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第84話 「夜の入口――食事の余韻と、小さな日常」


バイキング会場は、まだ賑わいを保っていた。


夕食のピークは少し過ぎたものの、料理台には常に補充が入り、湯気と香りが途切れない。


まるで“食べることそのもの”が、ひとつの流れとして続いているようだった。


⸻


料理はさらに種類を増やしていた。


・ローストビーフ(カットサービス付き)

・鯛のカルパッチョ

・海老とブロッコリーのガーリック炒め

・鶏の照り焼き

・天ぷら(海老・かぼちゃ・ししとう)

・筑前煮

・茶碗蒸し

・味噌汁(あおさ・豆腐)

・白米・炊き込みご飯

・パン各種(クロワッサン・バゲット・ロールパン)

・サラダバー(トマト・レタス・オニオン・コーン)


そしてデザートコーナーには、


・プリン

・ショートケーキ

・チーズケーキ

・フルーツポンチ

・ミニシュークリーム


⸻


桜はその前で目を輝かせていた。


「これも食べていいの?」


「これも!」


そう言いながら、少しずつ自分のプレートに乗せていく。


⸻


桜の皿にはすでに、


・小さなハンバーグ

・エビフライ

・ポテト

・コーンスープ

・白ご飯少し


そして追加で、


・プリン

・ショートケーキ

・チーズケーキ


が並んでいた。


⸻


「デザートは最後ね」


菫が優しく声をかけると、桜は素直に頷く。


「はーい」


⸻


榮助はその様子を静かに見ながら、自分の皿を整理している。


食べる順番まで無駄がない。


・ローストビーフ

・天ぷら少量

・茶碗蒸し

・サラダ


必要な栄養と量だけを取っているような食べ方だった。


⸻


菫はその横で、少し控えめに皿を置く。


・鶏の照り焼き

・味噌汁

・少量の白米

・サラダ


⸻


「ちゃんと食べてますね」


榮助が小さく言う。


⸻


「食べないと桜に怒られますから」


菫が軽く返すと、桜がすぐに反応する。


「ママちゃんと食べてるよ!」


⸻


そのやり取りに、榮助はわずかに目を細める。


⸻


静かな時間だった。


食事は進み、会話は少ないが、空気は穏やかだった。


⸻


その途中。


菫が少しだけ顔を上げた瞬間。


唇の端に、ほんの小さな白い粒が付いていた。


⸻


榮助はそれに気付く。


一瞬だけ視線を止める。


⸻


そして、何も言わずに距離を縮めた。


⸻


菫が気付くより早く、榮助はその唇に軽く触れる。


⸻


ほんの一瞬。


しかし確かに“取る”というより、“触れる”動作だった。


⸻


離れたあと、榮助は淡々と言う。


「ご飯粒が付いていたので取りました」


⸻


菫は一瞬固まる。


そして小さくため息をつく。


「……言ってからにしてください」


⸻


榮助は少し考えたあと。


「効率的ではありませんでした」


⸻


菫は軽く額に手を当てる。


「そういう問題じゃないんです」


⸻


その横で、桜は何も気にせずデザートへ突入していた。


⸻


「これすごい!」


「プリンおいしい!」


「ケーキもふわふわ!」


⸻


順番通りに、


・プリン

・ショートケーキ

・チーズケーキ


を嬉しそうに食べていく。


⸻


食べ終わった頃には、すっかり満足そうな顔になっていた。


「おなかいっぱい!」


⸻


菫は微笑む。


「よかったわね」


⸻


榮助は静かに席を立つ。


「戻りましょうか」


⸻


⸻


三人は部屋へ戻る。


ホテルの廊下は静かで、カーペットが足音を吸い込んでいく。


⸻


部屋に入ると、桜はすぐにベッドへ座る。


「テレビ見ていい?」


⸻


「少しだけよ」


菫が答える。


⸻


テレビをつけると、地元のニュースとバラエティ番組が流れていた。


桜は興味なさそうに見ながらも、リラックスした表情になっていく。


⸻


「……落ち着きますね」


菫が小さく言う。


⸻


榮助は窓の外を見る。


夜の始まり。


街の灯りが少しずつ増えている。


⸻


「環境は安定しています」


⸻


いつもの言葉。


だが今は少しだけ柔らかかった。


⸻


桜はベッドの上で寝転がる。


「お風呂入るー?」


⸻


その言葉で、空気が少しだけ切り替わる。


⸻


菫は榮助を見る。


「露天風呂、行きますか?」


⸻


榮助は短く頷く。


「了解しました」


⸻


⸻


三人はそれぞれ準備を始める。


桜は子ども用のバスセットを持ってはしゃぎ、


菫はタオルをまとめ、


榮助は静かに必要物を確認する。


⸻


夜の露天風呂へ向かう準備は、ゆっくりと整っていく。


⸻


次は85話(三人で露天風呂)へ自然に繋がる。  



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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