきたところで。
あたしの意識は途切れた。
こんばんは、Whoです。
さて、唐突な三人目の視点。
そして、戦闘の描写。
この話は初めて、信志達から視点が離れるので、どのタイミングで入れるか悩みましたが、
時系列的にはここが一番だと判断しました。
というか、ほぼ時間軸繋がってますしね……。
次は信志くんの話になるかと思います。
ではでは。
(戦闘描写も下手くそだー。もっとうまくならないと……。)




