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異世界×あたし  作者: 葉山
【第二章】ようこそ、勇者様
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03.ツッコんだ奴が負け【Side彼女】


「うふふふふふふ」


 ミモザの自重しない満面の笑みが、ものすごく痛い。なんていうか、精神的に痛い。家族みんなで夕ご飯食べているときに、濡れ場シーンがテレビに映って、いたたまれない雰囲気になったときくらいにキツい。


「わたくしに気にせず、続きを行ってくださっても構いませんのよ? いえ、むしろ行ってください。えぇ、わたくしは空気のごとくお二人を見守っておりますので! それはもうひっそりこっそり妄想しておりますので!」

「ごめんなさい本当に勘弁してください」


 そんな照れなくてもよろしいのに、なんて言われたよ。これどう考えても思いっきり嫌な方向に解釈されているよどうしよう。

 ちゃんと適正距離に戻したスバルをじと目でにらむと、ちゃんと反省しているのかしゅんと顔と猫耳を伏せた。

 ……可愛いかもしれないとか思ったのは、気の迷い気の迷い。


「えぇと、それで……なんでしたっけ?」

「嫌ですわ、ウヌディビティバルドゥの落とし物ですわよご主人様」

「嫌ですわはこっちの台詞ですが!」


 だからご主人様って言わないでほしいって言ってるのに……!

 むしろあたしがミモザの方をご主人様とか言うよ。あ、でもそれはそれで喜ばれそうだから嫌だ。

 ひきつりながらのツッコミを華麗にスルーしたミモザは、可愛らしくにっこり笑った。


「こちらが、落とし物の一つですわ」

「え?」


 そして大切そうに掲げられたソレ。

 はい、ちょっと待った!


「なんでドライヤー⁉」


「違いますわ、こちらはウヌディビティバルドゥの落とし物です」

「ていうか、落とし物だったら交番に届けようよ! 何勝手に使ってるんですかっ⁉」


 拾った人は二割だか三割しかもらえないんですよっ! 全部もらうにはちょっと年月経たないといけないんですよっ!


 いやいやいやいや、違う違う。問題はそこじゃない。


 エル字型の風送器。グリップ部分にはしっかりと弱、中、強と風量調節の目盛があるし、熱風冷風の切り替えボタンもあるし、ちょっと潰れた形の噴射口もあるね。

 ……これをドライヤーと言わずになんと言うと?


「ドライヤーですよね、これどう見たってドライヤーですよね」

「ですから、こちらはウヌディビティバルドゥの落とし物です」

「ウヌディさま、毛なんか一本もないのに、なんでドライヤー持ってんの⁉ しかもなんで落としてんの⁉」


 あの細い小さい体のどこにドライヤーを使う部分があると⁉

 あたしのツッコミは間違ってないよねっ? ねっ?


「ちなみに、こちらとこちらも、ウヌディビティバルドゥの落とし物ですわ」

「だからなんでフライパンとアイロンを落とすのっ⁉」


 意味わからない! 意味わからない!

 しかも、これがっ! 魔族を追い払う道具とかなんなの?

 熱風で乾かして上からも下からもこんがりと焼きあげるのですかそうなのですかっ⁉


「マスター」

「なんでございましょうかスバルさん!」

「敬称はいらない。マスターを敬うのは、俺の方だ」

「そうですねっ! そうでしたねっ! だから跪くのはやめようかっ!」


 勘弁してください本当にっ!

 引きつり離れながら立つように促した。近くでニヤニヤと笑っているミモザのことは放置っ! 見たら負け、反応したらダメ!


「マスター」

「適正距離!」

「てきせ……、マスター遠い」

「適正距離っ!」


 ここはしっかりと教育するべきだと、あたしは学んだよさすがに。うんうん。せめて50センチ以内には近寄らないようにしようね!

 必要以上に近寄ってこようとするスバルの目の前で、適正距離分腕を伸ばして止める。

 そんな困ったように瞳を揺らしたって、ゆ、揺らぐものかっ!

 我慢比べのようにして、じぃっとスバルを睨んでいたら、やがてスバルが小さく息をついてミモザの方へと視線を向けた。

 よし、勝った! 教育の第一歩を踏み出した! 頑張ったあたし!


「それを実際に使って見せてもらえるか?」

「あら? これを、と言うのならば、今ここでは無理ですわ」

「え?」


 なんで? と思ったけど、当然か。コンセントないのなら使えないもんね。

 そう思ったあたしはきっと、ここがどこで、それがなんだったのか正しく理解していなかったんだと思う。


「こちらは、魔族に対抗する唯一の武器ですもの。こんな物騒なものを、こんなところで使用できるはずありませんわ」

「はああぁっ!?」


 とりあえず、ドライヤーが武器になるなんてこと、あたしは初めて知りました。どうしてそうなった!


だからタイトルを見てくれ、ツッコんだら負けなのよ。

そう誰か教えてあげてください彼女に(笑)


日付が空いてしまっていますが、またひそこそと更新していく予定です。

こう、右に左に蛇行しながら、寄り道しすぎて本題を忘れない程度に。


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