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第6話 「静かな日曜日――“家族らしさ”が形になっていく休日」


日曜日の朝は、平日よりも少しだけ遅く始まる。


柿沼榮助(18)が目を開けたとき、部屋の外はすでに明るかった。


時計を見ると、まだ早い時間ではないが、どこか“休日の空気”が部屋に満ちている。


(今日は、学校ないんだよな)


そう思った瞬間、少しだけ体が軽くなる。



玄関を開けると、隣の部屋のドアも同時に開いた。


「おはようございます」


柊木菫(29)は、少しゆったりした服装で立っていた。


平日のきっちりした雰囲気とは違う、柔らかい空気。


その後ろから、柊木桜(5)が勢いよく飛び出してくる。


「おにいちゃーーん!」


休日のテンションそのままに、榮助に抱きつく。


「今日はね、いっぱいあそべる日!」


「……朝から元気だな」


榮助の言葉に、桜は満足そうに笑う。


菫は少しだけ困ったように笑いながらも、その光景を見ていた。


(もう、普通に“家族の朝”だな……)


そんな感覚が、少しずつ当たり前になりつつある。



朝食は、少し特別だった。


菫が作ったトーストと卵料理、簡単なサラダ。


「今日はちょっと楽にしました」


菫が言うと、桜がすぐに反応する。


「やったー!」


榮助は黙ってパンを口に運ぶ。


ほんのり温かいバターの味。


その“普通の朝食”が、妙に安心する。



午前中。


桜の提案で、三人はリビングに集まる。


「今日はね、これやるの!」


桜が持ってきたのは、家庭用ゲーム機。


菫が少し驚く。


「またそれ?」


「ママもやるの!」


桜の一言で、菫は観念したようにコントローラーを手に取る。


榮助はその様子を見ながら、軽く息を吐いた。


「……やるのか」


「もちろんです」


菫は少し真面目な顔で答える。


そのギャップに、榮助はほんの少しだけ笑う。



ゲーム開始。


桜は操作に夢中で、時々叫ぶ。


「わー!たすけてー!」


菫は意外と真剣にプレイしている。


「今のは避けられましたよね?」


「文句言うなよ」


榮助は淡々とプレイしているが、なぜか一番上手い。


「おにいちゃんずるい!」


桜の抗議に、榮助は一言だけ返す。


「実力」


その瞬間、菫が小さく笑う。


「……本当にこういう時だけは年相応ですね」


その言葉に、榮助は少しだけ視線をそらす。



昼。


三人で近所のスーパーへ買い物に行く。


カゴを持つのは榮助。


桜はその横を歩き、時々お菓子売り場へ吸い寄せられる。


「これ買っていい?」


「一個だけな」


菫が後ろから軽く注意する。


「今日はちゃんとご飯も食べるんですよ」


「はーい!」


そのやり取りは、もはや“家庭そのもの”だった。



帰宅後。


昼食は簡単なうどんだった。


桜は嬉しそうに麺をすすり、菫は少しだけほっとした顔をする。


榮助はそれを見ながら思う。


(こういうのが、普通の家なんだろうな)


その“普通”が、自分の中に入り込んでくる感覚。


まだ慣れていないのに、拒否もできない。



午後。


桜は昼寝。


リビングには静けさが戻る。


菫が小さく言う。


「……こういう休日、久しぶりです」


榮助はテレビを見ながら答える。


「そうなんですか」


「はい。いつもはバタバタしてて」


少しだけ間が空く。


菫は続ける。


「でも今は、ちょっと落ち着いてます」


その言葉に、榮助は何も言わない。


ただ、少しだけ視線を横に向ける。



夕方。


桜が目を覚ますと、また元気に走り出す。


「まだ遊べる!」


「寝起きから元気すぎ」


榮助の言葉に、菫が小さく笑う。


その笑い方は、どこか安心しているようだった。



夜。


三人で夕食を囲む。


今日は鍋。


湯気が立つ中で、桜が嬉しそうに言う。


「これ、家族みたい!」


その一言に、菫が一瞬だけ止まる。


榮助も少しだけ箸を止める。


だが、すぐにいつも通りの時間が戻る。



桜が寝たあと。


リビング。


菫が静かに言う。


「……桜、ほんとに嬉しそうですね」


榮助は頷く。


「まあ、あれは楽しいだろ」


菫は少しだけ微笑む。


「榮助くんも、ちゃんと笑うんですね」


その言葉に、榮助は少しだけ黙る。


「別に、普通です」


菫は小さく首を振る。


「普通じゃないですよ」


その言葉が、静かに残る。



夜が更ける。


それぞれの部屋に戻る前。


玄関で桜が眠そうに言う。


「また、みんなでゲームしようね……」


榮助は少しだけ頷く。


「……ああ」


ドアが閉まる。


その音は、少しだけ優しかった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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