02.異世界なら全て良し【Side彼女】
ぱちくりと、ビスは間抜けな顔でぽかんと口を開いた。
よく分からないけど勝手に怒り出したビスが戦意喪失してくれてよかった。
さっきみたいに暴風に巻き込まれなくて本当に良かった! あたしの身の危険性的に!
「勘違い?」
「あぁ。獣魔の契約と魔族の契約は違う」
ゆらりと紫色のしっぽを揺らして、獣魔とやらのスバルが頷いた。
って言うか、未だにこの人がさっきまで猫だったとか信じられないんだけど。
いやまぁね。その、紫色の猫耳とかしっぽとかついてるし、目の前で変わられたから信じられないって言うか受け入れられないって言うのが本音なんだけど。
耳とかしっぽとか普通に動いてるし。
でも、それさえなければ、長身で筋肉がしっかりついた、かっこいいお兄さんとか言っても問題はないと思う、マヂで。
「何が違うんだ?」
「……魔族の契約は己の魔力を増幅させるための行為。だが、獣魔の契約はウヌディビティバルドゥを目覚めさせるための行為。それ以外は己の従属の証」
「なるほどな」
「いや、なるほどなじゃないよ!?」
全然意味が分からないよ!?
って言うか、そのウヌなんとかってなんですか!? 魔王的な何かですか!? 目覚めさせても大丈夫なのソレ!? しかも従属って聞いたことないんですけどもっ!?
ツッコミどころがたくさんありすぎて分からないけど、とりあえずビスみたいになるほどって一言で片付けちゃいけないんじゃないかなっ!
「じゃあ、重複契約も許容範囲だ。悪かったな、獣魔」
「……獣魔だが、俺はスバルだ」
「そここだわるところじゃなくね?」
「ってスルーしないで! お願いだから分かりやすく説明して!」
つっこむところはそこじゃないよ!?
自分本位でマイペースな二人の腕を引いて、あたしは必死で説明を求めた。
「分かりやすくって言ってもな……。俺説明苦手なんだよ」
「知ってるよ、お馬鹿さんなビスにそんな高度なこと求めてないよ!」
「ならい……あれ? いいのか?」
こてんと首を傾げたビスはやっぱりお馬鹿さんだった。
うん、予想してたし分かってたから別にいいんだけどもさ!
「えぇと、スバル……さん?」
「ただのスバルだ。マスターに名付けられた名に敬称は不要だ」
「いやだって、違和感ありすぎるじゃないですか! そもそもあたしマスターとかそんなたいそれたものじゃ」
「マスターはマスターだ。貴女以外に俺のマスターはいない」
「そんなこと言われても困るだけなんですがっ!」
何さらっとそんな恥ずかしい発言してるんですかっ!?
俺はお前のもの発言されてもかなり困るだけなんだけど、この人真顔で何をそんな困ることがあるとでも言ってきそうなんだけど。
ファンタジーな展開についていけない……いや、ついていかなくちゃなんだけどもっ! 一応ファンタジーみたいだし! 何てったって異世界らしいし!
「わ、わかった! じゃあ、そーゆーことにしといて」
「それが事実だ」
「そういうことなので! えぇと、その、ウヌなんとかかんとかって、何?」
「ウヌディビティバルドゥ?」
「そう、そのウヌディビなんとかかんとか」
ようやく聞けたことにちょっとだけ安心。話が平行線を辿るかと思った。
「ディーは知らないのか? ウヌディビティバルドゥ」
「って言うビスは知ってるんだ?」
「当たり前だろ。ウヌディビティバルドゥはこの世界の神なんだから」
「……はあああぁぁっ!?」
何この衝撃的発言。異世界ならばもはやなんでもありですか。
あたしの叫び声が、空しく空気に溶けてった。
王道を突っ走るために神様登場です。
いや、王道とか狙っていたわけではないのですが、なんか、気分的に?←
さぁ、みんなで神様の名前をレッツ復唱! 噛まずに言えるかなっ!?
『ウヌディビティバルドゥ ウヌディビティバルドゥ ウヌディビティバルドゥ』
……ちなみに自分は言えません。




