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花屋は商魂たくましい  作者: Who
三途の河編
106/159

side アイリス

「ふざけないでください。」


口から出たのは、自分でも聞いたことがないような声でした。

すぐそばにいるネロさんには『ヒーラス』をかけておいたので、今は眠っています。

力を抜き取られたというのが本当なら、私の力ではどうにもできないけれど、癒すことはしてあげられます。

そんなネロさんを後ろに、私は一歩前に出ました。

目の前の、魔族に向かって。


「おやおやぁ、どうしましたか王女さま?」

「ネロさんの力を返してください。」

「へぇ……。いいんですかぁ?ネロ様は私たちの仲間、つまりは、あなた方の敵ですよぉ?」

「違います。……ネロさんは、私たちの友達です。」

「友達?……あぁ、なるほど。」


そう言って、ボロネーゼはずっと笑っていた顔を歪めます。

そして今度は、どこか困ったような顔で言葉を投げかけて来ました。


「そういえばあなた方は、そういった目標を持っていらっしゃるのでしたよねぇ。……しかし困りました。」

「困る……?」

「おや、勇者さま。えぇ、そうですとも。あなた方は魔族との和平とやらを望んでらっしゃるのでしょう?魔族と人間と、獣人と。いろいろな種族とも、平等に仲良くして行くおつもりなのでしょう?」

「そのつもりだよ。」

「えぇ、だから困ってしまったのです。」


信志さんの言葉に、ボロネーゼはうんうんと頷いてから。


「どうして私は仲間はずれなんです?」


ぞわり、と冷たい目を向けて来ます。

そう感じるぐらい、その言葉は私と、信志さんの心に冷たい何かを感じさせるものでした。


「だってそうでしょう?みなさんで寄ってたかって、私を害しようとしているじゃありませんか。」

「それは……!」


手を広げて。

声高にそう宣言するボロネーゼに、私は言葉を詰まらせてしまいました。


「結局あなた方は、自分の都合のいい相手としか仲良くしようとしない。…………。過去にもあなた方と同じことを考えた方がいました。でも!結局!!その方々も!!!自分の敵と味方をはっきりと分けただけだったのです!!!」


声が、出ませんでした。

信志さんの他にもそういう人がいたから?

違います。

ボロネーゼの言葉に、その通りだと思ってしまったから?

それも、違います。

そもそも。

その可能性に、私自身が気がつかなかったからです。


「でも、でもでも……!」

「『でも』、何です?王女さま。」


さっきまで聞いた高い声ではなく、冷たくて、低い声。

その声に、引き摺り込まれていきます。

暗くて、冷たい何かが心に入って来て。

いつの間にか視界も暗くなっていて。


「でも。願わなくちゃ、叶わないだろう?」


あと少しで、真っ暗になる。

そんな時に、横で声がしました。

同時に、手のひらが何かに包まれます。


「ボクは願ったんだ。面倒だけど、戦争なんてもっと面倒なものを避けるために。」


その時のボロネーゼの、少しだけムッとした顔をなぜかよく覚えています。

それほどまでに、信志さんの言葉には力がありました。


「なるほどなるほど。」


パチン。


頷いた後に指を鳴らす音が響きます。

足元に現れたのは、またも魔法陣です。


「気が変わりました。そこまで言うのであれば、少しばかり見させていただきましょうか。」

「おや、見逃してくれるのかい?」

「私も少しばかり楽しみになりましてね。今度は邪魔しないでくださいよ?でないと……。」

「しないよ。というか、さっきのですっからかんだからね。できないよ。」


睨み合ったまま、ボロネーゼとアマテさんがなにか言葉を交わしていますが、だんだんと魔法陣が強くなってよく聞こえません。

そうこうしているうちに、さらに眩しくなって。

私の意識はまた、途切れてしまいました。

こんばんは、Whoです。


見逃す、と言う割に魔法陣は出てくる。

と言うことはつまり。


ではでは。

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