ep.4 高嶺の花も楽じゃない
9月23日のランキングですけど初めてランクインしたので少し嬉しかったですね
一眼レフカメラと、一冊の取材ノートを持ち、重い足取りで体育館へと向かう。
新聞部に入部して早々に、自称新聞部アイドルこと御手洗友梨奈先輩からパシリを強いられた男、そう、俺だ。
「こんな遅くまで練習してる人いないだろ…テキトーに体育館ブラついてパソコン室戻ろ…」
人気のない階段を降りていき、薄暗い校舎に俺の足音が響く。体育館へと向かう廊下の窓からは夕陽が差し込んでいる。
全体練習はとっくに終わっている時間だ。それなのに、ドン。ドン。体育館からボールを叩きつける音だけが響いてくる。
新歓にこれだけ本気な奴もいるもんだな。相当バレーが好きなんだろう。
俺が体育館の扉をそーっと開けるとサーブをひたすらに打っている神楽坂澪がそこにいた。体育着に汗が滲み、水色の髪の先から汗がぽたりと落ち、夕陽を受けてきらりと光った。
なぜだろう、すごく神秘的に見えてしまう。
俺はしばらく神楽坂から目を離せなかった。あんなに一生懸命な神楽坂澪を俺は見た事がない。なんでもそつなくこなすいつもの姿からは想像も付かない、神楽坂の目の奥に焦りが滲む。
神楽坂はトスを上げると、夕陽を背に鋭い跳躍を見せた。パシィン、と激しい打球音が静かな体育館に響き渡る。
だが、その一球はいつもより強かった。放たれたボールは強烈なドライブがかかったまま、あらぬ方向──そう、俺が潜んでいる扉の隙間へと一直線に向かってきた。
「うおっ!?」
反射的に首をすくめる。凄まじい風切り音と共に、ボールは俺の頭上の扉にドゴォン!と激しい音を立てて激突した。
やばい…三途の川見えた。
「きゃっ!? ──って、え? 誰……?」
目を見開いた神楽坂が、ドタバタとこちらへと駆け寄ってくる。その顔には、いつもの冷静沈着な面影は一切なかった。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫!? 当たらなかった……って、明月くん!?」
「……おう。間一髪でな。球技大会の練習じゃなくて、暗殺の特訓でもしてるのかと思ったわ」
こんな華奢な腕からどこからその力が来てるのか、心底不思議でたまらない。
俺が顔を上げると、神楽坂は胸に手を当てて「よかったぁ……」と張り詰めていた肩の力が抜け、長く息を吐いた。だがすぐに、自分が汗だくのジャージ姿で、しかも男子の前で大慌てしていたことに気づいたらしい。
「な、何よそれ、大げさね……。それより、どうしてあなたがここにいるの? この時間の体育館は立ち入り禁止のはずでしょう」
頬をほんのり赤く染めながら、必死にいつものツンとした態度を取り戻そうとする神楽坂。
「いや、不法侵入じゃなくて仕事。これ」
俺は首から下げた一眼レフカメラと取材ノートを掲げて見せた。
「新聞部の先輩に押し付けられて……」
「あなたって帰宅部じゃなかったの?」
有栖にも同じようなこと言われた気がするけど俺そんなに部活入ってなさそうか?
「とりあえず仕事なんだ、球技大会の注目選手を取材してこいって」
「取材……? 私を?」
いやそんなに驚くことじゃないと思うぞ?
「まぁ、お前ならそつなくこなすだろうし、テキトーに二、三個くらい質問して終わらせようと思って…」
御手洗先輩は男子が欲しがるネタを求めてるみたいなこと言ってたし、男子生徒向けに質問にしてみよう。
「えーっと、それじゃあ最初の質問。……『もし気になる男子に球技大会の差し入れをするなら、何を作るか』。これについてお嬢様の見解をいただきたい」
俺がノートにペンを構えながら訊ねると、神楽坂は鳩が豆鉄砲を食ったような顔でフリーズした。
数秒の沈黙の後、彼女の白い肌がみるみるうちに赤く染まっていく。
「な、何よその……っ、不埒な質問は!?」
(やっぱり下心丸出しじゃない!)
