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ゴウ!
と、最後の一凪を起こして風がやむ。
さっきまでその中心に立っていたはずの彼らの姿はどこにもない。
「おやおやぁ?」
その場で一人、その風を起こした張本人だけが首をかしげていた。
傾げてはいるが、その顔は到底不思議がっているようには見えず、どこか面白がっているような節すらある。
「邪魔が入ってしまいましたねぇ。」
邪魔が入った。
つまりは、思惑が外れたと言うのに、その顔は変わらない。
「しかし、これは……。」
呟いて自らの手に視線を落とす。
握ったり開いたりを繰り返して、その調子を確かめる。
そして。
にやぁ……。
「素晴らしい!!素晴らしいですとも!!……ええ、ええ、これを喜ばずにいられましょうか!!」
甲高い声が、辺りに響き渡った。
同時に、ピエロは自覚する。
今この身体には、本来の力以上が満ち満ちている。
いくらボロネーゼが上位の魔族だとしても、勇者とそれを呼んだ者を、同時に相手取ることは難しい。
では、どうするか。
ないなら、増やせばいいのだ。
「あぁ、あの顔……。思い出しただけでも……あっ!」
脳裏にあの少女の苦しそうな顔を思い浮かべるだけで、ブルリと身体が奮える。
そう、既にあの場でボロネーゼはネロの『力』を奪っていたのだ。
しかし、それもそう単純な話ではない。
そもそも。
『力』とは概念的な部分が多く、個人間で微妙に質が異なる。
それを均して、自分が使いやすいように加工する。
加えて、自分以外から『力』を流し込んだ影響で悲鳴をあげる、自らの肉体を維持する。
この二つをこなせてやっと、この現象を起こすことができるようになる。
(クク。加えてあの作戦も、予想以上にうまくいきました。……これも勇者の存在のおかげですかねェ。)
さて、とボロネーゼは思考を切り替える。
うまく行ったからと言って、いつまでも悦に浸っているわけにはいかない。
弱っているとは言え、勇者一行を逃してしまったのは事実。
早いうちに始末をしておかなければ、あのお方の怒りに触れかねない。
すっ、と一度目を閉じて開く。
その一瞬で勇者一行の位置を察知したボロネーゼは。
ゆっくり、楽しむように歩き始めた。
その顔は相変わらず、笑っていたが。
いつの間にか、不機嫌な様相が混ざっていた。
◇◆◇◆◇◆
目を開けると、ついさっきまでいた草原だった。
さっきまでと違うことは一つ。
隣に勇者と、召喚主。
それから、二人の魔族が転がっていることだ。
「ーーーっ!!」
瞬間、お腹の中からこみ上げてくるが、地面に手をついて、なんとか押しとどめる。
せっかく助けに入ったのに、ここでぶちまけてしまえば、微妙な空気になるのは必然。
それだけは、どうしても避けたい。
幸い、あふれ出すこともなく治ってくれたので、どさりと腰を落ち着ける。
なんとか悲劇は回避されたのだ。
(それにしても、結構無理しちゃったな……。)
仕方なかったとは言え、自分を含めた5人を同時に転移させるなんて、よくもまぁ成功したものだ。
とはいえ、さっきのピエロのような顔の魔族も、すぐにこちらを追いかけてくるかもしれない。
できれば早めになんとかしたいところだけど……。
「……ぅあ?」
と、思った時。
そんな、少し間抜けな声が聞こえてきた。
振り返ると、もぞもぞと動いている。
どうやら、最初に目が覚めたのは勇者らしい。
「おっと。」
それを見て、慌てて姿勢を正す。
なんでも最初が肝心だ。
ここはひとつ、大人の余裕とやらを見せつけておかなければいけない。
ゴホン、と咳払いをして勇者がこちらを向くのを待つ。
そして。
「やあ。おっきたかい?」
噛んだ。
こんばんは、Whoです。
全滅させられそうになった続きです。
助けに来てくれたのは誰なのか?
ボロネーゼとの決着は?
みたいな?
ではでは。




