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花屋は商魂たくましい  作者: Who
三途の河編
103/159

side 信志

「ああああああああぁああぁあぁ!!」

「ネロさん!?」


アイリスが、必死で手を伸ばした直後。

突然、ネロが頭を抱えながら苦しみ始めてしまった。


「ネロさん!ネロさん!?」


それを見たアイリスが、ネロに駆け寄って行く。

ボクとロットもすぐ後に続いた。

一足先にネロの元にたどり着いたアイリスは、ネロの体にしがみついて、呼びかけながらその体を揺さぶっていた。


「お、落ち着いて、アイリス。」

「で、でも、信志さん!ネロさんが……!」

「うん、だからこそ、落ち着いて。……今はアイリスが頼りだ。ネロの状態を見てくれる?」

「っ!はい!!」


パニックで、半狂乱になっていたアイリスをなんとか落ち着かせる。

とにかく今は、状態が知りたい。

ネロの事情については、ネロが起きてから聞くしかない。


「行きます、『メディカラーー』」

「っ!危ないっす!」


ひゅっと、目の前を何かが横切る。

その何かは、アイリスめがけて突き進み、間に割って入ったロットの腕を切り裂いた。

ジワリ、とロットの服の下から血が滲んでくる。


「っ!っぐ!」

「ロット!大丈夫!?」

「ぁ……、だい、じょうぶっす……。」


見た感じ、全然大丈夫そうじゃない。

けれど、今は。


「おやぁ?外してしまいましたかねぇ?」


ぬらり、と。

それは、暗闇から滲み出てくるみたいにそこに現れた。

左右で色の違う、派手な服装。

細身で長身の体。

頭にはシルクハットのような帽子を身につけている。

あとは赤い鼻でもつければピエロに見えたかもしれない。

そのピエロがゆっくりと、こちらに歩いてくる。


「ぼろ、ねーぜ……!」


微かな声に振り返ると、少し回復したのかネロがこちらを向いていた。

そんなネロの口から、絞り出されるように聞こえたのはあのピエロの名前だろうか。


「はぁい、親愛なるあなた様の仲間、ボロネーゼでございまぁす。」

「…………。」


大げさにお辞儀をした後で、その目がぐるりとボクらを見渡す。

そういえば、ネロを見て『仲間』って言ったのだから、この人も魔族、なんだろうか。

その場にいたみんなが目の前のボロネーゼに注目している中で。

ぴたり、と目と目があった。

ボクと、ボロネーゼの。


「おやおや、これはこれは。勇者様ではないですかぁ。お初にお目にかかります、わたくし、ボロネーゼと申しまぁす。」

「…………椿、信志。」


口から出たのは、そんな固い声だった。

意識して出したわけじゃない。

それでも、ボロネーゼを前にするとなぜだろう。

言葉にできない何かが、心の中に入り込んで来ている。

そんな感覚があった。


「えぇ、えぇ。存じ上げておりますとも。……しかしいいのですかぁ?あなた様は我々魔族との友誼を、望んでおいでなのでしょう?とてもそんなことを考えている顔には見えませんよぉ?」


咄嗟に顔を手で撫でる。

『そんなことを考えている顔』というのがどんなものかわからない。

ボクは特に普段と変わらない顔のはずだ。

けれども、目の前のボロネーゼが言うその言葉に、心のどこか深いところを撫でられた気がして、どうにも落ち着かない。


「…………なに、しに、きたの……?」

「もちろん、あなた様を助けに参った次第ですとも!しかしこの状況は……。」


と、そんなボクの内心を知ってか知らずか、ボロネーゼはネロの言葉に返事をする。

アイリスに支えられたネロの問いかけに、ボロネーゼは大仰に頷いてから。


にやり、と。


音もなく、自然に。

あくまでもそれが当たり前のように、笑った。


「ええ、おもしろい状況ですねぇ。」


ぞわり。

風もないのに、その声を聞いた瞬間に寒気がした。


「な、何を、言ってるっすか?」

「本調子ではなさそうなネロ様に、勇者の御一行様。……では、私のやることは一つですかねぇ。」


パチン。

ボロネーゼは指を鳴らすと、今までと違う、冷めた声で。


「皆殺しです。」


そう、簡潔に告げた。

同時に、辺りが炎に包まれる。

それも紫の、見るからに普通ではなさそうな炎。

それがボクらと、それからネロとを取り囲んだ。


「みな、殺し……?」


理解できない者を見るような、いや、実際に理解できないんだろう。

アイリスはそんな目でボロネーゼを見る。

かく言うボクも、ともすれば訳が分からなくなりそうだ。


「……前から、そんな気はしてた。」


その場で唯一、ネロだけはそんな事を口にしていた。

『前から』……?


「……うん。私は少し特殊だから。」

「えぇ、えぇ、そうですねぇ。いっそのこと『変』とさえ言えましょう!……そんなあなた様が私、前々から気にくわなかったんですよぉ!」


だから、ここでまとめて殺すと、目の前のピエロは言う。

ハイなテンション、高い声。

けれども最後の一言だけは、また、ゾッとするような冷たい声。

笑いながらも、よく見ると目の奥だけは笑っていないようにも見える。


「……それは偶然。実は私もそう思っていたところ。」

「ヒヒ。いいですねぇ、その表情。……あぁ、実に不愉快・・・です。」


言って、手をあげて。


「あぁそうそう、あなた様の魔力、大変美味しくいただきました。……ではさようなら。」


あっさりと、その手は降ろされた。

何かをする間も無く、何かを叫ぶ暇もなく。

ボクらの視界は白く染まった。

こんばんは、Whoです。


そしてお久しぶりです。

戻ってきたので、またのんびりと更新していけたらなと思います。

ではでは。

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