01.異世界なら全て良し【Side彼】
まだ、一回も姿現してないんだ。
え? この回では必ず出すって?
作者がそう言うなら、そうなんだろう。
作者曰く、
俺は“おいしいとこどり”らしい。
そんなつもりはないんだけど。
【第五節】異世界なら全て良し
「何、これ……?」
「たぶん塔なんじゃねぇの?」
「たぶんって言うか、どこからどう見ても、塔? なのかもしれないんじゃないの?」
「おい、断言し切れてねぇぞ」
ディーにしては珍しくあいまいな言い方になっている。
ってか、これは仕方ねぇよな?
「とりあえず、奇妙な塔っぽいもの(仮)と呼ぶことにして……。なんであんなものがあるんだろうね」
「なんでだろうな? っつか、何のためにこんな無人島にあんだろ?」
「……疑問しか出てこないなら、放っといても怒られないんじゃない?」
おいおい、面倒くせぇからって放置か。いや、まぁ放置したいのは俺も同じだけどさ。
呆然と奇妙な塔っぽいもの(仮)を見上げた。
どうすればいいのかはさっぱりわかんねぇけど、何なんだろうな、コレ。
見た目を簡単に説明すると、円錐型の白い巨大な塔が石の台座の上にある。
それだけならただの塔だ。
だけどな、その、奇妙な塔? って疑問系にしたくなるのは……その塔に、顔があること。目とか鼻とか口とか、ちゃんとあるんだよマヂで。
「……太陽の塔か。昔の万博か」
「今なんか言ったか?」
「どうしても言いたくなった独り言だから気にしないで」
よくわかんねぇけど、とりあえず気にはしないようにする。
「とりあえず、アレでしょ。異世界の不思議的な何かでしょ? 近付いたら急に話だす的なお約束の展開なんでしょ?」
「そういうもんなのか?」
「そういうものなの。たぶん」
たぶんかよ、おい。
奇妙な塔っぽいもの(仮)を警戒していた俺とは裏腹に、ディーは戦場に向かうように勇ましく歩き出した。
「って、いやいやいや待てって!」
「どうして?」
「いや、どうしてってお前な。さっき放置する的な言葉言ってなかったか?」
「言ったかもしれないけど、でも、何か起こってもビスがなんとかしてくれるんでしょ?」
「いやまあそうなんだけどっ!」
確かに契約したからディーを守るのは俺の役目なんだけど! でもちょっと待て!
「それじゃ、何も問題ないでしょ? ねぇスバル」
「にゃあ」
さも当然のように言われてるけど、そこで無理とか言えないのが男ってもんなんだけど。
猫にまで同意求めんなよおい。
少しは信頼されてるみたいで、ちょっと照れくせぇんだけどな。
「おい、つかちょっと待てよディー!」
「何?」
「あんまり俺から離れんなよな。守りにくいだろーが」
そう言って、ディーの右手を掴んだ。
シャラリとブレスレットが存在を主張するように小さく音を鳴らした。
俺は、ディーの契約主なんだから。守るのは当然なんだから、おとなしく守られてろっての。
「……頼りにしてるからね」
ぷいと、そっぽを向きながらディーはそう言った。
可愛くねぇやつ。
なんて、正面向かって言われたら俺だってどう反応すればいいのかわかんねぇけど。
「頼りにしとけ。俺はお前の契約者だしな」
そう口にした瞬間、ありえない光景が起きた。
ディーの前に回りこんだ猫が、一瞬のうちに人の姿に変わっ………はあぁ!?
「うわっ、何?」
「今の言葉は本当か、マスター」
……今……こいつ何て言った? マスターって……。
それ以前に、猫が、人間に化けた!?
