02.裏切らない展開予想図【Side彼女】
「ここは、どこっ?」
あたしは誰?
いや、あたしが誰だかくらいは分かります。ノリで言ってみただけだから気にしないで。
あたしは、そう。この物語の主人公で、至って普通にぐだぐたと日々を過ごしていた女子高生だった。
だった、つまり過去形。今のあたし、何処にいると思う?
答え“異世界”しかも森の中。
大丈夫、森の中だと言っても熊には出会ってもいないし、貝殻のピアスだって持っていないから落とすはずもないからね!
うん、その前に異世界とか頭大丈夫とか言われそうだけど、仕方ないよね。だって事実なわけだし。
「魔族と人間の領域の狭間となっている森の中だ、マスター」
詳しく座標位置まで言った方がいいだろうか? と聞いてくるスバルに、いや、そこまではいいです。と断っとく。そんなの言われたって、分かるはずないじゃない。
えー…ちなみに彼が、あたしが異世界にいるって有力証拠人。
「マスター?」
不思議そうにこちらを見下ろしてくる、紫色の髪と金色の瞳をしたお兄さん。色からしてもう普通じゃないよね!
しかも綺麗な顔している、俗に言ういけてるめんずですよ。ちょっとこその奥さん聞いてよ。そんな人にあたしマスターとか言われちゃってんのよ、信じられなくないですかちょっと奥さん。
「いや、うん。なんでついてきたのかなーと」
「俺はマスターに従属している。だから、常にマスターの側にいるのは当然のこと」
「そ、そんなことさらっと言われても困るのですが」
従属とか何!? 新しい言葉ですか!? ってくらいになじみのない言葉でしょこれ。
そんなことをさらっと言ってしまう彼には、耳がある。いや、誰にでも耳はついていて当たり前なんだけど、そうじゃなくて。
正しく言えば、“猫耳としっぽ”がついている。
うっわ、なんのコスプレですかとか言えちゃうんだけど、ははは。あれ、本物みたいです。作り物は感情と同じように動いたりしないからね!
「マスターが困ると言うなら、気をつけよう」
「何を気をつけるか分かってないよね? 確実に分かってないよね?」
「マスターが気に障る言葉は、言わないようにすることだが」
「うん、分かってるようで分かってないよねやっぱり!」
そんな気がしてたから別にいいんだけどね!
ふはははは! と意味もなく乾いた笑い声を出しながら、地面を踏みしめる。
手入れされている地面じゃないそれは、もちろんコンクリートなんかじゃないし、雑草だって茫々。ローファーじゃ正直歩きにくいことこの上ないんだけど、気にしない。
学校の制服の、まぁ二回折って丈上げてるあたしも悪いんだけど、そんな足に掠れる葉が気になって仕方ないけれど、それも無視。
なんでって、そりゃ。
あたしは現在進行形で、逃走中だからです。
あ、もちろんスーツにグラサン掛けた男の人に追いかけられてもないです。賞金とか指令とかないからね。安心安心。
「ところでマスター」
「うん?」
「オルドビスの屋敷を出て三日になる」
「うん、そうだね。そろそろベッドが恋しくなってきたね」
あたしたちはビスの屋敷から逃走中。
初日は頑張って歩いて近くの街で馬車に相乗りさせてもらって、それからまた歩いてーの繰り返しで……現代っ子のあたしにはものすごくきつかったですとも。
うふふ、おかげで足の裏に出来たお豆さんが潰れたわ。なんて自分を見失ってしまったくらいに疲れた。
そんな調子で二日三日と歩いて休んでの繰り返しで、はは、あたし野宿とか女としてなんか終わった気がするわ。いや、もう座れれば爆睡できることが発覚したからまぁいいけど。
「どこに向かうつもりだろうか?」
「とりあえず、人間の国へ」
「そうか」
ごめんね、行き当たりばったりの無茶につき合わせちゃって。
そう謝ると、スバルはやっぱりマスターの行くところへはどこへでもついていくとか、ね! そんなことを言ってくださるもんですから、あたしにどうしろって言うかどうも出来ないんじゃないのかなっ! て言うか分かってないじゃんやっぱり!
「よーし、もうちょい頑張りますかー!」
ぐっと伸びをして、ぱんぱんになった足を軽く叩いた。そうやって気合を入れなおして、また歩く。
「マスター」
「行けるところまでは自分の足で歩かせてください」
「……分かった」
スバルは、あたしに甘い。
疲れたと言ったら自分が抱えて運ぶとか言い出すものだから、なるべく自分で頑張れる限りは頑張ろうと思う。うん、移動するたびにお姫様抱っことかおんぶされるのはちょっと、ね。
長い長い道のり。黙々と歩くのもあれだし、何か話そうか。
……そうだな、どうしてあたしが逃走しているか。その理由とかどうだろう?
逃走中のディー。スバルもいるから大丈夫。
本当に一家に一匹スバル欲しいなぁ……、とんでもなくらいの主従(特に従)が好きなんです。だからか今回、スバルくんは結構出張ります。違った出張らせます。
前回は、後半からの登場だったので、目立たせるんだ!
従最高←