「いや、だから男子生徒向けのゴシップ記事だって。ほら、みんな神楽坂さんがどんな差し入れするのか気になって夜も眠れないわけよ。予算削減のための生贄だと思って協力してくれ」
「だ、誰が生贄よ! そもそも、気になる男子なんて私には……」
神楽坂はぷいっと顔を背け、胸の前でぎゅっと腕を組んだ。
しかし、いつもなら完璧な彼女の目が泳ぎ、爪先をそわそわ動かしている。
「……どうしても答えなきゃダメなの?」
「できれば。新聞部の存続がかかってるんだ」
「う……」
完璧主義な彼女だが、こういう「頼み事」や「大義名分」には妙に甘い。
少しだけ眉をひそめて考え込んだ後、観念したように小さな声で呟いた。
「……ハチミツレモン、とか」
意外と可愛いの来たな。
「へー、レモン?」
「な、何よ。王道でしょう!? ネットの『喜ばれる差し入れランキング』でも上位に入っていたわ!」
まさかのネット検索。完璧主義の彼女が、わざわざそんな可愛いワードで検索していた姿を想像して、俺は思わず口元が緩みそうになるのを必死でこらえた。
「いや、神楽坂さんクラスになると、どっかの高級老舗和菓子屋の羊羹とか持ってくるイメージだったからさ。ハチミツレモンとか、なんか庶民的で安心したわ」
「わ、わざわざ調べたのよ! もし……その、万が一にも、誰かに渡さなければいけない状況になった時に、完璧な対応ができるように……っ」
必死に言い訳をする神楽坂だったが、その視線はなぜかチラチラとこちらを向いている。
誰かに渡さなければいけない・・・え?誰だよ。顔だったら石井がダントツだから多分石井かな。でもあいつ性格終わってるし。まぁ誰でもいっか。
「じゃあ、お弁当の自信作は? これも男子が気になるところなんだけど」
「お弁当……。私は、その、普段は料理長が作ったものを持ってきているから……」
「あー、やっぱりそうだよな。じゃあこの質問はパスで――」
「――でも! 玉子焼きくらいなら、練習したから作れるわ!」
遮るように言った神楽坂の声は、少しだけ上ずっていた。
「練習したって、お弁当のために?」
俺が訊ねると、彼女は今度こそ耳まで真っ赤にして、体育館の出口へと早足で歩き出した。
まだ上手に卵焼き作れないのかな。そっとしておこう。
「もう質問は終わりよ! ほら、立ち入り禁止なんだから明月くんも早く出なさい!」
足早に去っていく彼女の後ろ姿を見送りながら、俺はノートに『神楽坂:ハチミツレモン、玉子焼き(練習中らしい)』と書き留める。
……これ、そのまま記事に載せたら学校中の男子が暴動を起こすんじゃないだろうか。
去っていった彼女の残響を惜しむように、静まり返った体育館でため息を一つ。俺は重い一眼レフを抱え直し、自称アイドル先輩が待つパソコン室へと足を向けた。
「ただいま戻りました……」
「おかえり明月くん! どうだった!? 高嶺の花のヒロイン攻略は!」
この人は神楽坂のことを何だと思ってるんだ。
扉を開けるやいなや、御手洗先輩がデスクを乗り出して身を乗り出してきた。その後ろからは、スマホをいじっていた有栖が「あ、洸夜おかえりー」と気のない声を出しつつ、意味ありげに目を細めた。
「攻略ってなんですか。普通に仕事してきましたよ。ほら、ノート」
差し出した取材メモを、先輩と有栖の二人が左右から覗き込む。
次の瞬間、有栖の目がピクリと動いた。
「へぇ……神楽坂さんってハチミツレモンなんて王道なこと言うんだ。……って、あれ?」
有栖がノートの一箇所を指さし、ニヤニヤと意地の悪い笑みを俺に向けてくる。
