第40話 「静かな連携――家族という裏のネットワーク」
その日。
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会社はいつも通り動いていた。
書類の音、キーボードの音、会議の気配。
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だがその裏で——
“別の会話”が静かに進んでいた。
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営業サポート課。
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柿沼健二郎は、櫻井隆義課長のデスク前に立っていた。
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隆義は顔を上げる。
「柿沼取締役……どうされましたか」
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健二郎は軽く手を挙げる。
「業務じゃない」
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その一言で、隆義の空気が少し変わる。
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健二郎は静かに言う。
「息子の件だ」
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隆義は一瞬だけ目を細める。
「柿沼榮助くん、ですか」
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健二郎は頷く。
「そうだ」
「結婚している」
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隆義は驚かない。
むしろ納得したように息を吐く。
「……やっぱり、そうでしたか」
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健二郎は続ける。
「相手は経理部の柊木菫」
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「そして今、妊娠している」
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隆義は少しだけ沈黙する。
そして低く言う。
「だから最近の動きが落ち着いていたんですね」
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健二郎は短く頷く。
「会社としては公表しない」
「本人たちの希望だ」
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隆義は即答する。
「了解しました」
「営業サポート課としても通常通り扱います」
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健二郎は少しだけ視線を緩める。
「悪いな」
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隆義は首を振る。
「いえ。むしろ信頼して任せます」
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同時刻。
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会社の別フロア。
経理部近くの小会議室。
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そこには柿沼美枝子と智恵子の姿があった。
そして向かいには——
柊木燈子
柊木玲子
双子の妹たち。
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燈子が先に口を開く。
「お母さんたちから連絡もらったってことは……もう知ってるんですね」
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美枝子は静かに頷く。
「ええ。榮助から直接聞いたわ」
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玲子が少し身を乗り出す。
「お姉ちゃん、妊娠したんですよね?」
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智恵子が軽く頷く。
「そうよ」
「しかもちゃんと会社にも報告済み」
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燈子は少し息を吐く。
「……早い展開ですね」
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智恵子は苦笑する。
「うちの家、昔から展開早いのよ」
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美枝子が少し真剣な声で言う。
「で、あなたたちはどうするの?」
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玲子は即答する。
「サポートします」
「お姉ちゃんの生活も、桜ちゃんのことも」
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燈子も頷く。
「私たちも同じ会社ですし、隠すなら徹底的に協力できます」
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智恵子が少しだけ笑う。
「助かるわね、本当に」
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美枝子は静かに言う。
「“秘密を守る”って、簡単じゃないわよ」
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玲子は真っ直ぐに答える。
「でも、家族ですから」
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その一言で、空気が少しだけ柔らかくなる。
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一方その頃。
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榮助は営業サポート課の自席で、
変わらない業務をこなしていた。
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ただ一つ違うのは——
誰にも見えないところで、
“家族全体が同じ方向を向いて動き始めている”ということだった。
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