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【本編完結・コミカライズ決定・書籍1〜4巻発売中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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93/95

フランチェスカの後悔

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第1巻ー幸せな過去と結界の乙女ー」

「第2巻ー初恋とデビュタントー」

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第3巻ー新しい家族と悲劇の始まりー」

各サイト様にて配信中。

コミックシーモア様より7月25日から「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 4巻 ―学園生活と忍び寄る悪意―」が配信開始となります。予約開始しております。



誤字脱字のご報告感謝申し上げます。




小さな頃から不思議な力が私にはあった。


あっ…今夜初雪が降る…


ただそう感じただけで本当にその晩に初雪が降った。


あっ…この道山雪崩で崩れる…


お父様に話したら「そんな事は起きない。要らぬ心配をするな」と笑われた。その翌年その道は封鎖された。



いつもでは無い。すごく偶に感じるその感覚は不思議なもので、よく当たる。

部屋付きのメイドや侍女に相談しても誰も相手にしてくれなかった。

姉や母には気味悪がられすらした。


この力はよくあたるのに…

外れる事もあったけれど、本当に私の直感はよく当たったから…



そんな鬱々としつつ納得のいかない日々の中で、私はまたその感覚に襲われた。

場所は皇宮。突然だけれど、その道を真っ直ぐ進んだ先で隣を歩く友が血溜まりに倒れるイメージが鮮明に浮かんだ。それも今日のドレスと同じデザインのドレスを纏った彼女が血の海に沈んでいたのだから…


ダメ…このまま進んだらシシィが死んじゃう…!


そう思った私は道を迂回する事を提案した。友はそれを不思議そうに受け入れてくれた。

その時の私は随分と祈る様な気持ちで進んだ。


呼ばれた茶会の会場では、無事に辿り着けた安堵と、帰りの事なのかも知れないという不安が付き纏った。しばらくして、その日の会の中止が知らされた。シシィと同じ髪色の男爵令嬢が刺客に切り付けられたらしい…

それはきっと皇太子妃筆頭候補の友を狙ったものだったのだろう。場所はまさに私が直感のイメージで見た場所だった。


私はその日震えが止まらなかった。友を救えた安堵。

違う者が犠牲になった罪悪感。

未来が変わるのだという希望。

でも、変わらなかった事への不安…


いろいろな事を綯い交ぜにした感情の波に襲われてその日寝付く事は出来なかった。


友に事件の事を知っていたのか問われた時には、自分の力の事を打ち明けた。また信じてもらえないかも知れないと不安とも諦めともつかない感情に俯くと、友は「ケッカは嘘をつくような人ではないわ。私を助けてくれてありがとう」そう言って手を握ってくれた。

その手は温かく、私の心は確かに救われた。



だから私は、この力を他人の為に使いたいと強く願った。外れる事を祈るほどの時には自分から動いてみる事もした。

その結果分かったのはやはり未来は変えられる。正しく言えば未来は確定事項ではないという事。

予防する事も、別な道になる事もある。未来を創るのは人の小さな選択の積み重ねだから。


私はこの力を使ってより良い国になればと出仕する道を選んだ。幸いにも勉強は嫌いではない。むしろ大好きでさえある。そして婚約者であるエルバム様は私が打ち明けた力の事を「それは便利だな」と言い「やりたいのであれば悔いの残らぬようにフランチェスカ嬢の思うままに進まれれば良い」と豪胆に笑われたのです。


