サバル砦への道のり
第三次世界大戦より千年
凝りもせず人類は戦っていた。
ここは昔、極東の島国であった。
その島国の北の大地は今"アルジミール戦区"と呼ばれている。
このアルジミール戦区には現在、南東に位置し、私たちの属するルート皇国、そして主だった戦争相手国である南西のジャニウェール教国、他に北西のアースル軍国、北東のミトラ民国という4つの"国"が存在している。
今現在、地球上には、大小様々な"国"が数百~数千存在している、と言われている。
そしてそのすべてが今戦争状態にある。
『第四次世界同時大戦』
私たちはそう呼んでいる
「過去の過ちの戒めはどうした・・・!歴史は繰り返させなかったんじゃないのかーーー!!」
そんな叫びも空しく、頭上の数メートル先で爆発した赤い閃光の爆音で掻き消される。
アルジミール戦区では現在、四巴えといった構図で戦争が繰り広げられている。
私たち"ルート皇国軍西方攻撃隊・第三小隊所属・第二分隊"は、はるか先の周りを山に囲まれ、手前にある断崖絶壁にポツンと1人佇むジャニウェール教国の玄関口である、自然に守られた要塞、サバル砦に向かって、荒野の戦場を走り抜けている。
「彩深隊長!!すいません!」
前を走っている金髪の背の高い青年が私に詫びを入れる。
「敵の火力がかなり強くて俺の障壁じゃちょっとキツイかも!」
「弱音を吐いてる暇があったら、もっと集中して、ピンポイントで障壁を張りなさい!」
私は先ほどの爆音でビリビリと痺れの走る耳をさすりながら叫ぶ。
またもや私たちの目標である砦から、数十個の赤い閃光が上空へ放たれ、こちらへ向かってくる。
それを捉えた彼――岸名ショウゴは空中へ意識を集中させる。
すると私たちの上空、十数メートルの所で、私たちへの直撃コースを進む、その光は突然炸裂し、爆発した。
「やれば出来るじゃない!」
昔々の科学者に少し話は戻るが、確かに"予言"は全て当たった。
しかし間違いが1つだけある。
この第四次世界同時大戦において使われている武器は
超能力だ
いや超能力というには、今までの人類の能力を超えすぎている、という事から
我々人類は進化し、今までとは全く異なった人類、"新人類"になったと考え、
その新人類が新しく獲得した"機能"だ。
という考えになっている。
そしてそういった側面からこの戦争にはもう一つの呼び名がある。
――『世界超能力大戦』
前を走るショウゴには、マナに干渉する"障壁"を離れた場所に生み出す能力を持っている。
「やれば出来るったってあれだけ離れた所に強い障壁作るのはかなり疲れるんだけどな・・・」
がくりと肩を落としながら走るショウゴを余所に、砦から赤い閃光がまたもや発射される。
ちなみにこの赤い閃光も敵の能力である。
恐らく炎系統の能力者であろうと推察される。
旧人類の使っていた兵器という物はほとんど現存しておらず、その製造法や技術というものは全て失われた。そのため、すべての戦闘において使用される武器は超能力である。
「くっそーーバカスカ撃ちやがって!早くマナ切れになりやがれ!」
マナというのは我々の生命力である。
旧人類の兵器が銃弾などを使っていたように、我々新人類は自身の生命力‐マナ‐を使い能力を発動する。
その為能力を使いすぎると、マナ切れを起こし、能力が弱くなったり、全く使えなくなるという状況に陥る。
「相手をマナ切れにする為にはとりあえずバカスカ撃たせ続けろ!!」
またもや弱音を吐くショウゴに、私は激を飛ばす。
「それ全部防ぐの俺なんですけどっ・・・!」
ブツブツと文句を呟きながら、こちらに迫る閃光を次々と止めていく。
≪隊長・・・大変です・・・!!≫
脳内にか細い少女の声が響く。
「これ以上になにが大変なんだ!!」
私は左斜め後方を走っている、見た感じ小動物といった様相の、綺麗な桃色の髪の毛の少女を見ながらまたもや叫ぶ。
少しビクッと体を震わせ、涙目になる桃色少女。
しまった・・・
「あ~すまない、あの"バカ"と喋ると口調が少し粗暴になってしまう・・・続けてくれ花野通信士」
またもや頭に声が響く
≪私たちの南方を進軍していた第三分隊より緊急通信です、第三分隊が敵と遭遇、現在戦闘を開始》
