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【本編完結・コミカライズ決定・書籍1〜4巻発売中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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94/95

ネフィーとケッカ

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第1巻ー幸せな過去と結界の乙女ー」

「第2巻ー初恋とデビュタントー」

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第3巻ー新しい家族と悲劇の始まりー」

各サイト様にて配信中。

コミックシーモア様より7月25日から「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 4巻 ―学園生活と忍び寄る悪意―」が配信開始となりました。



誤字脱字のご報告感謝申し上げます。


ネフェルティティが部屋に戻ったのは深夜の事だった。

ネフェルティティは今は皇太子付きの女官として仕事をしている。

今日はご愛妾様との逢瀬から戻られる皇太子殿下のお世話で遅くなってしまった。


皇族付きの女官とは言っても、出仕して5年未満の若輩者。それも男爵家出身で地方部族の血が流れるネフェルは未だ一人部屋ではない。パーテーションで仕切れる半個室の同僚を起こさぬように注意して扉を開いた。

しかし、その気遣いは杞憂だったらしい。

部屋からは未だに灯りが漏れており、ネフェルティティの足元を照らした。


「お帰りなさい、ネフィー。今日は遅かったのね」

相部屋の住人が声を掛けてくれた。

公爵家出身の高位貴族令嬢でありながら出仕している変わり者の後輩、フランチェスカ・クラウス・ベルベットだ。

本来高位貴族出身のご令嬢は個室を希望するものだが、彼女はそれを望まなかった。一個人として見てもらいたいのだと恥ずかしそうに言っていたのが懐かしい。彼女は今は皇太子妃付きとして仕事をする可愛い後輩で、同僚で、友だ。

しかし、いつもは何かあっても顔に出さない彼女の顔色が今日は悪い。


「ただいま、ケッカ。貴女こそこんな遅くまで起きて…何かありましたか?」


しばし彼女は目を伏せ、床の一点を見つめる。彼女が思考をまとめる時の癖が出たと言う事は話してくれるのでしょう。


私は「お茶、飲むでしょ?入れるわね」そういって小さな給湯スペースに向かった。彼女は大事な事は基本的に何でも自分で抱え込む。それを危惧した女官長様から指導役、相談役として彼女を任されてから彼女とは随分とぶつかり、分かりあった仲だった。

最初は自分のように部族の血が入っている事で縁談を断られたり、無理やり遊びで手篭めにされかけ男嫌いになった訳でもない高位貴族の令嬢が遊びで出仕しているのだと斜に構えていたが、彼女は自分にできる事で国を支えたいと強く願う同士であった。羨ましい事に婚約者さえそれを後押ししてくれているのだと語った彼女にネフェルは嫉妬した程だった。


小型コンロの魔道具の電源を入れ、茶葉と茶器を選ぶ。もう、夜も深い。寝つきが良くなる薬草茶にしよう。そして棚の上にあったとっておきの菓子も出して皿へと移した。そうする間に湯はお茶に丁度良い温度まで沸いた。


一式をトレーに乗せて戻れば、意志の強そうな双眸がこちらに向いていた。

どうやら纏まったのね。

ネフェルティティはフランチェスカの隣に座ると茶を彼女の前へと置いた。


「ありがとう、ネフィ」

「どういたしまして。悪いわね、私のお茶に付き合ってもらってしまって」


少しおどければ返ってきたのは苦笑だった。

普段から2人は冗談すら言わぬ程に真面目な人間と周囲からはみられているらしい事は互いに自覚している。

ネフェルティティは身分の低さ故に侮られない為、フランチェスカは身分の高さ故にその品位を損なわない為にであったけれど、2人とてまだ年若いただの女性だ。気心の知れた仲でのみ少しだけ2人は優等生の仮面を外す。

ずっと気を張り続けるのは難しい。特にこの皇宮では…。


フランチェスカは大きく息を吐くと口を開いた。

「今日、皇太子妃主催の会があったでしょ?」


「えぇ、柘榴宮での会ね」

ネフェルティティは優しく相槌をうつ。

フランチェスカは頷く。その顔には未だ迷いはあるけれど話してくれた。


「その会で、私…驚くようなことがあって、顔を取り繕えなかったのです。それを皇太子妃様には見つかってしまって…私、もしかしたら取り返しのつかない事を言ってしまったかも知れない…」


ネフェルティティはハッとする。フランチェスカの秘めたる力については聞いていたから、もしやと思い切り出した。


「何かよろしくない直感でも感じたの?」

フランチェスカはこくりと頷く。


「未来の皇帝の母だと感じたご令嬢がいらっしゃったの」

それだけ聞けば吉報ではないか。ネフェルティティの顔には疑問が浮かんだ。


フランチェスカはその困惑を見て苦笑する。

「それも2人いらっしゃったのよ。同じ皇帝の母として…」


その答えにネフェルティティの顔は酷く苦いものになる。

確かにそれは喜ばしいだけの話ではない。いくつかの可能性があるが、彼女がこれほどに悩んでいるという事は彼女もその意味を測りかねているのだろう。

よくない未来の時には彼女はそうならないようにと動く事は今までもあった。皇太子殿下が刺客の女に入れ上げそうになった時に初めて彼女の力の話を聞いて助力をと懇願された。でも今回はどうして良いのか彼女も分からないのだと力無く肩を落とされた。