「洸夜くん。この『玉子焼き(練習中らしい)』ってメモ、なんでここだけ他の文字より三倍くらい気合入れてきれいに書いてあるの? もしかして、神楽坂さんの照れた顔にグラッと来ちゃった?」
「ちがう。重要なゴシップ要素だから強調しただけだ」
「ふーん? ちなみに私、玉子焼きは甘め派だけど、洸夜はどっちが好きなの?」
「お前の好みは聞いてない」
「私も玉子焼き作れるよ? 今度洸夜だけに作ってあげようか?」
俺の耳元で囁き、顔をのぞき込んで反応を待つように笑う有栖。一瞬心臓が跳ねたが男子である以上至って普通の反応だ。
「余計なお世話だ」
俺は有栖の顔を押し除けて平常心を取り戻す。
「素晴らしいわ明月くん!」
俺たちの不毛な会話をかき消すように、御手洗先輩がノートを高く掲げた。
「完璧超人の令嬢が、男子のために健気に玉子焼きを練習している……! これよ! これこそ全男子生徒のハートを射抜くキラーコンテンツよ! 速攻で『球技大会・直前号外』として印刷するわよ!」
先輩のテンションは最高潮に達し、パソコンのキーボードを猛烈な勢いで叩き始めた。有栖はそれを見ながら、「洸夜、これ明日配られたら神楽坂さんに絶対睨まれるね」と他人事のようにクスクス笑っている。
あれ、この部活大丈夫か?
──翌朝、校内に貼り出された新聞は案の定、男子生徒たちの間で大絶賛の嵐となった。石井が百枚ほど買い占めたらしい。
そして神楽坂さんからの無言の圧力をクラスの隣の席でひたすら耐え忍ぶうちに、あっという間に新入生歓迎球技大会の当日がやってきた。
——
校庭や体育館の周辺で、俺が書いた記事を読んでる男子生徒達がなにやら大騒ぎしている。その中で一際目立つのが石井結衣。
もうなにかの宗教だろあれ。
遠目でその集団を見ていると石井と目が合った。そして稲妻が走るように俺の元へ向かってくる。
「おい明月洸夜、お前に渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」
石井結衣はポケットから一万円札を三枚取り出して俺へと突きつける。顔を上げて石井の顔を見ると満面の笑み。
え、怖いんだけど。
「これ、お前が神楽坂さんの記事書いたんだろ?そのお礼だ。神楽坂さんが俺のために差し入れを作ってくれてるんだろ?」
あれ、この人頭大丈夫かな。
「なんでそうなるんだ」
一応俺は差し出された三万を受け取った。これでNextflixの月額料金は当分賄える。やったぜ。
「そう嫉妬するな明月洸夜、お前にも少し分けてやるからよ」
髪をかきあげて口角を上げ、自信満々の表情。
もの凄い勘違い野郎だな、その容姿のせいか。てか石井と神楽坂ってなにか接点あったっけ。
「まぁいいや、とりあえず俺仕事あるからそれじゃあな」
「仕事?なんの」
「え、新聞部の」
一瞬だけ目を見開き、それから苦笑が浮かぶ。
「あはは、……それは予想してなかった」
なにこいつ。
俺はその場を後にして仕事へと向かう。もちろん選手としても出るが新歓の記事を作らないといけないのも事実。やるべきことはしっかりとやらないといけないのだ。
俺がカメラで体育館周辺の雰囲気や選手の写真を撮って回っていた時、ばったり神楽坂と合った、というより神楽坂は俺を見つけて早足で向かってくる。
「明月くん、ちょっと話があるんだけど」
神楽坂は抑揚のない声で言葉を紡ぐ。
「話?」
「ついてきて」
神楽坂は体育館裏へと歩き出した。妙に歩くのが早いためついていくのに苦労したがなんとか歩幅を合わせる事ができた。曲がり角を抜けると人影は途切れ、風が落ち葉を転がす音だけが、小さく耳に残る。