先ほどの私の暴言で少し怯えているのか、か細く、少し震えた声で報告をするキク
「他に情報は!」
≪川近くの森を越えた先で、情報に全くない村を発見し、近づこうとした際に敵の部隊と遭遇、との事、敵の人数は5名≫
「高鹿索敵士っこちらの周りに敵の存在はっ?!」
私の少し後方を走るメガネの、少しけだるそうな、黒髪の少年に報告を求める。
今度は少年の声が頭に響く
≪今のところ周囲500m以内にこの隊以外に人は存在していません。≫
≪多少の岩陰があり、能力が及ばない箇所もありますが、視界が開けているので奇襲をかけられる心配はないかと思います。≫
≪それよりも隊長。≫
少しやれやれといった口調で、高鹿が通信を続ける。
≪その口で喋る癖直したらどうですか?せっかく爆音の中でもクリアに、スムーズに会話できるよう花野さんがリンクしてくれているのに≫
「心の声が聞かれそうでどうにも私は慣れない!」
キクの能力は、"中継"
キクがリンクした人物の"声"を特定の人物、グループに届けられるという便利なものだ。
ただ私は何度も挑戦してみたが、届けたい相手に届かず全く違う人物に送信してしまったりしてしまう事が多々あり、私にはどうも使いこなせずにいる。
「・・・もしかして隊長もバカなんじゃ」
ショウゴが降り注ぐ閃光を防ぎながら呟く。
「聞こえてるぞ!バカっ!私の地獄耳を舐めるな!!」
「すいません!!」
謝ってはいる、が、声が笑っているのがまるわかりだ。
「花野通信士、その後情報は!?」
≪第三分隊の通信士とリンクが断絶しました≫
第三分隊は全滅したと考えたほうがいいだろう
・・・しかしあの第三分隊が全滅まで追い込まれるとは
「ハル、アキ!!敵は第三分隊を壊滅させた恐れがある!」
私の左右を並走している2人が反応する。
身長は175cm程のやや長身、2人とも青髪で、姉は髪が長く、弟は少し短いくらいの区別しかつけようのない同じ顔の双子の姉弟に話を続ける。
「あの第三分隊をやれるという事はかなりの強敵だ、気を抜くなよ!!」
≪誰に≫
≪言ってんだ≫
ブスッとした声で、2人で一つの会話を作り上げる。
いつ聞いても見事なものだ・・・
などと感心している暇はない。
早く目標の砦に到達し、陥落させねば。
先ほどから数十秒おきに十数発の閃光が砦から発射されているが、一向にその攻勢は緩む気配がない。
かなりのマナを持った能力者か、"供給者"がいるという事だな。
そうなるとショウゴのマナ切れの方が、先になる可能性が圧倒的に高い。
こちらに来る、もしくはいるかもしれない強襲者の心配よりも、あの閃光で全滅しない方法を考えるのが先か・・・
発射された閃光は確実に我々を捉えている。
敵がこちらの位置を正確に知り、狙い撃ちしているという可能性が高い。
何か遠隔索敵系の能力者がいる可能性があるな
「ショウゴ!お前のマナで後何発確実に防げる!?」
「やれといわれりゃ5発くらいですかね」
「高鹿索敵士!近くにどこか身を隠せそうな場所は!」
《少し待ってください、索敵範囲を広げます》
≪あ~、はっきりとはわからないですが、僕たちの進行方向1Km弱先に、少し深い谷の様なものがあり、川も流れてる場所がありますね≫
そこなら敵の攻撃を地理的要因で防ぎつつ、休息もとれそうだな・・・
私たちの移動速度なら2分もかかるまい
その間、敵の攻撃は多くて6回、一度の攻撃で着弾するのは2発とすると・・・
「よし!ショウゴ!あと十発は最低でも防ぎきれ!!」
前方より悲鳴のような叫び声が聞こえる
「無茶苦茶だ~~~~~!!!」
なんとか敵の攻撃を凌ぎつつ(全てショウゴが)私たちは崖へと到達した。
崖下5mほど下には高鹿索敵士の言った通り川が流れている。
「このくらいの崖ならば降りられるな。」
旧人類には自力で降りられなかったであろう高さの崖も、私たち新人類には降りることはそう難しいことではない。
私たちに宿っているマナは能力の発現以外にも副産物をもたらした。
それは肉体の強化である。
旧人類が最速で走れる速度を、我々新人類は皆走ることが出来る。
「よし、行くぞ!!」
そして私たちは迫りくる閃光から身を隠すため崖を滑り降りた。




