表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結・書籍第1巻発売中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/92

外伝 シャリーシャの物語2 ーマール辺境伯爵の懊悩ー

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字のご報告もありがとうございます!

本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました1巻ー幸せな過去と結界の乙女ー発売中です。

第2巻ー初恋とデビュタントーコミックシーモア様より先行予約開始しております。


私の娘は天才だ。

私は帝国より、このマールの地を守護する役目を賜り辺境伯と呼ばれる。

その実情は政治には疎い武人で、結界内の貴族とは在り方が異なる。

我がマール家は代々仮想敵国である王国領に睨みを効かせ、結界外の辺境の地から帝国を脅かそうとする物を排する役目を賜わる武の一族。その為なのか強い男子を多く輩出してきた。

しかしながらそのためなのか、一族の中でも女の子の出生率が何故か低い…。


だから、シャーシャが生まれた時は一族の漢どもがこぞって雄叫びをあげ、どう接して良いのか悲鳴をあげるほどの祭り状態だった。

特にこの地の男衆は皆身体が大きく髭を生やす事が多かったので怖かったのかもしれない。私の顔でさえ見れば泣いた。

それが悲しくて髭をこの時期皆剃っていたのは今では笑い話だ。


本当に娘はかわゆい!

我妻に似た亜麻色の薄い毛も息子達よりもふさふさで、愛らしい事この上ない赤子だった。


この子に何でも与えてやりたいと、幼い頃から自分の知識や技術は教えてやった。いつか嫁に出さねばならぬ事は分かっていたが、だからこそ自分のもてる武器は多いに越した事はないと教え込んだ。


妻には呆れられていたが娘は武芸を遊び、武具を玩具、馬を友として育ち、私でさえも嫉妬する程の才を見せた。乾いた土が水を吸う様に教えた事をすぐに飲み込んでゆくさまが面白くて、つい教えすぎたほどだ。


娘は普段は引っ込み思案で、妻の後ろにすぐに隠れるような子だった。虫でさえ殺すのを躊躇うような心優しい子だった。

だというのに、武芸に関しては泣きながらもその技を磨く直向きさもあった。


何故この子は女の子なのだろうか…そう思う事も一度や二度ではなかった。


五歳ですでに基本の型を習得し、師範からは免許皆伝を受けるなど私でも出来なかった。軍揮盤では大人に混じり時に負かすなどとんでもない才能だ。何故男の子でなかったのかと悔やむほどにその才は眩しかった。この子の兄達も素晴らしい才能と努力によって優秀な跡取り達とは言われていたがシャーシャは別格だった。

そんな娘に息子達は嫉妬もあったろうに、自分の知識や技術を惜しみ無く注いでいた。

私と同じでシャーシャの可能性のその先が見たかったのかも知れん。



そんな娘が可愛くて、つい社交の場では自慢して歩いてしまった。

すると何故か娘への挑戦者が列を成した。

多くは息子ではないと知り目を丸くした。それでも挑んでみればわかると私は彼らの挑戦を受けた。


ある者は腕試しだと言った。ある者は娘を負かせれば辺境伯領で取り立ててもらえると聞いたと言ってきた。娘が負ける事の想像がつかなかったのもあるが、様々な闘い方を知る事は娘にとっても良い事だと思い、挑戦を受けた。

篩い落としの作業は親族皆で行った。強者揃いのマール辺境伯家に腕試しに来たのだ。我らも楽しまねば…それに娘の力量に叶う者でなくては為にならん。


娘が負けた時に悲しむのは嫌だったので、挑戦者には腕輪を渡して、娘には力を抑える魔道具を付けさせているから安心して戦いなさいと嘯いた。それで安心したのか娘は挑戦者達を次々返り討ちにしてみせた。

腕輪にそんな力は無かったが、互いの精神的負担を軽減していた様なのでまぁ、結果的に良かったのだろう。

娘は腕輪のおかげで勝つことが出来たと思っただろうし、挑戦者は力を抑えられていたから負けたのだ、仕方が無かったのだと矜持を保てた。


後々になって娘に怖かったし、嫌だったと聞いた時には反省もしたのだが…。

そうは聞いても、あの時の娘は楽しそうに見えたのだ。許してほしい。


結果娘の技量は格段に上がった。剛ではなく柔の剣技で相手をいなし、身体のバネを使って躍動する。この辺りでは見かけぬ独自の戦い方を身につけて行った。軍揮盤では帝都の貴族遊びでしか知らぬ者は敵うまい。あと数年もすれば我が領内でも敵う者はいないのかも知れない。そんな鬼才の娘が私は誇らしくも少しばかり怖くも感じていた。