「皇太子妃様はそれをご存知なのよね?」

またフランチェスカはこくりと頷く。


「そうであれば、後は時女神の差配に任せる他ないわね…」


その日2人で口にした茶は蒸らしすぎたのか少しばかり渋かった。





あの夜から数年の月日が流れた。


フランチェスカは職を辞して婚姻した。そこには口に出しては言えない寂しさがあったが決して表に出す事はなかった。ネフェルティティは仕事を続けた。それであっても2人は友だった。フランチェスカの出産の折にはお祝いに屋敷に招かれる程度には親しく交流をしている。



今のネフェルティティの立場は第一皇子付きの女官長である。

父帝のような軽薄さは無く、指導をしていたケッカのような厳しさと皇后陛下譲りの礼節がある。このままお育ちになればきっと良い統治をして下さるだろうと思えるような和子様だった。

今後宮には数人の皇子皇女様方がいるけれど、問題なければ正妃である皇后様がお産みになった第一皇子が立太子すると目されてる。

そんな皇子殿下には幼馴染とも呼べるご令嬢が2人いらっしゃる。



北西の大領地に連なる家門であるソルトベール侯爵令嬢とその従姉妹で同じ派閥のルイーニ子爵令嬢である。

御二方のお母様は侯爵家出身の姉妹である為かとても似た雰囲気のお嬢様方です。言われなければ姉妹と間違えられるかも知れない程に背格好から雰囲気までがよく似ていた。

そしてこのお二人は度々皇后様の計らいで、ことあるごとに登城し、殿下と時を過ごされている。


幼いながらもお二人の顔には恋慕の赤みが昇るのを何度も見ている。

幼き日より遊んでくださる優しい兄の様な眉目秀麗で優秀な殿下に心を寄せるなという方が難しいのかも知れません。

それは何とも淡く、微笑ましく…そしてケッカから聞いていた幼児とは彼女達の事なのだろうと思うと少しばかり居た堪れない。

もしかしたらどちらかが皇后のお眼鏡に叶うかも知れないという事だったのかも知れないと、その不安には蓋をした。



皇子が13歳の年に皇子は立太子なされました。デビュタントで共にデビューし踊ったのはソルトベール侯爵令嬢シャルロッテ様だった。これはケッカの直感がシャルロッテ様をさしていたのかもしれないと思った。あの日、同じ日にデビューしたカテリーナ様は少しばかり諦めの表情を浮かべ寂しそうにカブァリエとダンスを共にされていた。


それは御成婚の時も同じだった。シャルロッテ様は初々しくも輝ける皇太子妃として白の花嫁となり、カテリーナ様は私と同じお仕着せの侍女として羨ましそうに…その反面嬉しそうに式典を眺めていらっしゃった。



その後の日々は忙しくも穏やかに過ぎていたように思う。しかし水面下では皇太子妃シャルロッテ様の体調不良等が侍女達の間でも共有事項として通達される程度になっていた。お妃にとって…皇室にとって世継ぎ問題は最重要事項。皆の関心が集中していた。


シャルロッテ様の輿入れから一年程した頃、私は皇后陛下から呼び出された。

それは皇太子殿下のお子を宿されたカテリーナ様を離宮にて世話するようにとの通達でした。


私は皇太子殿下付きの女官としてカテリーナ様が皇后様の命令で同衾された事を知る数少ない者の一人でしたので、驚きは少なかった。


ただ…1人の友の顔が浮かんだ…



カテリーナ様は離宮で泣き暮らされていた。彼女が悪い訳ではない。しかし、私では彼女に寄り添う事は出来ない…。

そんなもどかしさに苦しむ時、ケッカからの手紙が届いた。その手紙は切実で、私はこっそりと彼女を離宮へ招く手配をした。勿論カテリーナ様に同意を得た上での事だった。でも、皇后様へは許可を取らず、私の裁量で処理をした…。


私は二人の面会を隣室で見守った。二人とも苦しんでいた…傷ついていた。こんな未来を辿る事なく過ごせたかもしれないと後悔もあったでしょうに…結果カテリーナ様はケッカを責めはしなかった。それでも自身の苦しみを吐露した。今まで涙を人前で流せなかったカテリーナ様…その本心の告白…それは数少ない彼女にとっての救いとなったように見えた。


数ヶ月後、カテリーナ様は私が手配した毒を煽られた。罪が和子様へと移ってほしくは無いと抱く事を拒まれ、母である事を諦めて…

何とも儚い方でした。


私は和子様付きの女官としてシャルロッテ様の側へと移りました。

友はまた手紙をくれました。今度はシャルロッテ様とお会いしたいと…。私はその場をまた用意致しました。

シャルロッテ様は母となられていた。子を生して居なくとも彼女は強い母としてケッカと対峙されていた。半身を失った悲しみなのか、ケッカに対する忌避なのか憐れみなのか、今後彼女が力を使う事だけを強く否定された。ケッカももう目の前のような不条理に出会いたくはなかったのでしょう。それを静かに了承した。


運命を変える事で国の役に立ちたいと昔語った友は、運命を時女神に委ねる人生を選んだ…。


それが自身の驕りと自惚れの結果なのだと友は泣いた。

私はその涙を知る者として彼女の選択を尊重する。



私の愛した人の選択を…。


皆様、お久しぶりです。

佐藤です。


最近はめっきり暑くなってきましたね。

今回は若かりし日のネフェルティティ女官長の話を書いてみました。


後は近況報告でもお知らせ致しましたが、当作がガンガンonline様からコミカライズ決定です!

担当の漫画家先生は十槻みか先生になりました!


漫画版は小説版とは少し違った流れだったりするのですが上手くまとめてもらっています(笑)

詳しい連載時期等は私もまだ聞いていないので分かり次第ご報告したいと思います。



暑い日が続いていますので皆様お気をつけ下さい。



佐藤真白


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