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花屋は商魂たくましい  作者: Who
幻の都編
17/159

side メルト

くそ、なんだってこんなところに魔族が。

心の中で小さく舌打ちしながらも、相手の出方を伺う。

とにかく、姫さんと信志だけでも逃がさなければ……。


「行きましょう、信志さん。」


そんなあたしの考えを察したのか、姫さんが信志を連れて、馬車を飛び出す。

もちろん、あたしは何も言っていない。

が、この場合、どう考えても姫さんを逃すのは、騎士として当然のことだ。

幸い、魔族の出した霧で、相手も追跡はしにくいだろう。


「……さて。後は、あんたの相手をするだけだ。」

「んふふ。いいねぇ、その顔。……じゃあ僕も、本気出しちゃおっかな?」


ガキンっ。

言うと同時、あたしの剣と魔族の腕が交差した。

そのまま、二合三合と切り結ぶ。

ガッ、ガッ、ガッ、ガキンッ。


……強い。

だけど、打ち合えてはいる。

これなら……。


「勝てる。……なーんて思ってはいませんよね?」

「っ!!」


鍔迫り合いに持ち込んだ時、一瞬あたしの頭をよぎった考えを、魔族がせせら嗤う。

その証拠に、剣をこちら側に押し込まれる。

くそ、なんて力だい。


そのまま力比べを続けても、押し切られると判断し、相手の腕を滑らせるようにし剣を動かす。


ガリガリガリ。


支えを失った魔族の手は、そのまま地面へと向かっていく。

「ハァ!」

腕に引かれて、相手が前のめりになるのに合わせて剣を振るうが、一瞬早く感づいた魔族は、その足に力を込めて跳躍。

剣の間合いから外に逃げられる。

「チッ」

霧に遮られて、敵の姿を見逃してしまい、小さく舌打ちしてしまう。

本当ならすぐにでもこの霧を晴らして、視界を確保したいところだが、姫さんたちがこの霧に隠れている今、そんなことをすれば本末転倒だ。


……待て、霧……?


「敵を前にして考え事ですか?余裕ですね!」


声に、慌ててその場を離れると、さっきまで立っていた場所に、小さなトゲ。

なんとか回避が間に合ったようだ。

だけど、攻撃を躱せたことによる安堵で、さっきの思考が中断されてしまう。

残ったのは一瞬何か大事なことを考えた、という思いだけ。

肝心の内容は、手から落ちる水のようになくなってしまった。


「ハァ、ハァ……。」

「おや、もう息切れですか?やはり人間はもろいですね。」

「言ってくれるじゃないか。……でもあんたこそ、よく付き合ってくれるじゃないか。」

「ええ、まぁ。向こうに行った途端、背中から。というのも興醒めですから。」

だから、ここで仕留めるのだと、負けを少しも疑っていない口調で告げられる。

そこに文句の一つも言いたいところだが、こちらが押されている現状、返す言葉もない。

それでも。


「こちらは、すぐに応援が来るさ。それまで粘っていれば勝てる。」

「……つまらないですねぇ、自分の力で勝とう、とは思わないんですか?」

「あたしも人間だからね。あんたら魔族との力の差は歴然さ。だから、個の勝利よりも最終的な勝利を望むのさ。」

「……。」


あたしの言葉に言葉が返ってこない。

周囲を警戒しながらも、敵の居所を探る。

……いた。


あれは、目を閉じているのか?

ようやく見つけた、その魔族はただでさえ視界のきかない霧の中で目を閉じていた。

あれなら本当に何も見えない、はずだ。

だが、それでもあたしは、足を止め、警戒するだけにとどめる。

そうすることで、あたしは今まで勝って、生き残ってきたのだ。


「……ハァ、興醒めです。名残おしいですが今回はここまでにしましょう。」

「……なんだ、諦めるのか?」

「いえいえまさか。」


パチンッ。


魔族の少しふざけたような声に続いてそんな音がした。

姿が見えなくても聞こえる指鳴らしの音。

その音に反応したのか、地面が揺れ、何かが下から突き出てきたところで。

あたしの意識は途切れた。

こんばんは、Whoです。


さて、唐突な三人目の視点。

そして、戦闘の描写。

この話は初めて、信志達から視点が離れるので、どのタイミングで入れるか悩みましたが、

時系列的にはここが一番だと判断しました。

というか、ほぼ時間軸繋がってますしね……。


次は信志くんの話になるかと思います。

ではでは。


(戦闘描写も下手くそだー。もっとうまくならないと……。)

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