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無能力者のバトルフィールド  作者: 伊山 創
第一部 サバル砦攻略戦
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3/10

休息

「ふ~なんとか着くことが出来たな。」

私たちは崖を滑り降り、無事、川のほとりで休息を取ることが出来ている。

無事、というのは誰もケガをすることなくという意味だ。

なので1人魂の抜けそうな状態で、頭を水流に突っ込んでいる"バカ"も

もちろん無事、というカテゴリーに入る。

各々が背中に背負っているカバンを下ろし、水分補給やレーションで腹ごしらえをしている。

「ショウゴ、よくやってくれたな!この作戦が終わったらなんでも好きなものをご馳走してやる!」

わたしは満面の笑みを浮かべながら、色々なものが抜けきっているショウゴの肩をバシバシ叩く。

「その前に俺は無事帰りつくことが出来るのか、不安でしょうがないんですが・・・」

水筒の水をごくごく飲みながら不満を漏らす

「なにを言う、この私が隊長なんだから何も心配することはない!」

「「「だから心配だ」」」

ショウゴと姉弟がハーモニーを奏でる。

「ショウゴはともかく!アルド姉弟にまでそう思われていたとは・・・」

私は今日一番のダメージを受けた。



「さて、バカ話はここまでにして」

高鹿索敵士が話し始める。

「これからどうしますか?彩深隊長」

「敵の攻撃は一旦収まったようですが、僕たちが休息を取っている間、敵もマナが回復するという事で」

空を見上げ、味気のないパンをかじりながら話し続ける。

「敵のマナ切れは望めそうにないですね」

太陽の光にやられたのか少し目をシパシパさせながら私を見る。

「あの攻撃の質と弾数からいって、敵は相当量のマナの持ち主か、もしくはマナプロバイダーの能力者がいると推察される。あの砦に関しては今までも何度か討伐部隊が編成されているがことごとく敗走させられている。」

私は一呼吸入れる

「だから今回私たち第三小隊に討伐任務が与えられたわけだが・・・しかし」

「しかし」

アルド姉弟の姉、ハルが私の話を遮りつつ続きを話し始める。

「第三分隊がやられてしまった」

「ああ、攻撃や戦闘に特化した第三分隊がやられた」

皆の表情が少し曇る。

「という事はその強襲者はかなりの手練れという事になる」

自画自賛ではないが、我々第二分隊が所属する、第三小隊は数々の戦場を歴戦し、かなりの戦果を挙げてきた小隊である。

我々急造の第二分隊と違い、ここ十数年最前線で活躍し、経験も戦闘力も桁違いのあの部隊が全滅した可能性がある、その事実がこの隊の空気を否が応にも暗くさせてしまう。

「てかなんで第三分隊が壊滅したって決めつけるんだ?通信士とのリンクが切れただけで、まだ全滅したとは限らないだろ?」

一通りの水分補給と腹ごしらえを済ませ、元気を取り戻したショウゴが質問してきた。

「今回の作戦の概要は?岸名防壁士?」

「はっ!我々第二分隊が正面より敵の砦を目指し、わざと敵の注意を向ける囮役、第三分隊がその間難所の多い南側から敵に奇襲をかけ陽動、その隙を第一分隊が突き、砦を陥落させるという作戦であります。」

軍人らしくはつらつと、威勢よく答えるショウゴ

なぜそれをいつもできないのかと、嘆きながら私は話を続ける。

「そうだ、という事は第三分隊は秘密裏に行動しなければならない為、敵に通信を傍受する能力者がいた時のことを考え、他分隊との通信は極力避けるはずだ。・・・さて岸名防壁士、"極力"と私は言ったが、なら通信をするのはどういった時だ?」

「作戦に支障をきたす何か、があったときや、作戦を変更しなければならないときですか?」

「概ねそうだな、今回第三分隊は戦闘になったということだが、それは作戦に支障をきたすか?高鹿索敵士」

周囲を警戒し、索敵の能力を使用しつつ、彼は答える

「いえ、戦闘を行い、敵に逃げられたというのであれば、作戦に支障をきたすでしょうが、戦闘が開始した、というだけであれば敵を殲滅すれば問題はありません。第三分隊は特に戦闘力が高かったですからね」

