side アイリス
「ふざけないでください。」
口から出たのは、自分でも聞いたことがないような声でした。
すぐそばにいるネロさんには『ヒーラス』をかけておいたので、今は眠っています。
力を抜き取られたというのが本当なら、私の力ではどうにもできないけれど、癒すことはしてあげられます。
そんなネロさんを後ろに、私は一歩前に出ました。
目の前の、魔族に向かって。
「おやおやぁ、どうしましたか王女さま?」
「ネロさんの力を返してください。」
「へぇ……。いいんですかぁ?ネロ様は私たちの仲間、つまりは、あなた方の敵ですよぉ?」
「違います。……ネロさんは、私たちの友達です。」
「友達?……あぁ、なるほど。」
そう言って、ボロネーゼはずっと笑っていた顔を歪めます。
そして今度は、どこか困ったような顔で言葉を投げかけて来ました。
「そういえばあなた方は、そういった目標を持っていらっしゃるのでしたよねぇ。……しかし困りました。」
「困る……?」
「おや、勇者さま。えぇ、そうですとも。あなた方は魔族との和平とやらを望んでらっしゃるのでしょう?魔族と人間と、獣人と。いろいろな種族とも、平等に仲良くして行くおつもりなのでしょう?」
「そのつもりだよ。」
「えぇ、だから困ってしまったのです。」
信志さんの言葉に、ボロネーゼはうんうんと頷いてから。
「どうして私は仲間はずれなんです?」
ぞわり、と冷たい目を向けて来ます。
そう感じるぐらい、その言葉は私と、信志さんの心に冷たい何かを感じさせるものでした。
「だってそうでしょう?みなさんで寄ってたかって、私を害しようとしているじゃありませんか。」
「それは……!」
手を広げて。
声高にそう宣言するボロネーゼに、私は言葉を詰まらせてしまいました。
「結局あなた方は、自分の都合のいい相手としか仲良くしようとしない。…………。過去にもあなた方と同じことを考えた方がいました。でも!結局!!その方々も!!!自分の敵と味方をはっきりと分けただけだったのです!!!」
声が、出ませんでした。
信志さんの他にもそういう人がいたから?
違います。
ボロネーゼの言葉に、その通りだと思ってしまったから?
それも、違います。
そもそも。
その可能性に、私自身が気がつかなかったからです。
「でも、でもでも……!」
「『でも』、何です?王女さま。」
さっきまで聞いた高い声ではなく、冷たくて、低い声。
その声に、引き摺り込まれていきます。
暗くて、冷たい何かが心に入って来て。
いつの間にか視界も暗くなっていて。
「でも。願わなくちゃ、叶わないだろう?」
あと少しで、真っ暗になる。
そんな時に、横で声がしました。
同時に、手のひらが何かに包まれます。
「ボクは願ったんだ。面倒だけど、戦争なんてもっと面倒なものを避けるために。」
その時のボロネーゼの、少しだけムッとした顔をなぜかよく覚えています。
それほどまでに、信志さんの言葉には力がありました。
「なるほどなるほど。」
パチン。
頷いた後に指を鳴らす音が響きます。
足元に現れたのは、またも魔法陣です。
「気が変わりました。そこまで言うのであれば、少しばかり見させていただきましょうか。」
「おや、見逃してくれるのかい?」
「私も少しばかり楽しみになりましてね。今度は邪魔しないでくださいよ?でないと……。」
「しないよ。というか、さっきのですっからかんだからね。できないよ。」
睨み合ったまま、ボロネーゼとアマテさんがなにか言葉を交わしていますが、だんだんと魔法陣が強くなってよく聞こえません。
そうこうしているうちに、さらに眩しくなって。
私の意識はまた、途切れてしまいました。
こんばんは、Whoです。
見逃す、と言う割に魔法陣は出てくる。
と言うことはつまり。
ではでは。