意を決して打ち明けたと言うのに拍子抜けするほどあっけらかんと言われ、私も思わず笑ってしまったのです。



そこからは友であったシシィ…いえ、エリザベート様と皇太子殿下を主人とし私の居場所を皇宮と定めました。

婚約はしておりましたけれど、エルバム様には悪いと思いつつ結婚も先に伸ばさせていただき、日々精進致しました。


皇太子殿下の暗殺や皇太后様の事故を防げた私は何でも良い方へと未来を変えられると傲慢にも思ってしまっていた。結婚後もその力が皇室のためになるはずと…


その傲慢に思い至ったのはある赤子達と会ったことでした。

その日は第一皇子殿下の側近と伴侶となりそうなお嬢様方を集めての会でした。


そこで私の視線は二組の親子へと向き、そのまま困惑で固まってしまいました。どう言う事なのか理解が追いつかなかったのです。


皇帝の冠を頂く青年に母として寄り添う二人のビジョンが強く見えたのですから…

直ぐに顔を整えたつもりでも、長年の友には分かってしまったようで問い詰められてしまった。そのまま偽りを言う事も出来たのに、私は正直に話してしまった。かつてこの友だけが私を信じてくれた。だから、今回も良い方へときっと向くと思ってしまった。その時の彼女の笑みは人のものでは無いように感じてぞっとした。私は道を誤ってしまったかも知れない…そう思った。


その後も不安は強く付き纏った。これが正解だと誰にも分からない。わからないままに進む時がもどかしく、私は家庭という名の安息へと逃げた。子供を授かった事を理由にあれ程熱望していた皇宮から辞した。彼女達はエリザベート様のお気に入りとして度々登城していると聞く…。私の不安が杞憂であって欲しい…。


きっと彼女なら正しい判断を下してくださる。そう不安な心のままに思った。でもそれを確かめるのが怖かった。


皇室などは本当に魔窟だ。生まれながらにその毒に染まっているか、それを慣らされた者にしか活路が無い程にあそこは息苦しい場所だ。そんな所に無垢な幼児を招き込む原因になってしまった事も彼女達には申し訳なく思う。強制ではなく望む形での入城であれば良いのだけれど…そんな老婆心で彼女達を憐れんだ。


皇宮を辞してから10年近く経った。彼女達は順当にお妃候補として名を挙げられる淑女へと成長していた。そして第一皇子の立太子の際に名を挙げられたのは件の幼児の片割れであったシャルロッテ嬢…

きっとあの時感じたのは二人が皇太子妃として何方が選ばれるのか分からないと言った暗示だったのだろうと思うことにしました。しかし依然として心の底に澱のように溜まるモノになんとも言えない不安がありました。



そのまままた10年近くの時が過ぎ、あの時の不安を思い出すことがなくなっていた頃に私は皇后となった友からの茶会で自分の発言の行く末を聞いた…


「ありがとう、ケッカがあの子達の事を言ってくれたお陰で、良い皇太子妃と未来の皇帝の母を皇室に迎えられたわ」


未来の皇帝の母、その言い方が引っかかった。皇太子妃ならば未来の皇帝の母となるのは当たり前のことだから…


「皇后様、それはどう言った意味でしょうか?今は確か、皇太子妃様がご懐妊とは聞いておりますけれど…」


かつての友は魔窟で本当に魔物にでもなってしまったのか、その口角をニタリと釣り上げて言った。


「実はね、懐妊しているのはカテリーナなの。貴女が二人共に皇帝の母に見えると言ってくれたから、カテリーナに同衾を言い渡したの。そしたら直ぐに孕ってくれたわ。

ロッテには悪いのだけれど、あの子も今体調がよろしくなくてね…流石に皇太子妃に懐妊の兆しが無ければそれこそあの子の立つ背が無くなってしまうわ。だからと思って画策してみたのだけれどうまく行ったようでよかったわ!素敵な提案をありがとう、ケッカ」