「まっ、あれ? ちょ、ん? え? ……誰?」
ディーも混乱してる。
そりゃ、混乱するだろうな。俺もいまいちよく分からないし。
「誰って……。マスターが俺にスバルって言う名前を付けたんだろう?」
「……はぁっ!?」
「えっと、つまり、さっきの紫の猫がお前に変わって、だから、猫がお前であり、お前はスバルだ」
やべっ、言ってる意味が自分でも分からねぇ。
「落ち着け。支離滅裂になってるぞ」
「これが落ち着けるはずないでしょっ!」
よ、よし。深呼吸だ。
よくアズラスに言われただろ、冷静に状況を把握しろ。動揺すんな俺! 今がその時だ、落ち着け。
「よし、つまりだ。お前はさっきの紫の猫だったのか? 是か非かで答えてくれ」
「是」
「うっそだぁ!」
間発を入れないでディーが叫んだ。
信じられないみたいだな。まぁ、しょうがないか。さすがの俺でもビックリだ。人間に理解できるとは思えないしな。
俺も昔の記憶を頼りにしてしか言えないけど……。
「お前……。獣魔か?」
「そうだ」
「な、何? その、じゅうまって?」
一人ついてこれてないディーにどう説明するか……。
「っと……、あれだ。俺等魔属が持つ魔の力が、獣に宿った奴のこと。なんつーの? 使い魔とかその類じゃね?」
「……誰の使い魔?」
「いや、だから使い魔って言うのは例えで……」
「何をとぼけてるんだ? 俺のマスターは貴女だろう?」
「いやいやいや、何でそうなってんだよ!? 普通使い魔ってのは魔族のだろ!? 人間が契約できるのか!?」
俺の的確なツッコミに、煩わしそうに人型のスバルは顔をしかめた。
って言うか俺ツッコミにもなれるんだなっ! 新境地開けたぜ。
ディーはと言うと、獣魔の存在が重すぎたんだな。ぽかんと獣魔を見ていた。楽だから放っとこ。
そんな俺たちの前で、獣魔のスバルは首輪についた銀色の何かを掲げた。
警戒しつつもそれを見ると……おいおいおい!! マヂかよ!?
銀色に輝くアレは、契約の証……!
「名前を与えられることが獣魔との契約。貴女は俺にスバルと言う名前をくれた。だから貴女が俺のマスターだ。種族などは関係ない」
えー、あれか? 俺の知らない間に契約してました、なそんなパターンなのか?
畜生いつの間に……!
「だが、マスターと契約していた者が先にいるとは思わなかった」
「それは、こっちのセリフだっつーのっ! てめぇ、いつの間にディーと契約しやがった!」
「さっきだ。お前がいなくなって、すぐ」
「すぐ!? ……おい、人の契約者かすめとって、ただで済むと思うなよ」
衝撃の事実の連続に、どこかがぶつんと切れたような気がした。
契約はなにも一人しかできないと決まってるわけじゃねぇ。
だけど、仮にも真名を明かした相手だ。そいつ横からかっさらわれるのはどうしても許せねぇ!
こいつ、ぜってぇただじゃおかねぇ!! 跡形も無く消し去ってやる!
《我と契約せし風よき》
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
ディーが慌てたように間に入って来た。
「暴力はよくないっ! あ、いや暴力って言っていいのかわかんないけど、とりあえず武力行使はダメだって!」
「ディーはひっこんでろ!」
「や……やだっ! だって、だってこの人は何も悪くないよ!?」
どこからどう見たって泣きそうで、震える声でディーは俺の前に……獣魔の前に立ち塞がった。
悪いとか悪くないの問題じゃない。
これは俺個人がこいつをどう思ってるか、ただそれだけのこと!
そんでもって、俺は今ものすごく機嫌が悪くて、意味わかんねぇけど無性に腹が立ってるってことだっ!
理由はそれだけでいいだろっ!?
「マスター、危険だ」
「いや、でも」
獣魔がディーの腕を掴んでそう言う。だけど、ディーは動かない。
俺の魔力に引き寄せられるように、風が強く吹きつけ始める。
右手に魔力を集中させて、詠唱と発動をすぐできるように俺は構えた。
「契約が被ると普通魔族は怒る」
「よく分かってんじゃねぇか! なら」
「だが、彼らはたいてい勘違いをしているだけだ」
……は?
ぷしゅうと、そんな音がどこかで聞こえた気がした。
たぶん、これ第一章が終わるまで短くならないんじゃないかなって、そんな気がしてきました。
で、ようやっと最後の一人が出てきましたー!
多分これでタグは網羅したと思います。
スバルは一番好きです、なんてったって主従大好きですうまうま美味しくいただけます。
そんな子が現れて、さぁ、どうするよビス。




