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第16話 「日常の中の階層――見えない“会社の重さ”と新人の速度」


昼。


街は動き続けているが、《株式会社・龍雷神》の中だけは別の時間で流れていた。


それは“効率”と“決定”だけで組み立てられた空間だった。



■本社会議室(上層意思決定会議)


長いテーブルの中心に座るのは社長・黄金おうごん


その左右に並ぶのは、会社の中枢そのものだった。


・副社長:仙川喜之助せんがわ・きのすけ

・常務:箕輪卓造みのわ・たくぞう

・専務:古澤俊蔵ふるさわ・としぞう

・取締役兼執行役員:柿沼健二郎かきぬま・けんじろう

・統括本部長:戸根隆三とね・りゅうぞう

・統括部長:陣川豪じんかわ・ごう

・統括次長:鍋嶋蔵之助なべしま・くらのすけ

・統括課長:山本優太郎やまもと・ゆうたろう

・統括係長:松永潤まつなが・じゅん

・外部取締役兼統括管理者:簗瀬晃一やなせ・こういち

・外部取締役:菅原一眞すがわら・かずま

・外部取締役:慶野孝一けいの・こういち

・外部取締役:荻田直義おぎた・なおよし


その場には柿沼美枝子と柿沼智恵子も同席していた。



会議は淡々と進む。


「今期の投資案件、再精査を」

「海外部門のリスク管理を強化」

「新人配属の最適化について」


一つ一つが重く、しかし当然のように処理されていく。


健二郎は静かに資料をめくりながら指示を出す。


「この件は一旦保留。次の案を上げろ」


その声には揺れがない。



智恵子は隣で素早くメモを取りながら、時折補足を入れる。


「人事側の負荷は問題ありません」


美枝子も淡々と確認を返す。


「秘書課側は調整可能です」


家族でありながら、完全に“役職として”会話が成立していた。



一方その頃。


同じ会社の別フロア。



■新人配属フロア(龍雷神・一般業務部門)


柿沼榮助(18)は、自席で資料を見つめていた。


配属:営業サポート課


まだ“戦力”というより“研修対象”。



「ここ、どうなってますか?」


榮助は隣の席の上司に声をかける。


直属の上司は木更津瑛二きさらづ・えいじ


中堅社員で、淡々とした指導役だった。


「そこはこの数値を基準にして修正だな」


「はい」


榮助はメモを取り、すぐに修正作業に入る。



周囲には同じ新人たち。


・藤崎悠真

・黒田蓮

・中村海斗

・西川優斗

・白石結菜

・神谷美月

・藤堂紗希

など、まだ誰も“戦力”にはなっていない。


それぞれが手探りで仕事を覚えている。



「え、それどこに保存するんだっけ?」


「ここで合ってる?」


そんな声が飛び交う中、榮助は一歩ずつ確実に進んでいく。


遅くはない。


だが、速くもない。


“遅れない速度”だけを守っている。



木更津が横目で言う。


「焦らなくていいが、止まるな」


「はい」


榮助は短く返す。



昼休み前。


周囲が少しずつ緩む中でも、榮助の手は止まらない。


(これが“社会”)


(昨日までとは違う場所)



その頃、上層階では会議が続いている。


数字と責任と権限が、静かに積み重なっていく世界。


そこに家族がいても、誰も“家族としては見ていない”。



だが、そのすべてが同じ建物の中で動いている。



榮助はふと窓の外を見る。


空は同じ青。


だが見えている世界は違う。



そしてまだ誰も気づいていない。


この会社の中で、最も危ういバランスの上に立っているのは——


“新人”でも“上層”でもなく、


すでに日常として混ざり始めた「家族」という存在だということを。   



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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