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【本編完結・書籍第1巻発売中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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90/92

外伝  シシィの物語 前編 ー秘密の共有者ー

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第1巻ー幸せな過去と結界の乙女ー」「第2巻ー初恋とデビュタントー」各サイト様にて発売中

「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました 第3巻ー新しい家族と悲劇の始まりー」

コミックシーモア様より先行配信予約中となっております。



誤字脱字のご報告感謝申し上げます。



帝国の皇室に嫁いで知らされた世界の真実の一つはギフテッドと呼ばれる神秘でした。




私には生まれながらの宿命が御座います。それは皇室との婚姻によりこの帝国の国母となり国を支えること。家の家門の為、国の為、臣民の為に皇室に一生を捧げよ。それを子守唄に私は育てられました。

それが私、エラルド公爵家の娘として生を受けたエリザベート・クラウス・エラルドの避けようのない運命の轍。


そんな私には同じ年、同じ家格の好敵手とも言える女性がおりました。私とは従姪の関係で、ベルベット公爵家の次女フランチェスカ様です。


彼女は綺麗な顔立ちなのに感情表現は苦手で、いつも貴族の笑みか真面目な顔しか見せない人でした。しかし彼女の美しさは内面にこそありました。


彼女は幼い頃から大人の学者と議論を交わすような才女でした。マナーも完璧で少しばかりダンスなどの運動は苦手とされているようですがそれを努力で補う努力の人でもありました。

周りからは何の欠点も無いよりも欠点を補おうとする姿勢が好ましいと言われ、私も苦手な勉学に励むきっかけとなったのは良い思い出です。


血の近さから皇室の婚約者候補にはのらなかった彼女ですが、幼かった私には、そんな事いつ覆るかとヒヤヒヤとしていたものです。


当時の私にとっては国母となる事こそが存在理由だったのですから…。


彼女にとっても、近しい存在の私は友と呼べる1人だったのでしょう。学園に通う前の幼少の頃に彼女からこっそり聞かされた彼女の力、それはまさしくギフテッドなのだと後に知りました。


ある日、私達は時の皇后陛下の茶会に呼ばれ会場に向かっているところでした。

いつもと同じ、いつもの皇城の道を行こうとした時には彼女が突然私の袖を引いたのです。


「シシィ…この先は何だか嫌な感じがするわ。今日は少し遠回りの道を行きましょう。まだ時間はあるのだし」

普段そんな事言わない彼女に説得され私達はその日別な道から会場に向かいました。


そしてその日、同じ茶会に参加予定でした私と同じ髪色の令嬢が、私達が避けた道で刺客に襲われました。幸にも命は有りましたが教会で過ごす程の傷を負いました。


後日、私と同じく皇太子殿下の婚約者候補に娘を出さんとしていた侯爵家が急な領地経営の悪化で没落致しました。

そういう事なのでしょうね。



私は刺客の事を彼女が知っていたのだと思い、怖くなってたずねたのです。もしや彼女も私を追い落とさんとする一味の人間では無いのかと疑心暗鬼に駆られて。

「ケッカ…貴女はあの日、あの場所で何が起きるのかを知っていたの?」


彼女は静かに首を振りました。

「私は断じて知らなかったわ。私は…信じてもらえないかも知れないけれど、偶にあの日みたいに直感が働く事があるの。あの日もあの先に進んだら血の池の中に居る貴女の未来を感じたの…だから道を変える事を提案したの」


訝しむ私に彼女は諦めの顔を見せました。そこには信じて貰えない孤独の光が見えました。今までもこの話を誰かにしては信じて貰えなかった過去があるのかも知れません。

そこには只々私を助けたいと願った友がいました。


「いいえ、ケッカ、私は貴女を信じるわ。私は貴女が別の道を勧めてくれなければ死んでいたかも知れないわ。貴女は私の恩人よ」


私は困惑と安堵の表情を浮かべる彼女の手を取り、秘密の共有者となったのです。




それから月日は流れ、私は正式に皇太子の婚約者としての日々を送っておりました。

フランチェスカも古参貴族の中でも伝統派のエメンタール家の嫡男との婚約をされ、私は少しばかり安心をしていました。流石に殿下も婚約者のある方に粉はかけないでしょう…。


皇太子殿下には御兄弟が妹君1人で御座いましたので世継ぎは多い方が良いとの意見が多数派でした。更には当のご本人の殿下も浮ついた話の多い方でした。

そんな中でもきちんと婚約者として私に礼は尽くしてくださっていましたし、その…愛して下さっていたとは思うのです。それでも私はやはり国母にならねばならないとの重圧から、殿下の周りに女の影がある事が恐ろしくてならなかったのです。

そんな私の心の闇の隙間に入り込むように殿下はケッカとよく話をしておりました。

それが私の嫉妬心を燃え上がらせていたのです。


しかしながら事実は学問から逃げる殿下を諌める忠臣がそこにはいただけでした。

そして私の事を気にかけ、私と殿下の仲が良いものであってほしいと願う友がいただけなのを暫く私は嫉妬から誤解したままで過ごしておりました。

それを知ったのは成人後すぐの事です。



成人を迎え私と殿下は直ぐに夫婦となりました。

1週間は続いた婚礼儀式の後の蜜月の時間の中で、殿下はその事をお話しくださいました。

「良き友に恵まれたね。私は彼女から叱られてばかりだ。貴女を蔑ろにする事は国を蔑ろにする事だ。遊びで火の粉を撒くなとは言わないが、シシィだけは傷つけるなと再三脅された。次期皇帝を脅せる程に君を大切に思っているんだね」