私の目の前は先程までの艶やかな色彩を失って感じた。心の底の澱が一気に舞い上がり目の前を黒く染めたようだった。


私があの時の直感を口走らなければ…そう思った。



直ぐに皇宮時代の先輩で、同室の友人であったネフィへと手紙を書いて事実を確かめた。


皇后の言っていた事はやはり事実らしい…。


なんて非道で酷い事を…自分の娘とも言える嫁になんたる仕打ち…


そしてネフィが今はカテリーナ様付きとして離宮に詰めている事も知った。そこから私は秘密裏にカテリーナ様と面会を果たしました。


私の罪の告白のために…


久方ぶりに見る女性は少しやつれつつも笑顔でで迎えてくれた。私が彼女の苦しみの元凶だと言うのに…


「お久しぶりですわ、エメンタール伯爵夫人。このような様で申し訳御座いません。少しばかり事情が御座いまして…今は療養中なのです」


まったく下手な嘘をおつきなさる。どこからどうみても妊っていると分かる体付きだというのに…

「カテリーナ様、事情は聞き及んでおります。どうぞご自分を偽らないで下さいませ」


そう言えば作った笑顔に涙の筋が浮かんだ。私は人目がないのを良い事にカテリーナ様を胸に抱き寄せた。


一頻り泣いた後、私はゆっくりと彼女の話を聞いた。そして私の力の事、過去にカテリーナ様とシャルロッテ様に浮かんだビジョンを皇后様へと伝えてしまった事を詫びました。


「いえ、フランチェスカ様は悪くなど御座いません。確かに皇后様のなさりように憤りも御座います。でも、私は今、彼の方の子を妊れて嬉しいのです。彼の方の隣には私の大切なロッテが居て、私はずっと諦めていました。でも、隣に居れなくても、たった一晩だったとしても彼の方の時を分けて頂けた事に変わりはないのですもの…。ですのでこれは私の選んだ事なのです。愚かしいでしょうか?」


私はその強い眼差しに首を振ることしか叶いませんでした。


そしてそれがカテリーナ様をみて、会話を交わした最後となりました。


彼女は皇子殿下ご出産の後、用意されていた毒を煽り旅立たれてしまいました。



私はその知らせを聞いて直ぐに皇太子妃様への面会を依頼致しました。


憔悴しながらも皇子殿下をその腕に抱いていたシャルロッテ様にも私は謝罪を致しました。


「貴女はキティに許されたのでしょう?であれば私は何も言えないわ。それにキティはこんなにも大切な宝物を残してくれた。だからこの子を育てるのは私の選んだ道よ?それを貴女に謝られたくなどないわ…でも出来ればその力、今後は使わないで…私達のような不幸を他の人にも味わわせないで頂戴」


「御意…仰せのままに」

私は元よりそのつもりでした。

しかし、命じられた事でホッとした。



私は責められなかったことに申し訳なく、そして誓う。彼女達のようにこんな力で理不尽を味わう人の無いように私は今後この力を封じましょう。救える命も切り捨てて…その不条理を自身の罪と認めて…。もう人の運命を捻じ曲げるのは沢山です。


これが私の生涯をかけた後悔の始まり…


でもその信念すら10数年後には一度揺らいだ。

まさか孫娘の未来と皇室が繋がって見える日が来るとは思ってもみなかった…。それと同時に神域の棺に横たわる彼女の姿もみえた…


色合いと時間からすれば、皇室入りが濃厚…本人に伝える事はしたくない…

でも、それであれば、あの魔窟で生き抜けるだけの力をつけてあげてもいいのではないかしら…


フランチェスカは厳しい声で告げた。


「今一度挨拶をなさい」



まさかその選択すら後悔となるなど夢にも思わず…

古薔薇の後悔は続く。


最近は別な物語「片翼の翼〜姫巫女は後継者探しの旅に出る〜」をのんびり執筆中の佐藤真白です。


違う世界感の物語を書き始めるとそちらに引っ張られるのか上手く書けないものですね…



頭が良くても、力があったとしてもどうにもならない不条理とフランチェスカも戦っていたんだろうなと思いながら書いてみました。



フランチェスカの礼儀や知識は弱い自分を守る為の防具であり、武器だったのだと思います。それを上手に伝えられない不器用な人だったんだろうなぁ〜

そういう人を想像するのは好きです。


さて、前書きでも告知致しましたが、本作の4巻の予約が開始されました!表紙は話の中にはないスピカとステラです!

ステラの表情はニヤリでお願いしますと注文したところ素晴らしい醜悪ニタリ顔を描いて頂けました!


個人的に大満足!そして結構この巻加筆してます。Web版ではなかったエピソードが加えられパワーアップしてます(笑)よろしければ覗いてみてください。


佐藤真白

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