「……明月くん。あれほど『部活の存続がかかっているなら』と配慮してあげたのに、あの記事は何かしら?」
まぁそうなりますよね。
神楽坂はピキピキと、怒りつつも顔を真っ赤にして詰め寄られる。むっと眉を寄せ、不満そうに唇を尖らせた。
「いや、事実をそのまま書いただけだし……」
「もう知らないわ。今日の試合、変な写真を撮ったら承知しないから」
ぷいっと横を向いて自分の試合に向かう。
後でちゃんと謝っておこう。
そう心に誓いながら、俺は彼女の背中を見送った。怒っている後ろ姿すらどこか凛としていて隙がない。
だが、神楽坂の忠告を律儀に守って撮影をサボるわけにはいかなかった。なんと言っても俺は、廃部寸前の新聞部に拉致されたばかりのルーキーカメラマンなのだ。
──数十分後、俺は女子バレーボールのコートサイドにいた。腕には新聞部の証である黄色いビブスを巻き、首からは御手洗先輩に渡された一眼レフカメラを下げている。
「うおおおお! 神楽坂さんマジ女神!!」
「おい見ろよ、あのジャンプサーブ! 美しすぎだろ!」
ギャラリーからの凄まじい歓声が体育館に響き渡る。
ファインダーを覗くと、そこには夕方の居残り練習の時とはまた違う、クラスの命運を背負って戦う神楽坂澪の姿が映し出されていた。
凄いな神楽坂、俺だったらあんなに必死になれない。
水色の髪をなびかせ、鋭い視線でボールを追う。その一挙手一投足が、外野の男子たちが騒ぐのも納得してしまうほどに完璧で、圧倒的だった。
パシィン!!
彼女の手のひらがボールを捉えるたび、相手コートに強烈な打球が突き刺さる。俺は無我夢中でシャッターを切り続けた。レンズ越しに見る彼女は、まるで一枚の絵画のように完成されている。
だが、試合が終盤に差し掛かった頃、流れが変わった。
相手クラスの執拗なマークと、連続するラリーによる疲労のせいか、神楽坂のクラスにミスが目立ち始める。一気に点差を詰められ、コート内に焦りの空気が漂った。
「……っ」
次のサーブを待つ間、神楽坂が小さく肩を揺らし、胸元を押さえた。
──プレッシャーだ。
完璧でいようとする彼女の背中に、重い圧力がのしかかっているのが俺には見えた。
張り詰めた空気の中、神楽坂がふと、息を整えるように視線を落とした。その視線の先には、偶然にもコートのすぐ脇でカメラを構える俺がいた。
レンズ越しに、一瞬だけ目が合う。彼女の瞳が、驚いたように微かに揺れた。
俺はゆっくりとカメラを顔から外し、隣の席でいつも雑談する時のみたいに、軽く頷いて見せた。
口パクで、『いつも通りやれば大丈夫だろ』とだけ伝える。
「……」
それを見た神楽坂は、一瞬だけ目を丸くした。
だが次の瞬間、彼女の唇からフッと緊張の糸が解けるような、小さな吐息が漏れる。肩の力が綺麗に抜けていくのが分かった。
「──頼んだわよ!」
上がったトスに向けて、神楽坂が今日一番の高さで跳躍する。
迷いの消えたその表情は、夕方の体育館で見たあの必死で、そして最高に綺麗な彼女そのものだった。
俺は夢中でシャッターを切った。
カシャ、という小気味いい音が、体育館の歓声の中に溶けていった。
ドガァン! と、鋭いスパイクが相手コートの真ん中に突き刺さる。
歓声が一瞬遅れて体育館全体に爆発した。コート内に響く「よしっ!」という少女の叫び声。
決めた当人の神楽坂は、着地すると同時にクラスメイトたちに揉みくちゃにされていた。ハイタッチを交わし、彼女の顔から花が咲くような笑みが、自然とこぼれた。いつもの澄ましたお嬢様じゃない、等身大の女子高生の顔だ。
