01.場の空気を読みすぎるのも考えもの【Side彼】
「なぁ、前から疑問に思ってたんだけどよ」
「なんですか、藪から棒に」
「副題って誰が考えてるんだ?」
「……私ですが、何か」
「えっ!?アズラスだったのか!?このよく分からねぇ標語みたいなの付けてたの!!」
「失礼な、的を射た言葉でしょう?」
(なんでそのまともな慣用句にしなかったんだろ、とか……言えねぇな)
「何か問題でも?」
「イエナンデモナイデス」
【第二節】場の空気を読みすぎるのも考えもの
「アズラス」
それだけで、アズラスは何が言いたいのか分かってくれたらしい。そりゃ、アズラスは俺よりも魔力の動きに敏感だからな。分からないはずねぇか。
アズラスはゆっくりと旋回をしながら下降体勢に入った。
ぐっと重心が前に動いて、鐙に掛けた足を踏ん張らせる。これ、意外と難しいんだぜ。
「十六……いや、十七か」
眼下に広がる魔族の気配。そのどれも小物だけど、魔法を発動させているからか、一つ一つの魔力が膨れ上がっている。
それが同じ方向へ移動しているってことは、つまりあれだろ?
「……ディーじゃなねぇといいよな」
誰かを、追いかけている。
そういうことなんだと思う。
それがディーじゃねぇといいよな、なんてすっげぇ思うんだけど……まぁ、八割方ディーな予感がしてならねぇ。あいつ、最高ランクだし。
「アズラス、お前待機な。合図送るまで好き勝手してていいぞ」
「ぎゃおぅ」
それが了解なのか忠告なのかは分からなかったけど。それでも言葉が伝わったことは分かった。
鐙から片足を引っこ抜いて、開けた場所が見えたその瞬間飛び降りる。
宙に取り残される感覚。
一拍置いて、ぐっと下へと落ちる。はためく風に負けないように、声を張り上げる。
さぁ、魔力を練り上げろ。体中を駆け巡る魔力を言葉に乗せて、命じるんだ。
《我が身に力を与えるもの。オルドビスの名において、我が体を支えよ!》
ごうと、風が渦を巻くように下から吹き上げてくる。それを上手く加減して、風の流れを操る。
《風魔法・飛翼上昇》
呪文を媒介にして、魔力を外へと開放する。それを風に絡ませて、自在に空を飛べるようにしたってわけだ。
いや、昔からこの魔法特に好きでさ、めっちゃ練習したんだわこれ。おかげでもう風とは友達になったぜ! なんて調子に乗ったら落ちかねねぇから、言葉にしては言わねぇけど。
「さて、と。気配は……あっち、だな」
もう一回気配を探る。右手の方向に、さっきと変わらない数の魔力の気配。
「ん?」
それから、さっきは気付かなかったけど、これは人間の気配か?
しかも一つ二つじゃねぇな。集団だ。ランク的には低いけど、それがあいつら追いかけているような感じで向かってる。
……なーんか、面倒ごとにもう巻き込まれているような気がするんだけど。大丈夫だよな、ディー。
「ま、とりあえず俺も追いかけてみるか」
考えるのはディー見つけてからでいっか。考えるの基本的に苦手だし!
気楽に考え直して、俺も魔族や人間たちの後を追いかけた。
本当に、いつになってもこの子は考え方を改めるつもりはないようです。
学習しろと言いたくなりますね、彼がこんななのでさくさく進みます。
おっかしいな、もっとこう。深くなる予定なのですけれども……
それでもって、相変わらずアズラスの出番が減ってしまう。
エアーじゃないです彼。大丈夫、大活躍するはず! きっと! たぶん!