軍揮盤は元々仮想敵国との攻防の作戦を立てるために作られたゲームだ。更に辺境の地で複雑な条件を加えられ独自に進化したもの。この軍揮盤は謂わば軍を動かす者の基礎学習の為の物である。我が領でも百人隊長以上の者には必修としている。


そしてこのゲームの別名は軍師の遊戯。過去にもこの軍揮盤を極めた軍師のなんと多い事…。武も一角。軍揮盤は一般軍人以上など何という逸材であろうか…。


それを思い知ったのは娘が7つの歳の事だった。

私は娘の話を聞いた時にまさかと思ったのだ。

しかし、娘の読みは全て当たった。そして読み通りに全てを収めて見せた。

娘はまだたった7歳だったのだ。だというのに間者の炙り出しや取り押えまでを誰の指示を受ける事もなくやってのけた。

娘にとってそれはやって当たり前の事後処理でしか無かったのだと思い至ったこの時ほど、娘の性と将来の可能性を口惜しく思った事はない。


このまま行けば娘は稀代の軍師になれる才能を宿している。

この子は軍議に関しては凡人のそれを遥かに凌駕した見識と視野を持っている。



そんな娘は10歳の秋に全ての武具を置いた。

それを聞いた時、私は驚きと同時に何処か安堵にも似た感情を抱いていた。

やはり娘には安全な場所で幸せに暮らしてほしいという思いはあった。

そしてそれと同時にその才能の先が見れないのだと心底嘆いた。きっと娘ではなく息子として生を受けていたならば輝かしい未来が約束されていただろうに…。


数年前から娘に挑み続けては負けていた中央貴族の倅は何故シャーシャから武を取り上げたのだと抗議に来た程だ。


私達は何も彼女から取り上げてはいない。彼女がみずから行った選択だ。家族はそれを尊重する。そう答えれば彼は言った。


「何と勿体無い…」


それは私の思いでもあった。

だから私は彼に娘を託す事に決めたのだ。娘を想い、娘の秘めたる才を惜しんでくれるこの男に。

それにこの男、中々に見込みがある。結界内の貴族騎士などと侮っていたが、シャーシャに負けてからこの男の剣筋は己を磨き始めた。常に最善を模索する様は大変に好ましい。更には数年で私に一太刀入れるまでに成長を見せた。

この男ならば娘を任せられると思えた。


皇室からも辺境の天才として目をかけてもらっていたようで、皇室主催のデビューの話があった。

私は娘と離れる寂しさを押し殺し娘を11の歳から帝都へと送ることに決めた。

私はこの地を守護する役目のために滅多に中央へは足を運ぶ事はない。

つまりは愛娘とそう会えなくなる事を意味する…。

寂しさはあったが、それも娘の成長と思い飲み込んだ。息子の時にはこんなにも悩まなかったはずなのに娘親とは何とも不思議なものだ。


士官科や騎士科を選択した息子達は寮生活をしていた為にタウンハウスはあってもあまり使われていない。そんな所に娘1人を送るのも不安が募る。学園に入学後は入寮させることにして、それまでは妻を一緒に帝都へと向かわせる事にした。


妻も僻地のマールでは中々貴族としての交流が出来ていないので良い機会となるだろう。


そこで私は気付けなかった。

私は娘に武芸は教えても貴族令嬢のマナーなどは全く仕込んでいなかった事に。

妻に言われて慌てて講師を手配したが、大人でも苦戦する上級の軍揮盤を楽しむ娘なのだ。大丈夫だろうと高を括っていたが、人には得て不得手があるのだと妻から説教の手紙を受けたのは娘を見送ったすぐ後のことだった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

シャーシャパパの回想で少し短めになっております。


さて、前書きでも書きましたが、2巻の先行予約が開始となっております。

2巻はなろうではすっ飛ばしたアーサーとのデートやスピカのデビュタントなどの書下ろし満載の内容となっています。その分ステラの登場が遅れてるんですけどね…。

表紙は最終巻かなと思うほどに幸せな感じのスピカとアーサーで、デビュタントの一幕を描いていただきました!本当絵師様の表現力ってすごい‼︎

一巻同様に表紙だけでも一見の価値ありなので是非ご覧下さい^ ^


次回はシャーシャ視点に戻って帝都での奮闘から物語をお届け致します。


それでは近々お会いいたしましょう。


佐藤真白

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
投稿ありがとうございます。 シャーシャパパ、というか辺境伯家…… 奥方以外娘の淑女教育忘れてたんかい(;^ω^) 帝都でスピカたちと出会えていなかったらどうなってたことやら(~_~;) 次回以降どう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