私は自分の内に巣食う醜さに涙しました。何処までも私のは自分勝手な人間なのです。殿下は嬉し泣きと勘違いなされたままに私に寄り添って下さいました。


そして城へ戻り前皇后である義母様から内密にとある部署の存在を知られたのです。

「貴女なら彼等を国の為にと使えるでしょう」

お義母様の口から説明されたのは、神秘の秘匿された皇后直轄の機構のあらましでした。そこで私はケッカの力がその神秘だと、真実だと知るのです。

彼女はその能力の不安定さからそこに囲われる事のなかったギフテッドだったと…。


一方でケッカは成人後も結婚はせずになんと女官として城勤を始めてしまいました。婚約者のエメンタール子息もそれを許していたのですから今考えると近代的で柔軟な思考です。

当時はそれが異色で好奇の目に晒されておりましたが、本人は持ち前の才と辣腕ぶりを発揮し、実力で周囲を押し黙らせました。ケッカは案外短絡的で力に任せる大雑把な一面がありますが、それをそこで発揮しなくとも良かったでしょうに…。


婚約者がいて、成人後の年若い高位貴族女性の宮仕は殿下や皇帝のお手付きだからだなどと言う噂もあり、私はそれを否定しきれない程に周りからの重圧に耐えていました。



蜜月の後に無事懐妊をしたものの、元来の遊び人の気質が優ったのか殿下は私の懐妊発表後直ぐに皇妃を娶られたのです。いつ自分の立場が追い落とされるやも知れぬ恐怖の日々に噂話とは毒でした。私は知らず知らずのうちに自分のやりたい事を生き生きとこなすケッカに憧れと嫉妬の心を抱いていたのです。



また季節が変わり、私が無事に世継ぎとなる息子を出産した頃に皇妃も懐妊致しました。直系皇族が少ない現状では喜ばしい事ですが私の心情は複雑でした。

他にも遊びで手を出されている女性はいるようですが、中々に隠すのがお上手です。皇族の種の管理も正妃の仕事ですから調べさせるのですけれどね。

そして毎回その名簿の中にケッカの名前が無いことに安心する自分がおりました。


婚約者がいても城で働き続ける友を警戒しているだなんて…何と愚かだったのでしょうね。

だというのに私は皇子の教育係にケッカを指名すると言う心の矛盾の中におりました。

私の知る中で彼女が1番優秀で心を許せる存在だったのですから…。


皇子が2歳になって間も無くまた子を授かった私の側には、未だにケッカはいてくれました。イヤイヤ期絶頂の皇子の世話係兼教育係としてです。

未だに根強くケッカが第二皇妃に召し上げられると信じる者がいる程でした。私も少しばかり疑っておりましたしね…。




そんな中、年若く母になった者達ばかりを集めて懇親をする事になりました。家庭の愚痴や育児の憤りを話して交友を深めましょうとの謳い文句でしたが、その実それは皇子の側近や婚約者選定の前準備でした。


まだそこまで目立たないとはいえ身重の私は多くの従者を伴って会に参加しました。

会場は離宮の柘榴宮で乳飲み子や幼児も一緒に参加する会としていた為に、会場は泣き声やら笑い声やらで大層賑やかだったのを覚えています。

勿論私も2歳になる皇子を連れての参加でした。皇子は自分と同じ年頃の子供達との触れ合いは少なかったのでとても緊張していたのが印象的でした。


私の側にはケッカが当然のように控えて居ました。皇子の社交は皇子の自主性を尊重するそうで、その日は私の側におりました。何組かの懐かしい顔と話をし、互いの苦労を労い会は進みました。



そんな中、2組の親子達の前で珍しくケッカの表情が曇りました。何か良く無い事があったのかと、即座に私は人払いをしてケッカに聞きました。

「何かあの親子達にありましたの?」


ケッカは少しばかり目を伏せ話そうとはしませんでした。

「皇太子妃の命です。答えなさい」


友としてではなく公の立場の刃を振りかざしました。


ケッカは周囲に人がいない事を確認して盗聴防止の魔道具を起動させました。


「皇太子妃殿下…私の直感が目の前の幼児が将来の皇帝の母だと告げたのです…」


それだけであれば何とも好ましく明るい話題です。

「まぁ、それは吉報では無いですか。で、どちらの子が未来の帝の母なのです?」


私の問いにケッカは中々答えようとしません。

視線の先の親子は侯爵家出身の姉妹で、互いの子供達も同じ年頃のようです。確か姉は同じ侯爵家に嫁ぎ、妹は子爵家に嫁いだはずと記憶を辿ります。

しばしの沈黙の後にケッカは重い口を開きました。


「どちらもで御座います。同じ人物の…未来の皇帝の母と私の直感が申しております」



私はその言葉の意味が理解できなかった。

理解出来ないままに2組の親子に近付いて声を掛けた。


これが後に息子の伴侶として嫁いで来るシャルロッテ嬢と、その従姉妹で彼女の筆頭女官として入城するカテリーナ嬢との初めての出会いの場となったのです。


明後日、書籍第3巻がコミックシーモア様から先行発売されるのを記念して、3日間連続で外伝の投稿を致します。

今作はその第一弾です!


皇太后と皇后の確執に迫る外伝となっております。

こちら第5巻に収録予定のものとなります。

先行蔵出しでお楽しみいただけるとうれしいです。



因みに第3巻では表紙でついにステラ嬢のビジュアル解禁です!そして物語がやっと動き始める転換の巻になります。そちらも楽しんでもらえると嬉しいです!



前回予告していたフランチェスカメインの話はもう少しお待ち下さい。ただ、この外伝と繋がる話になるかと思います。



これからもよろしくお願い致します。

佐藤真白


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この時のケッカの脅しは有効期限付きだったのだねー 結局泣かせているし
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