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異世界×あたし  作者: 葉山
【第一章】こんにちは、異世界
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06.喜びはツッコミをも凌駕する【Side彼2】


 俺はアズラスに導きの合図を送った。例の、ディーに言わせると力抜ける音。

 しばらくすると、風を巻き上げながらアズラスがゆっくりと旋廻しながら降りてきた。


「おや? ……契約者は、どうしましたか?」


 獣魔やウヌディビティバルドゥの姿があることに目を見張ったものの、ディーの姿が無いことに疑問を覚えたんだろう。着地するや否や、人型になる。

 あーあ。こりゃグチグチ言われんだろうな……。


「還っちまった」

「……それは、元の世界に、ということですか?」


 嘘は言ってない。けど、それが余計にアズラスを怒らせてるんだろうな……。眼力だけで殺されそうなんだけど。

 すくみあがった俺は、いや、とかあの、とか意味のない言葉を繰り返した。言葉が出てこないって言うか、余計なこと言えねぇ雰囲気なんだけどなっ!


「い、色々あったんだけどな。ウヌディビティバルドゥが還せると分かった瞬間、喜んで還って行ったっていうか……」

「それを黙って見送ったのですか? ……そうだとしたら、貴方はいかに愚か者なのです?」

「いや、だってな、こうゆうのは本人の意思尊重ってやつで……」

「オルドビス。言い訳がましいですよ」


 案の定、アズラスの小言が始まった。

 俺の教育係だからか、正論しか言ってこないってのが、耳が痛い話なんだけどな。


「まったく、昔の貴方の出会いなんて私の知ったことではないのですが、約束を果たすんだと駄々をこねておりましたよね? それでも契約する事は成人することや家督を継ぐことに大きく関係してくるのですから、ちゃんとやると言って、そうしてやっと契約したのに手放してしまうとは………。貴方は一体どこまでヘタレ何ですか? 知ってますけど」


 知ってんなら言うなよ。つか、俺の非を全部ヘタレのせいにするなよな。

 まぁ、こんなこと言ったら小言が倍に増えるだけなんだけど。


「そもそも、ウヌディビティバルドゥは眠っているんですよ? 子どもでも騙せないような愚かな嘘をつくなど何を考えて」

「いや、起きたんだって」

「私は嘘をつくような子に教育した覚えはありませんよ?」

「あだだだっ! ほんひょらって!」


 思いっきり頬を引っ張られる。

 いや、本当にそこにいるんだけど! 嘘ついてねぇんだけどなんでこんなに引っ張られるんだって言うか痛ぇ!!


「オルドビスは嘘をついていない」

「失礼、貴方は?」

「スバル。獣魔だ」


 品定めするようにじろじろ見ていたアズラスに、怯むことなく真っ直ぐ視線を向けるスバル。怖いもんねぇんだな、お前。

 アズラスは、怒りを納め切れない瞳を更に細くして、スバルの喉元にゆれる従属の証に視線を止めた。それを遮る事もなく、堂々とスバルは言う。


「オルドビスの契約者と、重複契約をした。だから、マスターにウヌディビティバルドゥを目覚めさせてもらった。それは事実だ」

「事実? ……確かに、獣魔にはウヌディビティバルドゥの眠りを守る役目と目覚めさせる役目があるのは存じておりますが……。それでは、ウヌディビティバルドゥはどこに?」

「ここだ」


 そうして、うねうねと前に出てきたウヌディビティバルドゥ。

 アズラスの足元に辿りつくと、反り返った。たぶん、胸をそらしてるんじゃねぇか……?


『リ・ウヌディビティバルドゥ』

「わたしがウヌディビティバルドゥだ。と言っている」


 律儀に通訳するスバルの声に唖然としていたアズラスは、慌てて俺の頬を離してその場に膝をついた。そして最高敬意を示す礼をとって深々と頭を下げる。


「ご挨拶が遅れたことをお許しください。ウヌディビティバルドゥ、お目覚めになられて光栄です」

『アルディルソリタエヴィ!』

「そうかしこまらなくてもいい。と言っている」


 なんつーか、こうしてみると滑稽な図なんだけど、ウヌディビティバルドゥって本当にすごい存在なんだって思う。アズラスが最高敬意を払っているところなんて初めて見た。


『ラル・セイルレィド、アレギビフェルシン。ソ・イリルバ!』

「……な!?」

「なじゃなくて、何て言ってんだよ!? 通訳してから驚けよわかんねぇから!」


 思わずそう言っちまったけど、アズラスからたしなめの言葉ない。それくらい気になったんだろうな、うん。

 こわごわと、もう一度同じことを聞き直したようで、スバルとウヌディビティバルドゥは言葉を交わしている。それから、ウヌディビティバルドゥが大きく頷いたんだと思う。


「望むなら、そこの者へ獣魔を連れて行くといい。そなたが困らないように。と言っていた……」

「は!?」


 何だよその爆弾発言。俺が困らないようにスバルを連れてけって?


「俺が行けば、オルドビスの周りにいる者への説明がしやすいだろう、と。獣魔はウヌディビティバルドゥの従属者でもあるから、と」

「そりゃ、そうしてくれると俺はすっげぇ助かるんだけどさ。それでいいのか?」

「ウヌディビティバルドゥはそうするといいと、言っていた」


 なんつーか、本当に偉大な存在なんだなって思えた。いや、ぽんと快くそんなこと言ってくれるやつなんかいねぇよ普通。

 アズラスは一応は納得した様子でいたけど、大きくため息をつきやがった。


「人様に迷惑を掛けるとは……。まったく、情けない。私の教育指導が足りなかったのでしょうか……?」

「十分足りてると思うし、ウヌディビティバルドゥの了承も得てるし、これは人徳なんだろうと思おうぜ。な?」

「……はああぁ。獣魔、貴方は良いのですか?」


 アズラスの問い掛けに、少し間を置いて獣魔が答えた。


「しいて言うなら、獣魔と呼ぶな。マスターがスバルと名をくれた」


 って、そこかよ。気持ちとか分からなくもないけど、良い悪いの話はそこになるのはおかしいだろ。


「では、スバル。供にくることに異存は?」

「ない」


 速答な答えに、ちょっと驚いたように目を見開いていた。

 それから、俺たちは尚もくねくねと左右に身体を揺らしていたウヌディビティバルドゥに向かって、誰が言うわけでもないけど、自然に最高敬意を払う礼をとった。


「ウヌディビティバルドゥの寛大なる心に最大級の感謝を」


 ウヌディビティバルドゥは嬉しそうにくねくねと動いているだけだったけど、それでも、そう言ってしまうほどにありがたかった。

 そして二人は姿を変える。アズラスは龍に、スバルは猫に。

 巨大なアズラスの背に俺がまたがると、スバルはその前にひらりと飛び乗る。


「そんじゃ、俺らも帰ろうか」


 俺の呼び掛けに答えるように、アズラスは宙に浮かび、帰路に着いた。



さすがウヌディ様、懐が広い!!

そして久しぶりアズラス! いや、忘れていたわけじゃないんです。

登場させる隙がなかっただけで、でも一応スタメンですウヌディ様よりは主役たちに近い位置!


さて、次で第一章の最終節になりますー!

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