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異世界×あたし  作者: 葉山
【第二章】ようこそ、勇者様
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02.ツッコんだ奴が負け【Side彼】


 いやぁな予感がする。


「そんなに顔をしかめて……、まったく思い浮かばないのですか?」

「いや、そうじゃねぇよ。そうじゃねぇんだけど、すっげぇ嫌な予感がする」

「嫌な予感?」


 アズラスが不思議そうに首を傾げた。さらりと長い髪が肩を滑ってこぼれる。

 さらさらとこぼれる綺麗な艶がある髪は、名匠画家たちがこぞって、モデルにさせてくれ! と土下座して頼み込んできそうなくらい芸術的なラインを描いて、アズラスの本来の整った顔立ちを引き立てている。凛、と真っ直ぐに立っているだけなのに、そこだけ空気が引き締まってるように感じるのはなんでだろうな。


「まさか、契約者に身の危険が?」

「いや、そうじゃなくて。なんつーか、危ないって感じじゃなくて……なんつーの? 兄貴に美味いもんやるぞーって言われて、のこのこ付いて行ったら書類の山が待ち受けていたような感じ」

「つまり、罠にのこのこと掛かっているような気がするのですね」


 はぁ、と深くため息をついたアズラスは、まぁ危険察知能力だけは野生動物並みに鋭いですものね、避けないところが貴方らしいですけど、とかぬかしやがった。

 畜生、そんなはっきりと言うなよ! 罠に掛かる前に何とかなるかなって思っちまってんだよ毎回! 学習能力ないとか言うな。


「まぁ、そんな思惑はいつものことでしょうし、気にすることはありませんよ」

「だといいんだけどよ」

「そもそも、私がただ単に手のひらで踊らされるだけの存在に成り下がるなんてことが、あるとお思いですか?」

「ねぇな、アズラスに限ってそれはねぇ」


 断言できる。

 むしろアズラスなら、踊らされているように見せかけて、相手を躍らせているくらいの芸当を行っているんじゃねぇの? ……俺には絶対無理だけど。


「さて、ここからは別行動になります。私が差し上げたお守りを、しっかりと持っていてください」

「ん、了解。そっちは任せた」

「オルドビスこそ、しっかりとやるべきことを行ってくださいよ?」

「おう」

「あと、お守りはなくさないように」

「……俺は子どもか」

「子どもでしょう? それも、とっても手が掛かって仕方ないくらいの」


 アズラスひでぇ。

 そりゃ、迷惑かけまくってるって言う自覚はあるけどさ。竜人族のアズラスから見れば、まだまだガキだろうけどさ!


「ほら、いじけてないでやることをやってきてください」

「分かってる」


 本当に、こんなことやってる場合じゃなかった。きりりと気を引き締めると、アズラスと静かに別れた。それぞれの目的を達成するために。

 普段は使わない頭を必死に働かせて、考えるのを放棄するのって楽だったなって改めて思った。いや、さすがに今回はやらねぇよ?


 不思議に思った点はいくつかある。

 あの女……見張りが畏まっていたからたぶん、あそこにいる奴らの中で中心の方にいる奴だと思う。元地主の娘とか言ってたし。

 そいつが、わざわざ俺を捕えて「契約者に関わるな、近寄るな」と言ったことを一言も言わなかった。俺らは契約を結ぶことはできても、解除することはできない。

 少なくともあそこで、俺がディーと関係があるとバレた時点で、そう警告したり盟約を結ばせたりすることはできたはずだ。あの場所では、完全にあっちの方が立場は上だった。

 それなのに、あの女がしたことは、ただ尋ねただけ。


『貴方は《月薔薇の悪魔》でしょうか?』


 ……つまり、あいつらは《月薔薇の悪魔》とやらを探してるってこと。それがなんなのかはわかんねぇけど、さ。

 人間の解放よりもそっちを優先してるってことは、そいつに何かあるってことだよな?

 幸い、アズラスが《月薔薇の悪魔》とやらに聞き覚えがあるとか言ってたから、そっちは任せた。頼れる教育者がいると助かるぜ。

 ここまで考えただけでも、珍しく頭使ったと思う。ちなみに、頭は爆発しなかった。


 それから、もう一つ。

 人間と魔族の領域の境界にいる契約者たちが、どうやって解約解除をするつもりなのか、それが分からない。

 少なくとも、俺らの中で伝わっている解約補法は、魔王陛下かウヌディビティバルドゥに解いてもらうしかないってこと。

 ただの人間がウヌディビテバルドゥにそうそう会えるもんじゃねぇし、魔王殿下にだって無理だろ、どう考えても。あんな弱っちい人間がそこまでたどり着けるはずがない。

 うん、俺本気になって考えればまともに考えられるじゃん。疲れるからあんまやりたくないけど。


 あとは、俺のただの我が侭。


「……ディーの口から、解約したいって言わない限り、俺は信じない」


 未練がましいと言っても構わない。ディーはこの世界のことを知らない。知らないから、そこに行ったのだって偶然なのかもしれない。

 なんやかんや理由を付けたって、そこにあるのはやっぱり、ディーを手放したくない。傍にいてほしいって言う、ただ単純な、子どもじみた欲求だった。


 そんな俺らも知らないやり方で、勝手に解約されてたまるか。


アズラスがお母さんすぎて笑える件について(笑)

そして再び離脱です。いや、今回の節で彼視点を入れられたらな、と思っているので問題ない、はずです。


それでもって、ビスがどうしようこれ。

あっれこれ、お前、あっれー?

近々砂糖吐き出しそうで怖いです。えぇ、こいつもタチが悪いんだった……!

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