もっともらしい、そして素晴らしい回答だ

「さて、ここで岸名防壁士に質問を戻そう、高鹿索敵士が言った通りだと、私も思う、ならどうしてまだ戦闘を開始しただけであるにも関わらず、通信をしてきたか」

「ん~、敵に逃げられたとか?」

「あの第三分隊がそんなへまをするか?もしそうだとしても、そんな一大事なら真っ先にその事を知らせると思うが?」

確かに、と思うと同時に頭を抱えるショウゴ

「じゃあ一体なんなんですかっ」

あっさり諦めたようだ

「悟ったんだよ、経験からこの相手には勝てないと」



休憩を取り始めてから5分

≪隊長、少しトイレに行ってきます。≫

高鹿索敵士が頭の中へ話しかけてくる。

「了解、索敵だけはよろしくね!なにかあったらすぐに通信する事」

≪了解です≫

このような感じで各々、これからの準備や休息を取っている。

「なぁキク、お前の能力ってさ、リンクが切れた場所とか、わかんないのかよ」

突然ショウゴが能天気な声で、キクに質問する。

≪場所はわかりません、私の能力にはそういう力はないので・・・ごめんなさい。≫

「いやいやお前が悪い訳じゃねぇよ、なんか場所の手掛かりがあればなぁと思っただけで」

ショウゴがフォローしつつ、質問の理由を説明する。

≪情報と言えば確か、第三分隊からの通信で、川沿いの森を越えた先に情報にない村がある、と言ってましたね≫

確かに。

あの場では第三分隊が敵と遭遇という情報だけが私の脳内に飛び込んできたが、そんな事を言っていたなと思い返す。

「じゃあその隠れ村を探して、第三分隊がどうなったか調べてみるっていうのはどうよ?」

またもショウゴが、今度は内容まで能天気なことを言い始めた。

「確かに第三分隊がどうなったかについては推測でしかないからな、だが全滅したと考えた方がいいだろう、そして何より、最重要目的は任務の遂行だ。第三分隊がいなくとも我々だけで、作戦の遂行が可能な様行動をするだけだ。」

三角座りで川に石を投げ込んでいるキクを見る。

「第一分隊と通信できるか?」

小隊は基本三つの分隊で構成されており、第三小隊の分隊は第二、第三分隊は各6名の隊員で成り立っている。

第一分隊は、いわばエース分隊で、隊員数は少数精鋭の4名、その全てが強力な能力者ばかりで構成されている。

第一分隊が落とされるようなことがあれば、この作戦を成功に導ける可能性がほぼなくなるに等しいのだ。

≪第一分隊とはリンクが繋がってはいますが、通信は当然する事ができません≫

「しかしリンクが繋がっているという事は、今のところは無事という事だな」

コクリと花野通信士が頷く。

「じゃあこれから」

「どうする?」

アルド姉弟は独り言のように、しかし芯の通った声で続ける

「第三分隊は壊滅した」

「陽動がいなくなった」

「「囮のはずの私たちより先に」」

確かにそうだ

私たちが狙い撃ちにされている間に第三分隊は砦に近づく、しかし敵もそれを見越し、砦の周りに兵の配置をしているはずだ。

その兵たちの相手を第三分隊がして隙を作る、その隙を第一分隊が突き、陥落させる。

だが砦に近づく前に第三分隊は、断定はできないが、壊滅したと考えられる。

敵に裏をかかれた?

いやそんな初歩的な索敵ミスをするような隊ではない。

なら何が起きたのか・・・

「考えてたって仕方ないだろ」

ショウゴは私の心を見抜いているかのようだ。

「お前が言っていた通り、俺たちが出来ることをやるだけだ!それに、」

ショウゴがニヤッと笑う

「囮役が隠れてたらしょうがねぇだろ?」

頼もしい奴だ、まったく。

「ショウゴ、マナは戻ってきた?」

「おう!まだ100%とは言えねぇが、砦に着くまで保たせてやるよ!」

「よし。ハル!あなたの射程距離に入ったら遠慮なくバンバンぶっ放しなさい!!」

「言われなくても好き放題やらせてもらうわ、撃たれ続けるだけっていう状況にかなり腹が立っているから」

ショウゴの笑いがうつったのか、私もニヤリと笑う。

「さて、それじゃあ高鹿索敵士が帰ってきたら、まずは楽しい崖のぼりよ!」

私は立ち上がり、意地悪な笑みを浮かべ、皆の嫌そうな顔を確認しようと振り返った。

その瞬間




地面が爆発した。

ようやく次から戦闘が入ってきます。

私の書く小説はどうもお話しばかり多くてダメな気もしますがお付き合いください。

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