二日目の朝
ザワザワとした騒がしさで私は目を覚ました。
何事かと部屋のドアを開けると、住民があわただしく色々なものを運んでいる。
《おはようございます隊長》
辺りを見回すとキクの姿を見つけた
「あぁ、おはようキク。よく眠れたか?」
《はい、昨日川を流されたときには、まさかお布団で寝られるとは思ってませんでしたから》
「確かにそうだな」
ふふふっと笑う
《昨日何かいいことでもありました?》
「な、な、な、ナゼダ!」
なぜ私はドギマギしているのだ
《女の勘です♪》
いつの間にそんな小悪魔スマイルを・・・
「と、ところでこの騒ぎはなんだ?」
私は話題逸らしと兼ねてからの疑問、2つの意味を込めキクに尋ねる
《会話を聞いていると、男性は狩りの準備、女性は洗濯などをするようです》
「だからと言ってこんな騒ぎになるのか?」
私は怪訝な表情をする
《そういえば、今日みんなで合流する場所を決めてませんでしたね》
そういえばそうだ
「では高鹿索敵士以外の隊員に通信を頼む『各々出立の準備をし、砦出入り口に集合』と」
《了解ですっ》
「私はカイ爺に挨拶をしてくる」
そう言い残し私は葵とカイ爺の姿を探す。
砦の中を歩いていると皆への伝令が頭に響き出す
その声を聞きながら目当ての人物を探しだそうと周囲を見渡す。
「よぉ」
私は期待を胸に振り返る
「どうしたんだキョロキョロして」
寝癖の残ったショウゴがいた。
「なんでもない!それと、『おはようございます隊長、ご気分はいかがでしょうか?』」
と演技臭い台詞を口走りながら、私は執事の様な仕草をショウゴに見せつけ
「だろうが!!」
と少し怒鳴り付ける
「機能から言おうと思っていたが、いくら皇学校の同期とはいえ、今は隊長と部下だ!そこを忘れるなよ」
へいへい、という言葉を無視し、私は人探しをつづけようとする、
と、
「そういやキクに聞いたけど・・・聞いたんですが、村長探してるんだろ・・・じゃないや、、、探してらっしゃいますでございましょう?」
改善しようとする努力は認めてやろう
「見かけたのか?ショウゴ」
「入り口の辺りにさっきいらっしゃいましたです」
目線を上に上げながら、無い頭で敬語を必死に思い出そうとするショウゴ
「あ~その有意義な情報で、今日の所は許してやる」
そう言い残し、私は入口へ向かう。
少し早足で到着した私は、村人が慌ただしく動く様子を笑顔で見つめるカイ爺を、目で捉えた。
「おはようございます、昨日は多分なおもてなし、誠に感謝しております」
深々と頭を下げる
「フォフォフォ気になされるな、葵が"友達"を連れてきたのです、こちらこそ感謝申し上げる」
ただただ恐縮してしまう
「いえそんな事は」
手をブンブンと振りまたも頭を下げる
「ところでこれは?」
砦を出たり入ったりする住民を眺めながら質問する
「これですかな?とりあえず外をご覧なされ」
そう促され砦の大きな城門から外を覗く
そこにはまごうことなき"村"が広がっていた
「言っただろ?朝になればわかるって」
「あ、葵・・・君おはよう!」
「昨日は呼び捨てだったくせに」
笑いながら私の横へ来る
女心は複雑なのだ
「このサイカ村は日があるうちは外にでき、日が沈むと消える」
カイ爺が補足してくれる
「そんな面倒な事を毎日?」
「あぁ、晴れてるときだけだがな」
葵が見守るような目線をしている。
「人間日ノ元で暮らすのが一番ですからな」
カイ爺が眩しそうに太陽を見つめる
「隊長」
声に振り返る
「みんな」
「準備できた」
「あぁハル、アキおはよう」
コクりと頷く二人
「もう発つのですかな?」
「さきに葵・・・君に第三分隊の埋葬地へ案内してもらって、それから発とうと思います」
私は葵の顔を見る、目で答える葵
「本当にありがとうございました!」
皆同時に頭を下げる
「フォフォフォまた機会があればお越しくだされ、のう?葵」
「あぁ」
とだけ答える
「それではみなさんご武運を」
私はカイ爺に見送られ、砦の裏手の森へと葵に続き入っていく。
ほんの数分歩いた先に、太陽の光が燦々と降り注ぐ、小さな広場が現れる。
「ここにみんな、眠っているのね」
「あぁ」
またも短く答える
「第三分隊に敬礼!!」
私の号令で皆が敬礼を捧げる
「こんな良い場所にありがとう」
私は感謝の気持ちを述べる
「死者には敵も味方もないからな」
そこに眠っているであろう者たちに、何か想いを馳せているようだ
「もう行くのか」
呟くように
「えぇ」
ただ短く
「そうか、また来いよ」
「いつか必ず」
皆に出発の号令を掛けようとしたその時、女性たちの悲鳴がサイカ村の方向から響く。
走り出す葵
「葵!!」
呼び止めようとしてしまう私
「じゃあな!!お前達はお前達のやるべき事をやれ!!サイカ村を守るのは俺のやるべき事だ!!」
そう言い残し森の中へと姿を消す
「くっ」
私は唇を噛み絞めながら砦の方向へ踏み出す
「冷たいんじゃねーの」
ショウゴが頭の後ろに手を組む
「でも・・・!」
《そうですよ》
キクの声が届く
「一宿一飯の恩を仇で返すほど」
「落ちぶれてはいない気よ」
アルド姉弟・・・
「少しだけ寄り道をするわ」
「そう来なくっちゃな」
手を叩き、やる気満々のショウゴに笑いかけ、私たちはサイカ村へと走り出す。