──結果、神楽坂の活躍もあって彼女のクラスは見事勝利を収めた。
解散となったコート周辺。クラスの輪から少し離れ、体育館の壁際でスポーツドリンクを口にしている神楽坂の姿を見つける。
もうそれすらも美しいと思えてきた。やばいぞ俺。
神楽坂は汗に濡れた髪を耳にかけ、ふぅ、と小さく息を吐いていた。
なにかご褒美でもあげたくなってしまうな。
俺は購買の自動販売機で買っておいた冷えた缶を一つ手に、彼女の方へと歩み寄る。
「ほら、お疲れ様」
神楽坂は差し出された缶を見てわずかに目を見開く。彼女の目が、缶のパッケージ──『ハチミツレモン』の文字を捉えた瞬間、わかりやすくピクリと眉が跳ねる。
「……何の真似かしら、明月くん。私をからかっているの?」
やっぱり素直じゃないな。
「まさか。さっきのナイスプレイへのご褒美だよ。冷えてるうちに飲めよ」
俺が強引に缶を手に押し付けると、彼女は「……まったく」と苦笑いした。
けれど、受け取った缶を突き返すことはせず、愛おしそうに両手で包み込んでいる。
「……さっきは」
「ん?」
「さっきは、その……ありがとう」
神楽坂は視線を明後日の方向へ向けたまま、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で呟いた。
ほのかな赤みが、彼女の白い頬にまた差し始めている。
「別に。俺はただ、カメラマンとしてベストショットを撮りたかっただけだし」
「……相変わらず、可愛気のない言い草ね」
男に可愛気はいらないと思うが、。
ふっと緊張の解けた笑みを漏らし、神楽坂はパチンと缶のプルタブを開けた。
──と、そこへ。
「あー!洸夜いたー!こんなところで何してんの?ナンパ中?」
どうして俺の幼馴染はこんなに女として見れないのか。
ニヤニヤと腹の立つ笑みを浮かべた有栖が、ひょっこりと壁の陰から顔を出した。
神楽坂はそっと二人から視線を逸らす。
「あ、神楽坂さんそれハチミツレモンじゃん! 洸夜、取材の時に神楽坂さんが言ってたやつ速攻で買いに走ったの? 健気〜!」
「うるせぇ」
確かに、なんで買ったんだろ。ただの顔見知りなのに。
神楽坂は表情がこわばり早口になって否定する。
「えっ、あ、これには深い事情が……!」
有栖のからかいに、神楽坂がわかりやすくテンパり始める。手に持ったハチミツレモンの缶をどう隠すべきか、右往左往している姿は完璧なお嬢様とは程遠い。
「有栖、余計なこと言うな。先輩に『撮影終わったら部室戻れ』って言われて探してただろ」
「あ、バレた? 先輩が『明月くんが撮った神楽坂さんのベストショット、速攻で号外第二弾にするわよー!』ってノリノリで待ってるよ」
「……あのアホ先輩」
溜め息を吐きつつ、俺は隣の神楽坂をチラリと見た。
彼女は少しだけ赤い顔のまま、でもどこかすっきりとした表情でハチミツレモンの缶をぎゅっと握りしめている。
「じゃあな、神楽坂。ナイスプレイだった」
「……ええ。お疲れ様、明月くん。……カメラマンさんもね」
照れくさそうに微笑む神楽坂さんに背を向け、俺は有栖と並んで部室へと歩き出した。
「ねーねー洸夜ー、私も喉乾いたんだけどー。ハチミツレモン買ってー」
「自腹で買え」
「えー、差別! 神楽坂さんには奢るのにー!」
有栖のギャーギャー騒ぐ声を聞き流しながら、首に下げたカメラの液晶を軽く覗き込む。
そこには、クラスメイトと弾けるような笑顔を交わす、最高の神楽坂さんの姿が映っていた。
新聞部の初仕事としては、まあ……悪くない結果だったかもしれない。
これからも少しずつ投稿していくので応援お願いします




